初めての再会(2)
いきなりの大声におれはびっくり。
「樋口せんぱ~い!」
えっらいキレイなおねーさんがおれに手を振ってる。
誰やねん。
「お、おう」
テキトーに返事。
彼女はおれのもとへと駆け寄った。
そして、
「先輩、誰だか分からないんでしょ?」
ギク。
「へへ、バレた?」
「もう、先輩ったら。根岸です」
・・・・・・。
「だって、根岸さんって、髪くくってたじゃん」
「いつの話をしてるんですか!」
「わりィ、キレイになったね」
「へへ。ありがとうございます」
お世辞じゃなかった。
彼女はきれいになってた。
「さ、こっちへ来てください。監督やコーチもいらっしゃってるんですよ」
根岸さんに案内され、おれは一番奥に座る監督と数年ぶりに再会した。
「お久しぶりです、監督。お元気そうで」
「おう。お前もずいぶんとご活躍だな。さっきから根岸がお前のことでうるさくてかなわん」
「だって、樋口先輩、今シルバーアクセサリーで売れてるデザイナーなんですよ~」
興奮すると語尾が延びる。
大人になってもそのかわいらしさは変わらないな。
「もう分かったから、かんべんしてくれ」
なごやかなフンイキだ。
けど、おれは言わなきゃいけないことがある。
「監督、大学を辞めたりして、すみませんでした」
深々と頭を下げた。
なんの相談もしなかった。
お世話になった人たちに。
それがおれの中でしこりになってた。
「ああ、事情は大学のヤツらから聞いた。お前も辛かっただろう。気にするな」
その優しさに、おれの目が熱くなった。
「わしは教え子に一生体操をやって欲しいとは思わん。続けてくれればうれしいが、生きる中で、共に経験したことが活かされるような生き方をして欲しい。それだけだ。お前はそれを立派になしとげた。だから、今、ここにいる。そうじゃないのか?」
「はい。監督のご指導は今でも助けてくれます」
「わしはそんなに立派じゃない。・・・お前も大きくなったな」
それは大人になったという意味じゃない。
言葉にしない部分を、おれは理解していた。
その言葉がうれしかった。
「ありがとうございます」
心から言えた。
そして、もう一人。
「お久しぶりです。吉井コーチ」
「お前、いくつになった?」
挨拶もすっ飛ばし、吉井コーチはなんだか不満顔。
「27歳ですけど」
「それでその若さか。どーやったらそんなに若さを維持できるんだ」
その秘訣、残念ながら教えてあげられない。
多分、ゲイであることが原因の一つだから。
推測だけど。
「吉井コーチ、今、副監督なさってるんですよ」
ヒョコっと顔を出した根岸さん。
あいかわらず、ちょこまかとよく動く。
「そうなんですか、おめでとうございます」
「いや、仕事も給料も変りゃしないんだから。ま、とにかく座れ。みんな、お前を待ってたんだぞ」




