21章 1つへ・・・(1)
「意外と激しい性格をしてらっしゃるんですね」
「・・・すみません」
おれはしゅんと肩をすぼめた。
確かに、あれはやりすぎかも。
胸倉掴んじゃったもんな~。
今日、おれは仕事を昼で切り上げた。
店は母さんに任せて、中沢を見舞いに来てた。
廊下で会社から来たばかりだという木崎さんと会い、昨日のことを詫びようとしたんだけど・・・。
木崎さんは笑ってた。
「あ、あのォ、お父さん、怒ってました?」
怒ってるよね~。
間違いない。
「怒るより、あなたに言われたことがよほどこたえたようですね。今日は会社、休みましたよ」
ますます悪いことをした。
・・・けど、おれは悪くない!
「ま、すんだことを気にしてもしょうがないですよ。気になさらずに」
そう言って木崎さんはおれの耳元に顔を近づけた。
「ここだけの話、私もスッとしました」
むむ~。 木崎さんってば、オカタイだけの人じゃない。
スマートすぎるぜ。
おっと、そーいえば。
「ミサキさんって、中沢の会社の人なんですか?」
一応、「ミサキ」って言うときに声は落とした。
「これは失礼。自己紹介が遅れました。わたくし、中沢雅樹の秘書をやっております。木崎幹雄と申します」
わたくしときたか。
キャラ違うな~。
差し出された名刺を拝見。
木崎幹雄。
略して逆さにして「ミサキ」さん。
「どおりで、カギまで用意できたはずですね」
「いやァ、あれは確かに勝手に拝借したもので、許可なんて得てませんから。バレたら怒られるでしょうね」
思いっきり犯罪行為だけど、悪びれた様子もない。
「中沢は、どうです?」
「今朝、目を覚ましました。ぼーとしてますけど、今のところ、落ち着いてますよ」
「会っても、いいでしょうか」
「構いませんが、どちらで?」
どちらとは、場所じゃなく、多分、名だろう。
『ヒロ』として会うのか、『樋口』として会うのか。
「・・・分かりません」
「彼、あなたに助けられたことを覚えてませんよ。『ヒロ』さんが助けてくれたことは話しておきましたが」
「そうですか」
「それと・・・」
「・・・・・・?」
「彼はうすうす気づいてますよ。あなたが樋口さんなのではないかと」
「言ってないんですか?」
「ご本人が言わないことを、私が言えるワケないでしょう」
「じゃあ、なんでおれの過去を調べたりしたんですか?」
「雅樹さんから頼まれたんです。樋口さんを探してくれと」
あなたと別れた直後です。
と、ミサキさんは付け加えた。
「それほどまでに、雅樹さんは樋口さんに会いたかったんでしょうね。雅樹さんにとって、樋口さんは特別な存在なんです」
そのときは、まだガイはおれが『樋口』だと気づいてなかったってことか。
「驚きましたよ。あなたが樋口さんと分かって。これは言えない。そう思いました」
自分で言えってことか。
「頑張ってください」
背中でミサキさんの励ましを受けて、おれはガイのいる病室のドアを静かに開いた。




