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私の精神安定法

前回のロリ滅は


なんか読み返したら文章滅茶苦茶だから修正しました。


使者として辺境伯本人が来ました。

この辺境伯、やべぇです。普通に犯罪者かもしれない。

依頼は受けるけどさ、とりあえず次の春まで先延ばしって事よ。


ストックは切れましたw

 翌日の職人仕事の日。私の担当分の早朝の雪下ろしをゴーレム式で手早く終えた後、朝食を仕事部屋に持ち込んで、誰も入ってこないようにとケリーやシリル達に伝えた後、籠る。


 別に精神的に何かあった訳では……ま、あるにはあるけど。



 今の個体わたしは人間と比べて脳の処理能力はそれほど変わらない。別の端末さん達はそもそも世界の壁を越えて分霊を作り出す事の出来る方はそれほど多くない。世界を隔てて大量の分霊が作れない代わりに、同じ世界に存在する僅かな数の自分を制御する端末さんの情報処理の速度は人間や私なぞ比較にならない速度を誇っている。



 だからおつむの出来がそれほど良くない端末さんでも、思い悩む時間はそれほど必要なく、あっという間に答えを出していくらしい。


 はっきり言って自慢だけど、端末わたしの様にこれだけ多数の世界に大量に分霊を送り出せる端末は、無限に近いほどの数の端末の中にもほとんど存在しないらしい。


 無限って言い過ぎだと思うかもしれないけど、次から次へと際限なく増え続け、減る事が滅多に無いのだから、長い時間の果て、既に端末わたし達でもカウント出来るような数ではなくなっている。ま、似た様なものでしょう?



 所属しているコミュニティーによって世界を訪れた際にする最初のルーチンワークは少し違うけど、端末わたしの所属している「カトラリー」では大体その世界に産まれ落ちた時点で親の目を盗み、本体を安全圏に確保してから予備を作ってそれを動かすってパターンが一般的かな。


 ただ、大抵の端末さん達は同じ世界に分霊を作る都合と、その数も少ない事から情報処理に余裕がある為、私なんかよりも一つの世界で出来る事や処理速度がかなり速い。



 数少ない分霊わたしの友達である他の端末さんの話だと、そう言う事みたいだ。




 だから、色々とこんがらがってきて考え事や悩み事が増えていくと、時たまに頭の中を整理したくなってくる。他の分霊達が共有しているストレージから手入れのされていない狙撃銃を幾つかと、銃のメンテナンス用具を取り出す。



 多分、他の分霊が戦場を戦い歩いて拾い集めた戦利品なんだと思うけど、こびりついた血痕や泥などが生々しい。ストレージの中では時間が停止しているせいか、銃身からはまだ発砲したばかりの火薬のにおいを漂わせている。



 手慣れた手つきで、狙撃銃をばらしていく個体わたし。思った通り、端末・分霊・個体(わたしたち)共通のこの精神安定法には分霊わたしの制限はかかっていない様で、今世で一から身に着けていない、取得していない技術、知識を使用しようとした途端、頭が空白になるという現象は起きない。



 おそらく、狙撃銃を使おうとすると、使い方も名称も頭からすっ飛ぶことになると思うけど。


 銃身の中を覗き込み、用具を使って中を掃除する。恐らくは元の持ち主の血痕で汚れてはいるけど、それほど使い込まれたものではないらしく、バレルの中も汚れていない。



 世界が違えば、本来はおんなじ銃でも名前が違ってくる。微妙に形状が違ったり、名前が微妙に違ったりして、端末わたしの最初の世界での知識が色濃く残っている個体わたしとしては違和感があるのだけれども。


 これは多分モシンナガンの系統の狙撃銃だと思う。細かい名前の違いとかは考えないで各部にガンオイルを塗って、拭いて、木製の銃床部分に艶出しして、手際よく手入れをしていく。


 一丁を仕上げてから次にかかる。その間はごちゃごちゃした色々な事が頭に浮かばなくていい。



 最初の転生の折、初めて手にした銃はハンドガンのベレッタだったなぁ。近いうちに厄災が起きる事が解っていて、色々訓練を受けるべきだったのに、端末わたしときたら、物質創造能力で作り上げた資金に任せて、海外の観光地の射撃場で満足いくだけ撃ちまくって、それで十分と安心して遊びまくっていた記憶がある。



 好きなだけぶっ放して、好きなだけ飲んで食って、女の子と遊びまくって。多分、用意された準備期間の1年の間に、世界中で無責任に遊びまくった影響で、それなりの数の端末わたしの子供達が各地で産声を上げた筈。


 そしてその大半は、母親諸共厄災を乗り切れずに物心がつく前に命を終えてしまった事だろう。



 無論、用意された1年間の間、必死に自分を鍛えて戦いを学んでいたとしても、結果は変わらなかった。多少、緒戦の極々極地で情勢が有利になっただけで、それで救える命の数はたかが知れていただろう。


