22章 おれたちの未来は・・・(5)
おれと瑞穂さんは、庭園のベンチに座った。
缶コーヒーを買って、ひとつを瑞穂さんに。
「ありがと」
泣きはらした目は充血してたけど、今はもう涙はない。
瑞穂さんは缶コーヒーを開けると、一口飲んだ。
「落ち着きましたか?」
「ええ。さっきの発言は撤回するわ。ごめんなさい」
分かってた。
あの言葉が本心じゃないってことは。
それでも言わずにはいられなかったんだ。
理不尽な婚約破棄。
謝るのは、おれの方だ。
「分かってたの。雅樹さんが私を本気で愛してくれてないことなんて。それでもしがみつきたかった。わずかな可能性があれば」
瑞穂さんは力なく笑った。
「かなわないわ。あれだけ思い続けてたんだもん」
「瑞穂さん・・・」
「あ、同情なんて、やめてよ。きっと、もっといい人が現れますよなんて言葉、いらないからね」
瑞穂さんは弱い。
そして、それ以上に強い。
「もうちょっと待ってね。さすがに婚約者を取られたってのはショックだし。しかもそれが男だもん。女ならまだ諦めもつくけど」
そりゃそうだ。
「約束するわ。あなた達を応援するって。その代わり・・・」
「はい・・・?」
「これからなにが起ころうと、幸せになってもらうから」
挑戦的な目で、おれを見上げた。
なるほど。
瑞穂さんの最後の攻撃が始まるんだ。
「分かりました。おれはマサキを信じます」
「ホント?」
「ホントです」
「その言葉、忘れないでね。あ、コーヒー、ありがと。ここでいいわ。雅樹さんの所に行ってあげて」
そう行って、彼女はすたすたと庭園を出て行った。
「瑞穂さん、あなたは強い人なんですね」
おれはいつの間にか、ナチュラルに『神谷』さんではなく、『瑞穂』さんと呼んいだ。
そのことに、彼女は気づいたらしい。
許して遣わす。
なんて顔で笑った。
「当然よ。女はいつの時代でも強いのよ」
瑞穂さんはコーヒーを一気にあおると、立ち上がった。
すごい人だ。 彼女は。
その姿は気高い。




