16章 リセット (1)
なんで?
なんで中沢がいるの?
5年の空白があるとは言え、間違えたりはしない。
確かに中沢だ。
大人になった中沢。
黒いレザーのジャケット。
インナーには胸にクールなプリントのある白のVネックシャツ。
スカルがつらなるネックレス。
ブレスレットもスカル。
派手ではないけど、カッコイイ。
確かに、リーマンには見えない。
・・・ンなこたァ、今はいい。
「どうした?タイプじゃなかったかな」
「い、いや。か、かっこいい、です。かっこよすぎてびっくりした」
その言葉で悟った。
おれのこと。
気づいてない。
当然かも。
おれ、変わっちゃったし。
「素直にうれしいな。ヒロくんもかっこいいね」
笑う「ガイ」さんの顔に、あのころの「中沢」が重なる。
頭ン中で、いろんな意味の?が浮かんでる。
なんでここにいるんだろ。
東京でのバンド活動は?
いつ帰ってきたんだろ。
そして、 中沢もゲイだったのか?
それが一番大きかった。
けど、 今会ってるのは、「中沢」じゃない。
「ガイ」さんだ。
データバンク、 リセット。
今、おれの前にいるのは、
ガイさん。
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完了。
心臓が口から出そうなくらいビックリしたのに、落ち着いてみせる。
そこンとこが大人なのよ。
ガイさんはコンビニで缶コーヒーを二つ買った。
「これでよかった?」
・・・・・・。
抜け目がないのは昔と変わらないな。
ガイさんが来て、すぐに捨てた缶コーヒー。
彼はその一瞬を見逃さなかった。
買ってくれた缶コーヒーは同じブランド。




