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どうかご自愛を・・・  作者: かのい かずき
142/155

21章 1つへ・・・(1)

「意外と激しい性格をしてらっしゃるんですね」


「・・・すみません」


おれはしゅんと肩をすぼめた。


確かに、あれはやりすぎかも。


胸倉掴んじゃったもんな~。


今日、おれは仕事を昼で切り上げた。


店は母さんに任せて、中沢を見舞いに来てた。


廊下で会社から来たばかりだという木崎さんと会い、昨日のことを詫びようとしたんだけど・・・。


木崎さんは笑ってた。


「あ、あのォ、お父さん、怒ってました?」


怒ってるよね~。


間違いない。


「怒るより、あなたに言われたことがよほどこたえたようですね。今日は会社、休みましたよ」


ますます悪いことをした。


・・・けど、おれは悪くない!


「ま、すんだことを気にしてもしょうがないですよ。気になさらずに」


そう言って木崎さんはおれの耳元に顔を近づけた。


「ここだけの話、私もスッとしました」


むむ~。 木崎さんってば、オカタイだけの人じゃない。


スマートすぎるぜ。


おっと、そーいえば。


「ミサキさんって、中沢の会社の人なんですか?」


一応、「ミサキ」って言うときに声は落とした。


「これは失礼。自己紹介が遅れました。わたくし、中沢雅樹の秘書をやっております。木崎幹雄と申します」


わたくしときたか。


キャラ違うな~。


差し出された名刺を拝見。


木崎幹雄(キザキミキオ)


略して逆さにして「ミサキ」さん。


「どおりで、カギまで用意できたはずですね」


「いやァ、あれは確かに勝手に拝借したもので、許可なんて得てませんから。バレたら怒られるでしょうね」


思いっきり犯罪行為だけど、悪びれた様子もない。


「中沢は、どうです?」


「今朝、目を覚ましました。ぼーとしてますけど、今のところ、落ち着いてますよ」


「会っても、いいでしょうか」


「構いませんが、どちらで?」


どちらとは、場所じゃなく、多分、名だろう。


『ヒロ』として会うのか、『樋口』として会うのか。


「・・・分かりません」


「彼、あなたに助けられたことを覚えてませんよ。『ヒロ』さんが助けてくれたことは話しておきましたが」


「そうですか」


「それと・・・」


「・・・・・・?」


「彼はうすうす気づいてますよ。あなたが樋口さんなのではないかと」


「言ってないんですか?」


「ご本人が言わないことを、私が言えるワケないでしょう」


「じゃあ、なんでおれの過去を調べたりしたんですか?」


「雅樹さんから頼まれたんです。樋口さんを探してくれと」


あなたと別れた直後です。


と、ミサキさんは付け加えた。


「それほどまでに、雅樹さんは樋口さんに会いたかったんでしょうね。雅樹さんにとって、樋口さんは特別な存在なんです」


そのときは、まだガイはおれが『樋口』だと気づいてなかったってことか。


「驚きましたよ。あなたが樋口さんと分かって。これは言えない。そう思いました」


自分で言えってことか。


「頑張ってください」


背中でミサキさんの励ましを受けて、おれはガイのいる病室のドアを静かに開いた。



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