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8.滅多にない機会

 


 普通ならここで俺が飛び出して、凜を助けに入らなければいけないのだろう。実際、行こうと思えば行けるし男の手を止めることができる。なら、何故そうしないのかというと、ああいうやつらには少し痛い目を見てもらおうと思ったからだ。これも彼らの経験のためしょうがない事だ。これを機に手を出す相手は見極めた方がいい事を学んでほしい。


 その証拠に襲い掛かった彼ら二人は、あっという間になぎ倒された。それを見た周りは凜に拍手を送っていた。凜は元々、柔術を習っていたのでそこら辺のチンピラ数人相手することくらいわけないことだ。


「先に手を出したのはそっちだから、これは正当防衛よ。こっちがわざわざ優しく接してあげていたのに手を出すからこうなるのよ。」


 そうして男二人慌てるように逃げて行った。事が収まったのを確認して、俺は凜に近づいて行った。すると彼女は不満そうな顔をして、俺に問いただしてきた。


「なんで、幼馴染が襲われているのが分かってて、助けに来なかったのか聞いてもいいかしら?」


「彼らが学ぶにはいい機会だったと思った。」


「そうね。確かにあのサルたちには学びが必要だったわ。けど、聞きたいのはそこじゃないことくらい分かるわよね?」


 どうやら凜の中であいつらはサル認定されたらしい。可哀想に。でも、そうか求めていた回答と違っていたらしい。倫理的な問題だろうか。難しいな。とりあえずそれっぽいこと言って誤魔化すか。


「一応、(やりすぎないか)心配はしていた。そこは俺からの信頼と受け取ってくれ。」


 俺がそう言うと、凜はまだ納得いかない様子だったが、とりあえず許してもらえた。嘘は言ってない。ただ、肝心なところを抜いているだけで他は間違ってはいない。


「はぁ、あいつらのせいでせっかくのデー...じゃなくて買い物が台無しだわ。」


「それもそうだが、今のところ服しか買ってないだろ。まだ時間もあるんだし、ゆっくり回ればいいだろ。」


「そういうわけじゃないんだけど、まぁいいわ。そうね。なら、映画でも見に行きましょうか。」


「りょうかい。」


 そうして俺たちは映画を見に行くことになった。


「何にする?」


「そうね。これがいいわ。」


 選んだのは意外にもホラーものだった。別に悪いわけではないんだがギャップがすご......くはないか。俺はホラーものを見る凜を想像してみた。そんなに違和感ないな。むしろずっと真顔で見てそうで、そっちの方が怖いな。


 というわけで俺は「それにしようか」とだけ言って俺たちはその映画を見た。


 内容はこうだ。ゾンビが蔓延った世界で何とかして主人公たちが生き残ろうとする。そんな物語だ。しかし、意外な展開に最後は主人公とヒロインが諦めて二人で心中することで物語が終わった。それを見て凜が感想を一言。


「なんだか、不完全燃焼って感じね。」


「そうだな。俺もそう思う。」


「「・・・・・・」」


 これには完全同意だ。なんか引っかかるというか、腑に落ちないというか、とりあえず言いたいことはたくさんある。が、こういうのは何か違うもので消費しないとずっと考えてしまうので気を紛らわすことにした。俺は時間を見た。するとちょうど昼頃になっていた。


「凜、そろそろ昼だし何か食べないか?」


「そうね。私もお腹が空いたわ」


「なら、あそこにあるレストランでいいか?」


 俺はたまたま目に映ったレストランを指さして言った。凜も俺と同じ気持ちなんだろう、なんでもいいから早く忘れたいようだ。


「なにか食べられればどこでもいいわ。行きましょうか。」


「そうだな。」


 俺と凜はそのまま歩きだし、他愛もない会話をしながらレストランへ向かって行った。その間、映画の事に関しての話題は一切出てこなかった。


 ーーーーーーーーーーーー


「何にしようか...これとか美味しそうだな。よし、これでいいか。」


「私はこれにするわ。」


 そう言って俺が選んだのはハンバーグ定食、凜はナポリタンだった。お互い注文が決まったので、店員を呼んでそれぞれ注文した。そしてしばらくして二人とも料理が揃ったところで俺たちは食べ始めた。


