9.シルバディ・フロイライン
今回、説明パートが入ります。あと、本日2本目です
月の昇る夜。月明りと照明魔道具に彼の部屋は照らされていた。机に向き、手に持つ資料に顔をしかめている。そしてその前に、俺はいる。
「ん、来てくれたな。」
「は、はい。話っていったい・・・?」
「なに、まずは感謝だ。」
男爵は立ち上がると、俺に向かって頭を下げた。
「娘を助けてくれたことに感謝したい。あの娘は私にとって掛け替えのない宝なんだ。」
「だ、男爵様、頭を上げてください!」
「そうだな・・・。」
顔を上げた。穏やかな笑みを浮かべている。
「リーロット君、何かお礼をさせてくれ。このまま言葉と態度だけでは面子が立たない。何より私の気が済まない。」
「あー、いや別に見返りが欲しくてやったわけでは・・・。」
「ふふふ、きっとトーニャも同じように言い、君は同じように答えたのだろう?」
「え・・・」
「そういえば、君には武器が無いはずだ。どうだろう、我が家から何か一つ贈り物ををさせてくれ。」
「ちょ、ちょ、なんでそのことを・・・?」
トーニャか?彼女が言ったのか?
「おっと、矢継ぎ早に言い過ぎた。倉庫に行こう、歩きながら話そう。」
廊下には照明魔道具で照らされているが薄暗い。
「さて、唐突だが・・・リーロット君、君は《スキル》とは何なのか知っているかな?」
「ええと・・・
『スキルとは、人が〈ジョブ〉を得たときに〈創造の神〉から与えられ、〈ジョブ〉の成長に伴って共に成長するもの』
ですよね・・・?」
「そう、その認識で問題ない。」
「でもなんで・・・?」
「世界には例外というものがつきものだ。君は考えたことはないか?自分のスキルについて。」
男爵は腕を上げ振り下ろす。そう《投げる》ポーズだ。俺の頬を冷汗が流れる。
「だ、男爵、アンタ・・・一体どこまで知ってる?」
「そうだな・・・、私のスキルを教えよう。私は《第六感》というスキルを有している。これはいわば《鑑定》と《予知》・・・それと《直観》の複合に近い。おっと、着いたようだ。おしゃべりをしていると随分と時間が長く感じるな・・・。」
俺と男爵は屋敷の中でも重厚そうな扉の前に着いた。
少し補足、フロイライン男爵のスキル《第六感》の一機能である《直観》、《直感》ではありません。本質を見抜くのが《直観》です。