22章 おれたちの未来は・・・(7)
マサキは翌日には退院した。
そして1週間がすぎた。
おれは普段と変わらない毎日。
静も動もないような感覚だった。
マサキとやっと心から通じ合えたのに、この落ち着いた気持ちはなんだろう。
自分でも分からない。
ただ── ヴィジョンは現実になる。
次に会うときが、そのときだと。
自分でも分かってる。
マサキとは連絡も取ってない。
でも、以前のように、メールがないことでの不安はなかった。
穏やかな気分だった。
接客から解放され、工房に戻るとケータイにメールが届いてた。
ケータイを開き、メールボックスをクリック。
マサキからだ。
<今日、会える?大事な話があるんだ>
きた。
やっぱり、未来はおれたちの力では変えることができなかったらしい。
<分かった。店閉めたら会いに行くよ>
すぐに返事があった。
<いや、おれがそっちに行く>
了解。
けど、 返事はしなかった。
それがおれの返事だった。
閉店後、母さんをタクシーで帰らせた。
母さんがいては、なにかと困る会話だろうから。
19時をすぎて、マサキの車が店の駐車場に入ってきた。
店の中のおれを見つけると、ぎこちない笑みを浮かべた。
「元気だったか?」
「うん」
マサキはおれを抱きしめてくれた。
その腕からは、優しさと同時に寂しさがにじんでいた。
「ヒロ、聞いてくれ」
「うん」
「少し、時間をくれないか」
「いいよ」
おれの即答に、マサキは怪訝そうな顔をした。
「・・・理由を聞かないのか?」
「だいたいの予測はしてたから。──おれ、待ってるから」
気を許すと、涙が溢れそうになる。
泣いたらダメだ。
マサキもツライんだから。
「ゴメン、おれにはこの方法しか思いつかなかった」
おれたちに「理由」なんていらない。
マサキは更に強く、おれを抱きしめた。
「絶対迎えにくる。何年たっても」
「おじいさんになっても?」
「ああ」
「先におれが死んでも?」
「そのときは、おれが後から追ってやる」
その言葉は、心からの言葉。
おれはそっとマサキから離れた。
「いっておいでよ」
マサキの腕がおれから離れる。
指先が、おれから離れる。
こんなに近くにいるのに、手を伸ばせば届くのに。
遠くなってしまう。
「待ってろよ」
「うん」
おれは笑顔でマサキを見送った。
車に乗り込んだマサキは、ツラさを振り切るように走り去った。
テールランプが見えなくなるまで、おれは見送った。
彼が今後、
どんな生き方をするのか。
おれは祈らずにはいられなかった。
どうか、
どうか、ご自愛を・・・。




