3章 罰(1)
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「小森~、おひさ~!」
「やぁ、ケイコちゃん。いらっしゃいませ」
ケイコちゃんは地元の高校に通う女の子。
「聞いたよ~、フラれたんだってェ?」
ズキッ。
・・・いきなりの攻撃。
ライフポイント20減。
「あ。ゴメン。触れちゃいけなかった?」
「・・・いや、いいよ。これ買ってくれたら」
おれは手近にあった商品をそっと差し出した。
「・・・押し売りかよ」
「冗談だってば。試験、終わったの?」
「うん、バッチリよ。夜も寝ずに勉強したんだから」
「よく頑張った。エライぞ。で、今日はなに?」
「あのね、今度カレシの誕生日なの。なんかいいものないかなって」
誕生日のプレゼントかァ。
おれはガイの誕生日にプレゼントを用意したけど、結局渡せなかった。
「そうだね~。カレシかァ」
ケイコちゃんのカレシならおれも知ってる。
この店によく来る背の高いスマートなイケメン君だ。
おれもカッコイイ子だと思ってたけど、さすがに高校生に手を出すのはマズイだろ。
当然ノンケだろうし。
おれはカレシの普段のファッションを思い浮かべた。
カレシだけのことじゃないけど、最近の子はセンスがいい。
それに負けないくらいのアイテムはと・・・。
「指輪とか、ネックレスとかはどう?」
確か、カレシはアクセサリー類を身に付けてなかった。
趣味じゃないのかもしれないけど、一応、勧めてみる。
「どんなの?」
ケイコちゃんもまんざらでもないようだ。
「こちらへどうぞ」
おれはケイコちゃんをアクセサリー売り場へと案内した。
高価なアクセが多く並ぶコーナーだけど、ノンブランドの安価な商品もある。
高校生のお小遣いでも大丈夫。
おれは良心的な店員なの。
「カレシのファッションならシンプルなものがいいと思うけど」
一応、アドバイス。
ショーケースに並ぶアクセはピンスポットで輝いてる。
「これ、かっこいいっ!」
ケイコちゃんが選んだのは、タガーの中央にオニキスが入ったシルバーリング。
「さすがケイコちゃん。それ、人気だよ。雑誌にも載ってたし」
商品タグを見ると、4500円。
「これ!これにする!」
おぉ、即決。ケイコちゃんは買うときはいつも迷わない。
「ありがとうございます。どうする?今買う?」
「ん~、今はダメかな。あと少ししたらバイトの給料入るから」
「了解。じゃ、取っとくね。ラッピングもしとくから」
「ありがと!じゃ、私、バイトあるから」
彼女は喜んでどこかへと走っていった。
「ゼッタイ買うからね~!」
走りながら振り向いて、おれに手を振った。