20章 タイム・クロス(2)
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最後にガイに会ったのは、いつだったろう。
ケータイのスケジュール帳を開くと、5ヶ月以上前だった。
忙しいんだね、ガイ。
おれはメールで励まし続けた。
グチらない。
おれのルールが、1つ増えた。
けど、おれは気づいてた。
ガイの気持ちがおれから離れつつあることに。
ガイはタバコを吸う。 でも、おれより少ない。
なくてもいいくらい。
最後に会ったときに、おれはそれを見ちゃった。
ベッドから起き上がったガイは、立て続けにタバコを2本吸った。
タバコへの欲求のウラに隠れた心を見たような気がした。
その場からの逃避。
間を持たせるための動作。
つまり、 おれといても楽しくないってこと。
タバコを吸い終えたガイは、いつもと変わらず優しかった。
・・・表情だけは。
瞳の奥に寂しさを抱えていた。
どうしてそんなに寂しいんだろ。
どうしてそんなにつらそうな顔をするんだろ。
聞けばよかった。
けど、聞けなかった。
立ち入りすぎる勇気を、おれは持っていなかった。
ガイを大切に思うあまりに、とるべき行動を見失った。
「ね、最近、カレシの話ないけど、続いてるの?」
キミちゃんはヘアアクセサリーを検品をしながら、おれにチラリと目を向けた。
「う~ん、ちょっとビミョ~になったきた」
「メールはしてるの?」
「してるけど、返事、ないんだ」
「はっきりさせた方がいいんじゃない?」
「そうかなァ」
「このまま自然消滅を狙ってるようなら、撃ってでるべきよ」
破局を前提にした会話ですな。
「これは戦争じゃないよ、キミちゃん」
「恋愛は戦争よ!」
なんの格言なのよ。
「んじゃ、昼でにもメールしてみるよ」
「おう、健闘を祈る」
健闘って・・・。
けど、キミちゃんの言葉に後押しされたのは事実だった。
おれは仕事しながら、どんな内容のメールにするか、考え始めた。
そして・・・。
別れが決定的になってしまった。
いや、おれがそうしてしまったんだ。