22章 おれたちの未来は・・・(1)
「瑞穂、こんな情けないカッコでゴメン」
「なに言ってるんですか。私こそ、雅樹さんがここまで悩んでいるのに、何もしてあげられなくて。ごめんなさい」
高飛車なワリに人を気遣うことができる人なんだ。
瑞穂さんって。
おれはすっかりカヤの外。
当然。
だからおれは黙ったまま。 「
婚約者だからって言ってるんじゃありません。大切な人だから言ってるんです」
マサキを見る瑞穂さんの目は優しかった。
「マサキ、おれ、出てようか?」
「いや、いてくれ。──紹介するよ。おれの友人の小森芳宏。助けてくれたの、こいつなんだ」
瑞穂さんはおれに顔を向けた。
確かに見た。
一瞬だけ、おれを睨んだ。
ん?
なんで?
けど、それもすぐに消えて笑顔になった。
「そうですか。彼を助けていただいて、ありがとうございます。わたくし、彼とお付き合いさせていただいております、神谷瑞穂と申します」
丁寧なおじぎに、おれはなんだか恥ずかしかった。
嫉妬心もなかった。
公然と「付き合ってる」って言える彼女がうらやましいくらいだ。
頭を上げた瑞穂さんの挑むような目。
どう見ても、おれに対していい感じじゃないな。
「私、あなたのこと、知ってるわ」
口調がくだけた。
さっきまでのはビジネス用なのかな。
「そ、それはどうも」
「雅樹さんの部屋、あなたが載ってる雑誌でいっぱいよ。アクセサリーもそうだし」
トゲトゲ。
な~んか、トゲトゲ。
「彼がどんなにあなたを大切にしてるか。私、知ってるわ」
これはかなり敵対モード。
おれの危険回避シグナルが鳴り響く。
「今日お邪魔したのは、お見舞いもあるけど、用件は別です」
瑞穂さんは、おれを見て、そしてマサキを見た。
マサキを見る目に寂しさがよぎる。
「この婚約、破談にさせていただきます」
・・・・・・。
このタイミングでこの発言。
「ちょ、ちょっと、神谷さん?今、マサキはこんな状態ですし。今その話をしなくても・・・」
ホンネとしてはガッツポーズしたいくらいなんだけど、建前としては反対のことを言わなきゃいけない。
「今だから言うんです」
文字にすると、 キッ! って感じで、瑞穂さんはおれを睨む。
・・・やっぱ嫌われてるわ。
なんでだろ。




