リセット(2)
「ね、おれの車で話さない?ここじゃナンだしさ」
「そうだね。じゃ、お邪魔します」
「どうぞ」
ガイさんの車は、おれの停めたところの反対側の駐車場にあった。
・・・こりゃまた。
スポーツワゴン。
しかも高級車に分類されてる輸入車。
さすがお金持ち。
「ブルジョワなんだね」
知ってるけど、知らないフリ。
「そう?たいしたことないよ」
そんなセリフ、おれも言ってみたい!
助手席に乗り込み、ドアを閉じる。
「おォ~、高級車の音!」
ドアを閉じたときの厚みのある音。
それには純粋に感動した。うっかり素に戻ってしまった。
「面白いね。ヒロくんって」
ハッとなって焦って取り繕った。
「え、そ、そう、かな」
運転席からおれを見るガイさん。
ど、そうしよ、目が合わせられない。
今のおれは、見知らぬ人と初めて会ったときのような感覚だ。
思い込むってスゴイ。
どうやら自己催眠はうまくいったようだ。
でも、わずかに残る冷静さが動き出した。
「ガ、ガイさんってさ」
ちょっとさぐりを入れてみようかと思ったんだけど、さえぎられた。
「ガイでいいよ。おれもヒロって呼んでいいかな?」
「は、はい!大丈夫です」
なんで敬語なんだろ。
ガイはクスリと笑った。
「かわいいね、ヒロ」
─────────
それがおれとガイの出会いだった。
なんてフレーズ、かなり古い。
安っぽいドラマみたいだった。
けど、ちょっと違う。
2度目の出会いだったから。
そして、おれは選択を間違った。
あのとき、ちゃんと言っておけばよかったんだろうな。
おれが「樋口」だって。
けど、言えなかった。




