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元赤の地雷

前回のロリ滅は


てっぽういじって心もメンテナンス。

修行とか色々、こんな感じで良いよね。

てか、ロリもやべぇけど性犯罪者が辺境伯ってやべぇよな。


うん、やばいよね。本当の所分からないけど。

 11月に入ってから最初の職人仕事の日。漸く、私の準備が色々と整った事を受けて、私の弟子予定の7名、いや一名加えて8名が、私の仕事部屋の隣の空き部屋に集い、魔法使いとしての始めの一歩を歩もうとしている。


 各自の席には、真新しい羽ペンとインク瓶、文字の練習の為の粘土板。そしてちょっとお高かったけど、羊皮紙三十枚と紙を束ねておいてある。最初は、出来るだけ安い羊皮紙を探したんだけど、そもそもそう言う質の悪い羊皮紙は数もあまりなく、そのくせ私と似た様な用途に需要がある為、思ったよりも安くなくてそのうえ数を確保するのが難しかった。


 余談だけど、羊皮紙とはいっても実際には何の皮を使っているのか分からないけど、何かの言葉の名残なのかこの世界では皮で出来た紙は全て羊皮紙と呼んでいるようで、言いやすくて助かる。



 普通に手に入りやすい質の物で一枚、銅貨24枚。日本円にして約7,200円。各自の席に置いてある羊皮紙だけで大体21万円超えちゃう額だったりするから、ちょっとでもお安いものをって考えるのも解るでしょ?


 使い道に困る位には稼いでいるけどさ、私の感覚ではたかが紙、数十枚にこれだけお金を使うという感覚が中々に受け入れ難い。


 因みに植物で作られた紙はもうちょっと高かったりするので、皆の机の上に置いてある品物だけで一財産といっても過言じゃ無かったりする。


 この世界が、と言うよりこの前線都市では全体的な物価が高いのかもしれない。他の世界での羊皮紙の相場はもう少し安くて、大体一枚4~5千円位で手に入った様な気がするのだけれども。


 更に因むと、片側しか書けない、本当に皮を鞣して軽く表面を処理しただけの羊皮紙と言うより皮、という方が近いような代物ならそれなりに安いみたい。お店とかで走り書きとかメモに使うような用途の物で、表面を削って何度も使いまわしする為に、皮を薄く延ばしていないからその分手間もかからなくて、安い。それでも四千円位するみたいだけど。




 これだけ高価な物だからさ。用意するかどうか迷ったんだけど。


 最初の内は実技と文字の練習が主体になるから、直ぐに使うようなものではない。本当なら必要な時に必要な枚数渡してあげた方が、安心もするだろうしプレッシャーも少なくて済むだろうけど、せめて弟子入り初日くらいは、そう、なんて言うのか。


 ピカピカの一年生に真新しい教科書とノート、筆箱を買ってあげる感覚とでもいうのか。



 年齢的には令和日本的な年齢の感覚で言えば小学生の中程度から中学生、高校生、大人と年齢の幅はあるけどさ。教える師匠の側からすればそろえて渡してあげたいじゃん、用具一式をさ。




 案の定本日、正式に弟子入りしたばかりの8名、いや内7名の顔は緊張と期待を顔満面に表して、目の前に積まれた一財産の品物を前にしてちょっと硬い表情で、でも笑顔が隠せない、そんな表情をしている。


 ある程度の値段を理解できているアリヤさんは顔が引きつらせながら、「こんなに私、払えないよ」って呟いているけど、別にあんたらに払わせるつもりは無いよ。弟子、なんだからあんたらはその内自分の弟子に同じことをしてあげればそれでチャラだよ。



 うんうん、わかるよ。端末わたしの最初の親からもらったランドセルを前にした時、端末わたしがどんなんだったかは、もう記録にも無いけどさ。わかるんだよ、うん。その気持ちもそういう表情になるのもさ。



 ま、1名を除いて、だけど。




 「それで?」



 「それで、とは?」



 「何故私も席に着き、羊皮紙やその他の用具を目の前にしているのかな。」



 「あんたが私の弟子になるからでしょうね。」



 「初耳なんだが?」



 「今初めて行ったからね。当然よね。」



 元赤が珍しく、不満を顔に表して眉をひそめている。シリルがあたふたしているし、いつの間にか元赤を兄貴分として接し始めていたケリーや兄たち二人も居心地が悪そうだけど、ま、今やり込めるからさ、ちょっと待っていてほしい。



