21章 1つへ・・・(6)
「──なぁ、樋口。お前さえよければ、またヒロって呼んでもいいか?」
「いいに決まってるだろ」
「ありがと。で、なんで『ヒロ』なんだ?」
・・・ん~と。
「お前、下の名前、芳宏だろ。なら『ヨシ』にするだろ」
そりゃそうだ。
「カイ兄がさ。あ、すぐ上の兄貴なんだけど、いつもそう呼んでたんだ」
それに普通に考えても、漢字2文字の下を使うなんて思わないだろうって考えたりもした。
「最後の文字か。お前、新しい自分を見つけたかったんじゃないのか?」
「ん?」
「最後は終わりじゃない。望めば先がある」
ほォ、なかなかの分析ですな。
やっぱ中沢は頭がいい。
「そうかもしれないね」
じゃ、『ガイ』はどうなんだろ。
思った瞬間に答えが出た。
『雅樹』の雅。
『牙』『隹』。
『牙』はガ。
『隹』はスイと読む。
ちょっとひねって『イ』と読めなくなもない。
ひとつの漢字をふたつに分けた。
『ガイ』の優しさと冷たさ。
言うとつらくなりそうで、おれは言葉にはできなかった。
「じゃあさ、おれ、これからなんて呼べばいい?」
ズルイけど、ちょっと試した。
中沢が今、なにを考えているのか。
「そうだな・・・」
中沢は首をかしげて少し考えた。
「マサキでいいや」
おれは中沢に生きる希望が見え始めてるのを感じた。
「うん。よろしく、マサキ」




