リセット(5)
翌日、ガイからメールが来た。
<昨日はありがとう。すっごく楽しかった。会ってよかったよ。また会ってくれたら嬉しいな>
おれは「ヒロ」として返事。
<こちらこそ、ありがとう。楽しかった。遅くまで引き止めてゴメンね>
一度進み始めた時間は止まらない。
まして、引き返すことなんてできやしない。
おれは「ヒロ」として、ガイと知り合ってしまった。
・・・それでもいっか。
昔のおれなら、そうはしなかっただろうな。
自分にもウソをつけるすべを知ってしまった。
クリーンなだけじゃ生きていけない。
ほんの少しのダーティ。
ガイを中沢だと知ってて黙ってる。
けど、ガイとしてであっても、おれは嬉しかったんだ。
おれは仕事に励んだ。
昼はパートで働き、夜はシルバーアクセの製作に没頭。
そしてガイとのメール。
楽しかった。
ガイといられることで、おれはエネルギーを得たんだ。
疲れも知らず、おれは働き続けた。
けど、体はそうじゃなかった。
数年ぶりに喘息の発作を起こした。
昼の仕事は気合で乗り切ったけど、家では動ける状態じゃなかった。
「よっくん、最近働きすぎよ」
母さんが心配してる。
ゴメンね、母さん。
いらん心配をかけてしまった。
おれはおとなしくベッドで横になった。
病院には行ってなかったけど、市販薬でよく効く薬を持ってた。
ひどくならないうちなら大丈夫だろう。
けど、この薬、飲むと非常に眠くなる。
寒い時期には予防のためにも飲んでたけど、うっかり朝に飲もうものなら寝ながら仕事することもあった。
その薬を飲んで、おれは布団を頭からかぶった。
胸元の異音がうるさいけど、気にしてられない。
薬が効いて、うつらうつらしてるとケータイが鳴った。
この着信音はガイからだ。
ベッドサイドにおいてたケータイを取って開いた。
<今日はメールなかったけど、どうかしたの?おれ、嫌われたかな>




