21章 1つへ・・・(5)
『樋口』と『ヒロ』は、やっとひとつになった。
『ガイ』と『中沢』も、今、ひとつになった。
そして、おれたちは、
やっとお互いを正面から見つめることができるようになったんだ。
泣いて気分を整理しようなんて、 弱いヤツの言い訳だと思ってた。
けど、違った。
おれと中沢は抱きしめあいながら泣き続けた。
離れた時間を取り戻すために。
お互いが刻んでしまった溝を埋めるために。
「・・・樋口」
「ん?」
「もう、ぜったいに離さない」
「うん」
それはあのときとは違う、心からの言葉だった。
お互いに求め合って、 おれたちは軽いキスをした。
──中沢、おかえり。
今の中沢に、さっきまでの絶望感はない。
生きようとしてる。
あのころ、一緒に約束した。
『一緒に大人になろう』
約束し合ったときの、眩しい姿。
同じだった。
「ところで、中沢」
いい感じなんだけど、これは言わないと。
「なに?燃えてきたか?」
!!
な、なんてことを!
メチャ恥ずかしいぞ!
「ば、ばか。なに言ってンだよ。ケガの治療しないといけないんじゃないの?」
見ると、布団には血が。
しかも、どんどん広がっていく。
「うっわ~。おれヤバイわ」
中沢もそれに気づいて、今更ベッドに倒れこんだ。
・・・おせーよ、気づくの。
おれはナースコールのボタンを押した。
「なにをしてたら、こんなことになるんですか?」
飛んできた看護士さん。
困った顔で中沢の傷を手当てしてくれた。
「え、えーと。・・・腕相撲、してました」
おれの言葉に、中沢は顔をおおった。
え?だめ?
「お前なァ、もうちょっとマシな理由くらい思いつかないのか?」
「中沢クン、それを言ったらウソだとバレてしまいますが?」
「あ・・・」
看護士さんはひとつ、ため息。
「なんにしても、いい大人なんだから、はしゃぎすぎるのもいい加減にしてくださいね」
「・・・はい。すみません」
2人の声が重なった。
「お前が悪いんだぞ」
「中沢だって、バラすから」
「お前だって」
「いいや、中沢だってば」
「お前に決まってるだろ」
「中沢だってば」
「いい加減にしなさい!」
脳天を突き抜ける看護士さんの声。
マジびびった。
鼻息も荒い看護士さんが部屋から出ると、どちらからともなく笑った。




