追憶(2)
おれは小さな勝利感に満足。
毎日、少しずつ強くなる。
それが実感できる。
ガイ、今はまだ会えないけど、いつかまたね。
おれの頭ン中は再び高校時代へとトリップした。
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その日、部活が休みだったおれは、学校が終わると帰宅せずに、まったく逆方向の街中の商店街を歩いていた。
目指すはスポーツ用品店。
学校にもその店の人が来てくれるが、おれは自分で買うのが好きだった。
おれは体操部に所属してる。
鉄棒に使うプロテクターが今回の目的。
今使ってるのが、もうちぎれそうだから。
市内中心部を真横につらぬく商店街は、いつも人でにぎわってた。
人にぶつからないように歩くと、まっすぐ進めない。
下校途中の同い年くらいの男子高校生2,3人が店の中へ入って行くのが見えた。
そこのショーウインドウには流行りの服を着たマネキン。
今のおれには用のないものだな。
おれは外出時は制服かジャージ。
脇目もふらず、スポーツ用品店へ蛇行しながら足を進める。
「こんにちは」
広い店なのに、所狭しと商品が置いてある。
おれは積み上げられた段ボール箱を崩さないように、体をくねらせながら体操用品のコーナーへ。
「あ、樋口くん、こんにちは。どうしたの、欲しいものがあるなら、学校へ行ってあげたのに」
店主のおじさんはいつもニコニコ笑ってる。
なにがそんなに楽しいのか、聞いてみたい。
「いえ、自分で探したいんです」
「そう。今日は部活、休み?」
「はい」
若干のうっとうしさを感じながらも、おれは愛想笑い。
「先週の県大会、また優勝したんだってね。すごいじゃないの」
「そんなことないです。まぐれです」
自慢にするつもりもないけど、おれは期待されてるらしい。
いつもそうだ。
「お前ならできる」
その言葉に踊らされ続ける。
期待に応えても、それに見合う対価は得られない。
それでもホイホイとやってしまう自分にハラが立つ。