 「前にも言ったと思うが、私は今更魔法使いになる心算は無い。その余裕も無い事は知っている筈だが?」



 ま、当然だよね。成らない事に時間を費やす余裕は、ないよね。あんたには。でもさ。



 「ま、付き合いなさいな。どうせあんたはしばらくの間は、私に付き合って護衛してなきゃいけないんだし。」



 「護衛の身なら余計に、弟子入りして他の事に気を取られている余裕はないが?」



 回りくどく理屈を積んでやり込める方法の方がこの身に合っているんだけどさ。この場は他の目もあるし、簡単に数撃で心に届く方法をとらせてもらおうかな。



 「前にも言ったけど、その余裕って奴を作る為にも必要な事なのよ。護衛とは関係ないけどさ。


 あんたの問題を解決するためにも、あんたの次につなげない為にも、魔法使いになるって言うのは答えの一つでもあるんだから。」



 急激に、空気が重く、冷たくなっていく。反対に個体わたしに向けられる視線が熱くなる。まるで本当に視線に物理的な熱が伴っているかのようだ。


 元赤の腹の中が煮えたぎっているのが解る。私に対してなのか、槍に対してなのか、それとも槍の契約をしたご先祖様に対してなのか。


 波動から感じる味からはそのどれもが正解であることが感じ取れる。うん、美味しいし、心地よい激怒の波動に思わず内心笑みが漏れる。もしかしたら口に出たかもしれない。同時に友達を怒らせてしまっていることに対する負の感情も個体わたしの中で芽生える。分霊わたしとしてはどちらも美味しい。



 「前には魔法使いの継承者もいたが、結果は変わらなかった。」



 「そりゃ私が居なかったからね。ただ単に魔法使いになるだけで解決するなら、今まで引き摺っていないでしょう?」




 突如始まった私と元赤のやり取りは、元赤が静かにヒートアップを始めた辺りから、周囲の皆の空気も重くなっている。


 あぁ、ったく。せっかくのおめでたい雰囲気が台無しだよ。部屋の外から皆の魔法使いの弟子入りを一目見ようとしていた他の塒組の連中も、予想外の成り行きにチラホラと散りつつある。ニカは何とかしないとと思ったのか、部屋の中に入ろうとして、周りの女衆に止められている。



 「君がいたから結果が変わるとでも?君にそれが可能なら、とっくにそれを成しているのではないのかな?


 出来ぬから、時間を稼ごうとする。如何にその身とて万能であるはずもあるまい。」



 お互いに致命的な情報の漏洩をさけつつも、言葉の応酬をかわし、何とか決定的な破局をさけようとしている、ように見える。



 何故怒るか。わかる気はする。幾度も繰り返されてきた呪いに依る惨劇。彼の兄も姉も、彼を残して槍に食われてきて、その後を継いだ。幼い事から、教えられてきた事だろう、己の運命にあらがった事もあるかもしれない。


 魔法使いになる夢を諦めて槍の訓練を積んだのも、槍の力を必要以上に使わずに済むためなら、彼も完全に諦めていたわけじゃないはず。だけど受け入れた。


 受け入れたきっかけは分からないけど、今受けたイメージから判断するに、多分目の前でお姉ちゃんが槍に食われている筈。


 受け入れて、漸く表面的には納まりが付いた彼の心を、私が無分別に踏み荒らしている、そう受け取られても仕方ないかもしれない。彼のデリケートな部分に土足で踏み入れてしまった、という事だ。




 多分、私が何とかする、と彼に伝えた時からずっと分霊・個体(わたし)にすら感知できない程静かに、彼の奥深くで燻っていたのかもしれない。




 そっか。でもそれにしても、私にそれが出来るなら直ぐにでもやってくれているはずだ、と思うくらいには私を信じて受け入れてくれているって事だよね。


 出来なくはないけど、一応その槍も使えるように出来るなら使えた方が良いと思うしさ。ちょっとやきもきさせちゃうかもしれないけど、ちゃんと間に合わせるから。



 ここで冗談にも「何故私がお前を助けなくてはならんのだ。」なんて言ったら元赤の表情が全て抜け落ちてしまうような気がする。ちょっとそう言うシチュエーションも経験してみたいけど、洒落で済まないだろうし、壊れたら戻せないものというモノも確かに存在するから、この手の悪ふざけは止めておく。



