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1.崩れる日常と新しく手に入れたもの

 

 人とは、とても変わやすく、流されやすい生き物だ。少なくとも俺はそう思う。


 俺、高木 蓮には推しのVtuber、七雨(しちさめ) レイがいる。そして自慢だが古参勢である。毎日配信を見ているし、そこから聞こえてくる彼女の楽しそうな声が俺を癒してくれる。今ではたくさんの人に愛される人気Vtuberだ。


 が、そんな彼女が配信事故を起こした。そこから世間は彼女に根も葉もない事まで言い、彼女を袋叩きにした。そして、活動休止まで追い込んだ。


 俺はそんなことがあっても推し続けた。なんせ彼女が配信始めたてのころから知っていた事だからそんなことで全く嫌いにならなかったし、むしろ人間味があってそこに愛嬌があるとも思った。最近になって落ち着いて、活動も再開したが、あの頃は本当に荒れていた。


 こういったことを目の当たりにして、俺はたいていの人へ向ける意識がだいぶ変わった。もちろん家族や幼馴染といった長い付き合いがある人には心から信頼を寄せている。だけどいつその関係が切れてもすぐに割り切れる心構えを手に入れた。


 まぁ簡単に言うと、メンタルが強くなったといえばいいのだろうか。


 そんな中、ありふれた話だが俺は割と恵まれた生活を送っていた。容姿はまあまあいい方だし、学校では成績はそれなりにいい。友達は多いとまではいかなくても、気の合う友達はそこそこいた。両親と妹の舞花、そして俺の家族仲は良かったし、幼馴染の清宮 凛もいる。


 そんな普通の生活を送っていた。ある日までは。


 --------------


 俺は電車でオタク恒例の推しのイベントへ向かっていた。その日はいつもと比べて人が多かった。


 ふと、特になにか何かあるわけでもなく視線を動かすとそこには、おそらく痴漢に遭っているであろう女性とそれをしているあろうスーツ姿の男がいた。女性は怖くて声が出せないのか、何もできずにいた。ただ、俺の視線に気付くと「助けて...」といった感じの視線を向けてきた。


 俺はそれを見ると、その女性を助けてあげようと人をかき分けて近づていった。今思えばそれが間違いだったのかどうかはわからないが。


 そして痴漢をしている男のもとにたどり着いたとき、どこかで「この人痴漢です!」という声が聞こえた。俺は反射的に声の聞こえた方へ振り返ると、明らかに俺に向けて指をさしている人がいた。


 俺はすぐに周囲の人に取り押さえられた。俺はこの時、のんきにも面倒なことになりそうだなと思った。


 --------------


 そこからは酷かった。


 俺は取り押さえられながらも一応「俺はやっていないぞ。」と言ったが、聞き入れてくれなかった。また被害に遭った女性が「その人はしていない。」と言っても「あなたは被害者なんだから気を使わなくていいんだよ。」となだめられていた。


 さらに身内にも、俺は同じことを言ったが、周りは聞く耳を持たなかった。両親からは責められ、妹からは「気持ち悪いから近づかないで!」と言われ、友達は当然のごとく離れていった。


 また、被害者へ謝罪をしに行こうと思ったが被害者の足取りが掴めず、結局また改めてと謝罪をしに行こうということになった。


 学校中に噂は広がり、「クズが!!」「痴漢野郎!」などと陰口を言われるようになり、いじめられるようにもなった。


 唯一、幼馴染からは「蓮がそんなことをしないことくらい、ほとんど一緒に育ってきたからわかってる。」と言ってくれた。ほんと恵まれた幼馴染をもったなと、思った。そんなことを言うと、


「うるさいわね。そんなこと言ってないで、もう少しまわりに弁明くらいしなさい。」


 と少し顔を赤くし、照れた様子で優しく突いてきた。


 そういった生活が長く続いた。でも、病んだり、心が壊れそうになったり、不登校になることもなかった。ただ、そういった態度が気に入らないのか、いじめはさらに激化しだしたので二ヶ月たった頃には相手が満足するような演技をするようにした。


 いざこういうことに遭ってみても、言っては悪いが、推しの事件があったおかげで精神的には、特に問題はなかった。


 ただ、居心地は悪かったので、自分でいつでも独立できるようにブログや広告など知識があればだれでもできるものでお金は稼いでいた。俺の働きがいいのか始めてそこそこ経ったころにはいい感じに仕事が回ってきた。これでもバイトをするよりはいい収入を手に入れていた。


 そんなころ、唐突に


「お父さん、そろそろこいつにあの事言ったほうがいいんじゃない?」


「そうね、いい頃合いかもしれないわ。」


 妹と母親は俺を見ながらにやにやした様子でそんなこと言った。なにを言われるんだ?と思っていると父親が相変わらず冷たい視線を俺に向け、何かの書類とカギを机に置きながら口を開いた。


「そうだな、蓮。お前はもうこの家に帰ってこなくていい。わざわざお前みたいなやつのために新しい部屋を借りている。明日からそこで暮らせ。そして俺たち()()()()に関わるな、迷惑をかけるな。」


 俺はすでにこの家に未練はなくなっていて、特に問題もなかったので


「わかった。」


『!!?』


 迷うこともなく平然とした様子で即答したことに三人は動揺と驚きが混ざった顔をみせた。俺はそんな様子に内心で「お前ら言ったことだろ」と思いながら笑った。しかしそんなやつら様子もすぐに直って、今度は逆ギレしてきた。