 だけど、少なくとももっとちゃんとしていればよかった等と後悔はせずに済んだはずだ。そして全く覚悟がない状態でアレを体験する事もなかったはず。まともに訓練に励んでいて、女の子と遊んでいなければ子供も出来なかったろうから。


 これは記録じゃなくて、記憶レベルで全ての分霊わたしに刻み込まれている。実感を持った教訓とする為に。




 手にした、三八式歩兵銃を見る。これも世界によって採用年月が何かの影響で前後して三七になったり三九になったりとするけど、基本的な形はそれほど変わらない。



 最初の転生と、二度目の転生は世界観がSF的な世界で尚且つ近未来の世界だったから、手にした武器は現代から近未来の武器が主流だった。


 厄災を切り抜けて、短い期間で何度か転生を繰り返した後は、色々と吹っ切れたのか、それとも歪んだ形の贖罪だったのか、魔法も異能力も無い極々ノーマルな近代地球で大戦に参加して延々と人間相手に戦い始めた。



 元が日本人だったからさ。基本的には日本軍として参戦して戦う事が多かったよ。大体3回目から10回くらいまでの転生はそんな事を繰り返していたような気がする。だから日本兵が使う事の多かった武器は、最初の転生と二度目の転生の記憶が濃く残っていても、一番馴染みがあるんだよね。


 三八式歩兵銃の分解を終えて、パーツ毎のお手入れを始める。



 吹っ切れたのはいつ頃だったろうか。ネットワークの存在に気が付いて、他の端末と傷の舐め合いをしている内に色々と教えてもらった。


 ネットワークの存在にしばらく気が付けなかったのは、端末わたしの魂に原因があったのだけれども、もっと早く知りたかったと、暫くの間は自らが仕える神に呪いの言葉を掛け続けた事もある。まぁ、いくら騒いだところで馬の耳に念仏、蛙の面になんとやら。


 ただ、私の神様も単に意地悪でネットワーク関連の能力を秘匿したわけじゃないし、むしろ問題を解決する為に色々と努力してくれたのは事実なのだ。


 その為の普段ならやらない、効率の悪く、短い期間での転生であったし、それを何度も繰り返したのもその一環だったことは、今ではちゃんとわかっている。



 何せ最初と2回目の転生は、転生と言うより感覚的には転移に近い。生まれた先に親も親類も母もいない状態で、最初から大人の体でその世界に作られたのだから。ただ、元の体をその世界に持ってきたのではなく、ちゃんとその世界の物質で一から作ったのだから転生だと言われて、納得するしかなかった訳だけど。


 よく、他の端末共に「木の股から産まれてきた」と揶揄われたものだ。



 当然、そんな無理を通す為には、それなりの莫大なコストがかかるし、神々の端末たちがその手のコストを消費する事を極端に嫌っているから、実行する奴は殆どいない。



 そして、端末わたしの魂の問題は、それをしなければ解決できなかったと、知ったのは随分後になってからだった。




 ……さて、今度は村田銃。三八よりも随分前の奴で、これは一八年式の系統かな。これも世界毎に制定年度が微妙に違ったりするけど、個人的には好きな銃なんだよね。


 チマチマ丁寧に分解、清掃、修理をしていく。修理に関してはこの場で簡単にできない部分もあるから、合理的に魔法を使わせてもらう。


 うん、やっぱり、この作業全般に関しては頭空白事案は発生しないみたいだね。



 自分の力や神様にもらった力の使い方を端末どうりょうに教えてもらいながら、少しずつ理解して、それで漸く最初の分霊を作った。その辺りから、段々と吹っ切れてきて、色々とやりたい事が出てくるたびに分霊を作ってはそれに充てて、その内世界の壁を飛び越えて分霊を送り込む事が出来るようになってきて。



 最初に作られた分霊達わたしたちは、長い間、今では何のための贖罪なのか分からなくなってしまっても、延々と最初の世界に転生を繰り返して、中世、近代あたりから幾つかの大戦を戦い抜く事を続けている。今も。



 だからこの手の戦利品は、共有ストレージの中に呆れるほど放り込まれている。その時の所有者であったかもしれない遺体と共に。



 何時の頃からか、この無造作にストレージに放り込まれた戦利品の修理や手入れをする事が、分霊達わたしたち共有の精神安定法になってしまっていた。


 メンテナンスを終えた銃を、ストレージにしまう前に、軽く動作を確認して引き金を引く。滑らかな動作と、カシンッと響く動作音。撃針の音が心地よい。



 別に自分が使う訳でもないんだけどね。既に居なくなってしまった元の持ち主に返すわけでも捧げる訳でもなく、使う当てがある訳でもない。ただ手入れをして、メンテ済のストレージに放り込む。