 自分の中で、食事関係のあれこれのせいで軸がブレるから、うっかり本当にやらかしそうな自分が怖い。特にこうやって激情を向けられて、色々と酔っている状況だと。



 「まぁ、落ち着きなさいな。あんたの言っている事は間違っちゃいないけど、全部が正しいわけでもない。あんたが私の何を理解できているのか、一度深呼吸して考えてみてほしいんだけど。


 ……出来る?」



 言われて元赤が目をつぶり、いつの間にか立ち上がっていた席に、再び座り込む。そうして暫く無言で目をつぶったまま顔を上に上げて動かなくなった。



 「あの……、お話は……何が何だかわかりませんけど、お姉ちゃんがやれるって言うなら、出来ると思うの。小さいころからずっとそうだったから。


 約束通り、私を見捨てずに迎えに来てくれたし。


 難しい事は私には分からないけど、もしよかったらジル様も、お姉ちゃんを信じてほしい、です。」



 不意に、この重い空気に折れることなく、私のシリルがポツリと言葉を漏らす。



 少しして、永遠に黙ってしまった様に上を向いたままの元赤が深い溜息を吐く。



 「今は出来ない。時間があれば出来る。魔法使いになればその時間が稼げる、という事だな。」



 漸く、それだけを言葉にするのに、彼なりにかなりの労力を注ぎ込んだようね。魔法使いになれば時間を稼げるというのは嘘じゃない。修行が始まれば、元赤も皆も魔力量を増やす修行と並行して、魂に直接負荷を掛けつつ根本から鍛えるつもりだから、修行が進むにつれ、そうやすやす槍に食われるほど弱いままではいないでしょうね。


 ま、流石に自力で逆に槍を食らう所まではいけないでしょうけど。



 「そう言う事ね。ついでに言うなら万が一間に合わなくても、際限なく繰り返す事は絶対に無いと言い切れる。十中八九、間に合うとは思うから本当に万が一、だけどね。


 それに、魔法使いになったなら、今まで失った時間も、取り戻せるかもしれないよ?


 それどころか利息込みで帰ってくるかもね。」




 自分が良かれと思って捨てた魔法使いへの道が、状況を好転させる為に必要な一手だったって言うのは皮肉だし、彼の今までを考えれば受け入れ難いのはわかるからね。


 寛大な私は黙って許してあげようじゃないか。うん。



 漸く私に視線を向けて、一見いつもの表情に戻った元赤。彼の心中は未だに複雑なまま。ただ、先程までは無かった感情、僅かな希望がその感情の中に混じっているような気がする。


 私が真に邪悪な神なら、その希望こそが真なる絶望へと誘う道だ!、とか言って状況をかき混ぜたりするだろう。現に、空気を読まずに冗談でそう言う事を言ってのける性質の悪い分霊わたしもそれなりに居るらしいから、分霊わたしがそうじゃない、とは言い切れないけど。



 せっかく生まれたその希望を枯れさせたくはないって普通に思えるあたり、少しホッとする私。少しだけって所に本当に私って邪神気質があるよなぁ。気を抜いたら一発で、友達無くすタイプだね。



 「ふぅ、了解した。いつまでもこの因縁を引き摺る訳にもいかんしな。私の代で断ち切れるのであれば、そうするべきだろう。


 その為の努力と考えれば、例え私に間に合わなかったとしても、この決断が私の生き方に意味を持たせてくれると信じよう。」



 漸く見せてくれたぎこちない笑顔に、他の弟子共と周りの野次馬、もちろん私も漸く一息付けたのだった。

読んでくださり、ありがとうございました。

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元赤は今回の件、色々と複雑なんです。

助けてもらえるかもしれないという一事も素直に受け止められるような心境にありません。

余計な事を言わないで欲しい、放っておいて欲しい。

自分の環境を変えないで欲しい。


今まででもう十分に心的なストレスをため込んでいて、何とかそれを飲み込んできているので、状況が好転すると言われても、それを受け入れるだけでも心が悲鳴を上げるのです。

何かが変わる事を受け入れる事自体、もう嫌なのですね。


それと理不尽であると分かってはいますが、兄と姉の時に何故、救いが訪れなかった?という思いもあります。

単に魔法使いになる事を諦めた事だけが今回の元赤の態度の原因ではないのです。



ただ、救われるかもしれないという事実を拒絶することも出来ない。


自分でも自分が分からない状態で、ただ、理性の部分で目の前の藁を掴むことを選びました。

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