表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうかご自愛を・・・  作者: かのい かずき
11/155

追憶(3)

やめちゃおっかな。


そう思ったのは一度じゃない。


最初は楽しかった。


特に床運動での宙返り。


空中を自分のイメージどおりに舞うのは爽快。


試合でも、広い床を独り占めしたかのような優越感に浸った。


けど・・・。


最近はつまらない。


試合ごとに持ち帰る賞状を母さんに見せると、すごく喜んでくれた。


それはそれでうれしい。


そして言うんだ。


「よっくんはすごいね。今度もまたできるよね」


はい。できます。


やってみせます。


母さんは気づいてない。


その言葉が一番キライなことを。


気づかせちゃいけないんだ。


母さんを喜ばせるのがおれの役目。


だから勉強だって頑張った。


クラスでは常時1位だし、学年でもトップ5から外れたことがない。


すべて母さんのためだった。


だから体操もやめられない。


勉強もおろそかにできない。


おれは意思のないロボットと同じだった。


・・・そっか。


だからか。


中沢が気になる理由。


彼は自由だ。


少なくとも、おれにはそう見える。


先生になんと思われようと気にしない。


いつもマイペース。


自分のスタイルを崩さない。


うらやましい。


そう思った。


プロテクターを買い終えて店を出ると、もう暗くなっていた。


午後6時30分。


学校を出る前に買い物するからとは、母さんに電話しておいたから大丈夫だ。


人通りは更に多くなり、学生やサラリーマン、OLでいっぱいだ。


おれは来たときと同じ道を歩きだした。


しばらく歩くと、どこからかギターの音色。


ストリートミュージシャンかな。


そういうのって、見るのは初めてだ。


歌声も聴こえる。


おれは初めての体験にドキドキしながら、半円に囲う人たちの後ろに立った。


どんな人なんだろ。


叩きつけるようなギターの旋律。


けど、ぜんぜん耳障りじゃない。


声もそうだ。


優しく、そして寂しげでもある。


聴いてる人にそんな感情を与えるほど、歌ってる人の声は感情豊かだった。


おれは背伸びしながら、囲みの中心にいる人を見た。


店と店の合間に座り、ギター1本で歌い続けてる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