表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうかご自愛を・・・  作者: かのい かずき
139/148

20章 タイム・クロス(5)

「もう大丈夫です。出血も致死量ではありませんでした。睡眠薬は胃洗浄でなんとかなりましたが、吸収された分で明日まで目を覚まさないでしょう。ですが・・・」


先生の言わない先を、おれは読んだ。


「心のケアが必要ってことですね?」


「そうです。自殺は繰り返すんです。それは体とは無関係ですから」


おれは深く、長い息を吐いた。


とりあえずは切り抜けた。


今、中沢は生きてる。


それでいい。


けど、これからがある。


ベッドで眠り続けるガイ。


いや、中沢。


「お大事に」


先生はそう言って、部屋から出て行った。


おれ、なにやってたんだろ。


中沢がこんなになるまで、気づいてあげられなかった。


中沢は強いヤツだと思ってたから。


こんなこと、しないと思ってたから。


全部、間違ってた。


ゴメン。


中沢。


おれは布団から出てる左手に触れた。


腕には点滴の針が刺さってる。

少し、痩せたかな。


数年前は、引き締まった体だった。


日サロにでも通ってるかのように、健康的な小麦色の肌。


スレンダーな体はほどよい筋肉で包まれ、カッコイイを通り越して美しささえあった。


体操を辞めてからは、おれはそんな体を目指して改造したくらいだった。


すべてがおれの憧れだった。


今もそれは変わらない。


けど、腕は細くなり、頬もやつれてる。


前に「ノエル」で会ったとき、こんなだったかな。


見てるようで、見てなかった。


あのとき、ちゃんと見ていれば。


中沢の異変に気づいたのかもしれない。


結局、おれは自分が傷つきたくないばかりにガイを遠ざけてしまった。


どうやって償ったらいいんだろ。


冷静に考えれば、この結果はおれの責任じゃない。


けど、この罪悪感をねじ伏せる説得力なんてなかった。


心が痛い。


中沢、生きてくれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