「おぉ!美味い!」


「そんなに美味しいの?なら、一口頂戴。ほら。」


 そう言って口を開ける凜。俺は一口大に切ったハンバーグを凜の口へ運ぶ。ふりをして直前でフォークを返し、そのまま自分の口に入れた。凜は貰えると思っていたのか、口を開けたまま驚いた表情をした。普段の彼女からは考えられない、なんともアホそうな顔をしていた。


 俺はその表情に笑いを堪えきれず、声を出して笑ってしまった。


「くっ、アハハハハハハ。腹が、腹がよじれる。」


「っ!!?」


 凜は顔を真っ赤にしながら、俺を睨んできた。俺自身、ここまで上手くいくと思ってなかったので、その分、余計に面白かった。それにしてもあの顔は反則だろ。ギャップがヤバすぎる。


 少しして、ようやく落ち着きを取り戻した俺は、先ほどから黙っている凜に顔を向けた。


「お、おーい、ごめんって。流石に笑いすぎた。くくっ。今度はちゃんとあげるから許してくれ。ほら、あーん。」


「・・・・・・」


 俺があげるそぶりを見せると、何も言わずパクリと食べる凜。そしてまた自分の料理に視線を戻し、食べ始めた。さ、さすがにやりすぎたな。どうにかして許してもらえる方法ないか?俺は水を飲みながら考える......そうだ!


「なぁ、凜。そのナポリタン俺に一口くれないか?」


 そう、凜()()()()ナポリタンを褒めることで機嫌を直してもらおう作戦だ。まぁ、作ったのは凜じゃないから、褒められても微妙なとこだが...ダメだったらこの後、甘いものでも買って許してもらおう。


 凜は食べる手を止め、ピクリと反応を見せた。そして意外にもフォークをくるくる回し、食べやすいよう一口大にしてフォークを止めた。


「あげるから、目を閉じてちょうだい。」


「...?」


 俺は疑問に思いながらも言われるがまま、目を閉じた。さっきの件ですでに怒らせているので、ここは素直に言うことに従うことにした。これ以上機嫌が悪くなるのはまずいからな。そもそもあんなことしなければ良かっただけの話なんだが。


 そうして、俺の口にナポリタンが入ってきた。


「!!?ごほっ!ごほっ!」


 そのナポリタンはタバスコがたくさんかかっていて、とても辛かった。思わず目を開けて、すぐに水を飲もうと俺のコップを探す。コップはあったものの、中身がなかった。そういや飲み干したんだった!


 どうにかして口の中を鎮火したいと思い、凜を見た。そこには、ニヤニヤしながらこちらを見ている凜がいた。


「あ、あのぅ。あんなことしておきながら誠に勝手だとは思っているんですが、その水頂けないでしょうか?」


「あら。水が欲しいの?いいわよ。ほら。」


 そう言って自分のコップを差し出す凜。


「おぉ、ありがとうございます!」


 精一杯の感謝を込め、礼を言った。あんなことをしたのに優しいな、凜。俺はそう思いながら手を伸ばした。すると、俺が受け取る直前に凜の手が返り、その勢いのまま水を飲みほした。俺は茫然とした。


「ふぅ、私もちょうどのどが渇いていたの。ごめんなさいね。」


「お、おい!絶対嘘だろ!ふざけるな!返せよ!」


「だから謝ってるじゃない。でも、蓮がやったことをそのままやっただけよ。さっきと何が違うのかしら?」


「ぐっ!」


 そう言われると確かにそうだが...クソ、何も言い返せない。あの時ちゃんとあげればよかった。俺がそう悔やんでいると凜は席を立ちあがった。


「さ、食べ終わったことだし、後は必要なものだけ買って帰ろうかしら。」


「お、おい!待てって。」


 俺も急いで後を追った。俺はせめてもの償いで、凜は「仕返しは済んだからいい。」と言ったが、凜の分も奢らせてもらった。


 そうして、俺と凜は買い物を済まし、その日は終わった。









終わり方、雑ですみません><でも今までより読みやすい?(心情をわかりやすく表現できた)ように思います。


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[良い点] 無し [気になる点] なんだ?この不快の塊のヒロインは [一言] 気持ち悪いんでもう読まんわ
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