「そ、そうよ!さっさと出て行って!はぁ、あんたがいなくなって清々する!」


「こ、こんな奴、私の子供じゃないわ。ほら、さっさとどっかに行ってちょうだい!」


「・・・・・・・・・」


 反応は様々だったが、これは早くお暇しないといけないようだ。俺は必要なものを一通り手にして後ろから聞こえてくる罵倒を背にこの家をあとにした。


 そうして、新しく住むマンションに着くとそこには茶髪ショートで、出るとこは出て、引き締まるところは、しっかり引き締まってしまっているいかにも美少女!って感じの雰囲気を纏った人がいた。俺はこれから住む場所なので顔見知りくらいにはなっておいた方がいいだろうと思い、声をかけた。


「こんばんは。新しく隣に住む事になった高木蓮と申します。これからよろしくお願いします。」


「!?」


 俺がそう声をかけるとその人は驚いた顔をした。


「あ、あなたはこの前の...」


「え?俺たちどこかでお会いしましたか?」


「ほ、ほらこの前の。覚えてない?」


 初対面だから敬語で話したのにタメで返してきたぞこいつ。この人馴れ馴れしいな。というかこっちっだけ敬語ってのもめんどいな。


「知らないな。とういうか誰なんだ?俺が挨拶したのにそれを返さないのは失礼じゃないか?」


 俺がそう言うと、いかにもガーンと効果音がつきそうな表情をした。表情筋が豊かだな。う~ん、でもこんな美少女どこかで会ったことあるっけ?などと頭を悩ませていると謎の美少女が慌てた様子で口を開いた。


「ご、ごめんなさい。わたしは篠原 美月って言います。よろしくお願いします。ていうか同じ学校の高木くんだよね。これでも学校では有名なんだけどね。知られていなかったんだ...悲しい...はっ!?そうじゃなくて!この前、電車でわたしを助けようとしてくれたよね!」


 そういえば学校一の美少女とか言われている人がいたっけ。この人がそうだったんだ。


「・・・・・・・・・」


 俺は彼女をよく見てみた。そうい言われるとそんな気がしてきたな。あの時は顔がマスクで隠れていたが確かに目元や背丈がなんとなくあの時に似ている気がする。そうだな、確かにあの時いた人だ。というかなんか聞いたことある声だな。どこでだ...?


「あぁ、あの時はすぐに助けられなくてごめん。責めているわけではないが、もうちょっと早かったら俺もここまで酷い噂をされることもなかったしな。」


「ううん、そんなことない。助けようとしてくれたことは分かってたから。こっちこそ迷惑かけてごめん。わたしのせいでこんなことになって分かっるけどほんとにごめんなさい。」


 さっきまでの態度はどこへやらどこか暗い顔をしながら礼儀正しくそう言って頭を下げた。


「頭を上げてくれ。篠原さん。あくまで篠原さんは被害者なんだから謝る必要はないよ。そう言ってもらえるだけでも俺も報われるよ。」


 俺がそう言うと、安心したような顔をして薄っすらと笑みを浮かべた。


「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ。ところでなんで引っ越してきたの?」


 俺はここに来るまでの経緯を話した。話しているうちにみるみる篠原さんの顔は怒りを増していった。話し終えたころには怒りと悲しみが混ざった顔をし、ゆっくりと口を開いた。


「なにそれ!?一緒に暮らしてきた家族じゃないの!?なんで信じてあげられないの!?そんなのひどすぎるよ...」


 最後の方は覇気がなくなっていた。


「いいんだよ篠原さん。俺は気にしていないから。」


 俺は心からの言葉を口にした。すると篠原さんはさっきよりも悲しい表情をし、目に涙を浮かべた。


「高木くん、冗談でも自分でそんなことない言っちゃだめだよ。それは強がりじゃなくて、自分を卑下していることやわたしから見た高木くんを否定しているのと同じだよ。だから、そんなこと言わないで。」


 なんとも弱々しい声で言った。篠原さんは俺の身に起こったことを自分の事のように受け止め、こんなにも泣いている。そんな様子に俺は少し罪悪感を抱いた。


 それはそうと、今泣いている女の子と俺がいて、その構図は俺が泣かせたみたいな、いや間接的には泣かせているのであながち間違ってはいないのだがこのままじゃ何かとまずいので篠原さんに「とりあえず場所を変えて話をしよう。」と言った。すると篠原さんは


(うち)に来て!」


 と言った。聞くところによると篠原さんは一人暮らしをしているらしい。だから俺は、「それはそれでまずい。」と言った。だが篠原さんは「いいから。」と言い、なかば強制的に篠原さんの部屋へ入れてもらうことになった。


 篠原さんの部屋は清潔感や一人暮らしにしては生活感があって、どこか心が休まる場所だった。 同じ異性の部屋でも小さい頃からお互いの家を行き来して慣れている幼馴染の凛の部屋と違って、内心緊張感があって少しひやひやした。


 そして、俺はここ最近で一番疑問に思ったことを言おうと思い、篠原さんが落ち着いてからしばらくしてから少し気まずい空気を破るように口を開いた。


「勘違いだったら流してくれていいんだけどさ...」


「何かな?」


「篠原さんってさ、配信とかやってたりする?」






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