20章 タイム・クロス(3)
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夜の道路はすいてる。
何年ぶりだろ。
この道を走るの。
間違えるんじゃないかって少し不安だったけど、一度も間違えずに着いた。
ガイの家。
見上げると部屋に明かりはない。
家にいないのかな。
いや、そんなことない。
おれは直感に頼った。
邪魔にならないようにガレージのシャッターぎりぎりに車を停めて、おれは外の階段を駆け上がった。
今気づいた。
この階段を使うの、今日が初めてだってことを。
慌ててるのに落ち着いてる自分がいる。
不思議な感覚。
一軒の平屋。
ちゃんと玄関から入るのも今日が初めて。
インターホンを押す。
返事はない。
ホントにいなかったりして。
「ガイ、いるんだろ?入るよ!?」
不法侵入って言われても反論できない。
けど、イヤな予感はますます強くなってくる。
ポケットに入れてたカギ。
それを鍵穴に差し込んで回す。
ドアを開けると、明かりがまったくない。
勘だけを頼りにスイッチを探して、玄関の照明をつけた。
クツを脱ぐのももどかしく、おれはリビングに走った。
照明のついてないリビング。
だけど、暗闇の中でも分かる。
荒れてる。
いつもきれいにしてたのが、ウソのようだ。
今日一日で荒らしたって感じじゃない。
明かりをつけると、大切にしてた観葉植物が枯れてた。
部屋の光景がガイの心を表してる。
自暴自棄。
そんな言葉が思い浮かんだ。
!!
分かった。
おれはすぐにバスルームに向かった。
ガイはそこにいる。
ぜったいに。
バスルームに近づくと、シャワーの音だけが響いてた。
予感は確信に代わり、おれの心臓の鼓動が早くなる。
ドアを開けると、独特の金属的なにおいが鼻をついた。
手探りで照明のスイッチを押した。
ガイは、いた。
いたけど・・・。
浴槽から溢れる水は赤く染まっていた。
・・・ナニ、コレ。
分かってはいたけど、実際に見ると、意識が飛んだ。