 午前中を掛けて幾つかメンテナンスを終わらせてから、漸く部屋に持ち込んだ朝ごはんに口を付ける。朝の内に、私のお昼ごはんはいらないと皆には伝えてある。



 朝食をお昼に頂きながら、漸く自分の頭が、考え事に前向きに向かい始めたのを感じた。今世では初めてのメンテナンスだけど、やっぱりこの個体わたしにもこの精神安定法は馴染むみたいね。変な体質だと、自分でも思わなくはないけど。



 うん、考えても仕方ない部分も結構あるし、結構私の選択肢一つでどうとでもなる様な事ばかりなんだから、難しく考えるのは止めとこう。



 姐さんの事は、この置いて行かれるような感覚は、これから幾らでも味わう感覚なのだから、これが最初の一歩。大丈夫、シリルや兄ちゃん達、それにケリーや元赤は魔法使いになる。して見せる。元赤は拒否できないように持っていく。



 この私が当初の予定なんか吹っ飛ばして、魂の部分から鍛えてやるんだから、皆にはこの世界の大魔法使い様より、地力をつけてもらおう。


 そうなれば、自然と寿命も延びる。想像以上に長生きできるようになる。精神体を鍛え続けてある一定以上に魔力量が増えていけば、そう簡単に寿命では死ねなくなる。この世界ではそうなるようになっているみたい。


 そうなれば、私と同じ時間とまではいかなくても、それなりに長い時間を一緒に生きる事になるでしょうし。自分から求めてそうなるのであれば、長く生きる事に対しての心構えもちゃんとできるでしょ。



 無理矢理にそうなってしまう元赤はちょっとごめんなさいになるけど。



 皆が居れば、私は大丈夫。




 術式に関しては、私の術式を教えるのは、やっぱりやめておこう。皆に渡す予定の補助の魔道具に何重にもプロテクトを掛けて、フェイクも何重にも被せて、その上でプロテクトとフェイクを突破された時点で術式を焼き切ってしまうシステムを構築する事に決めた。



 ちょっと魔道具関連の知識と技術が、現状では間に合っていないけれど、そこだけなんとか間に合わせなくちゃね。



 後は様子を見ながら前に決めた通り、この世界の仕様にデチューンした術式を皆には勉強してもらう。



 元赤の、くそったれな槍は前に決めた通り、チマチマやって間に合わなければズバリとやる、でおっけいでしょ。




 そして、辺境伯家からのご依頼の件、ね。今更断れる話じゃ無し、三人がかわいそうだと思わなくもなかった。報酬で多少は遠慮しようかなって考えていたけど、止め止め。遠慮なく、相場観に合わせてがっつりいただく事にする。元赤の言う通り、自衛の意味も含めてね。


 治療魔法の結果について上に報告されるのは、昨日も思ったけど、まぁ、しゃあない。その後の牽制を含めてのがっつり報酬だから、その後の事は考えない。辺境伯爵家以降は迷惑料を込みの額をがっつりと頂く事にすれば、その次は中々出てこないでしょ。



 辺境伯の妹の様な叔母さん。多分、この人の事が今回一番私の心にダメージを与えたんだと思う。話を聞いているときは、私には関係ない話って思えたし、深みにはまるつもりは無かった。


 端末・分霊・個体(わたし)の様な立場の存在が今更何を言うかって話はあるけどさ。個体わたし個人としては、この手の無理矢理な話は性格的に受け付けそうにないんだよね。


 個体わたしでは閲覧できない記憶や記録に、その手の話が無いとは思えない。分霊毎に性格が違ったりするから、加害者にも被害者にもなっていないとは限らない。


 だから強い事を言える資格は無いんだけどさ。こんな身だからか、その手の話は生理的にアウト、なんだよ。正直、話を聞いていた時よりも、後になって色々と考え始めた時の方が精神的ダメージが大きかった。



 だからもちろん、深みにはまるつもりは無い。立ち入った事は聞く事も話す予定も無いけど、問題は治療の際に彼方から助けてほしいと接触があった時なんだよね。


 いやいや、辺境伯様から受けたイメージがかなりアレな物だったからって今も不同意のまま事に及んでいるかは分からない事だし、もしかしたら最初からそう言うプレイだったのかもしれないから、これも私の考えすぎだと思えばいいじゃん。



 直接会ってみないと分からないけど、辺境伯様もかなり想いを拗らせていたみたいだし、彼から流れてきたイメージの中の叔母さんとやらも、それなりに拗らせていたように受け取れた。



 お互い想い合ってはいたけれど、火傷のせいで叔母さんが自ら身を引いて、それに同意できない辺境伯が無理矢理想いを遂げた、というストーリーがあのイメージには合致する気はするのだけれども、単に無理矢理だった様にも見える。


 単に自分自身でも虚実が分からない位に妄想に飲み込まれているだけで、実際に叔母さんは無事なのかもしれないし。


 いいやいいや。もう考えるの止め。どのみちこの話は雪解け以降の話だし、男女間のドロドロを態々一見さんの魔法使いに相談する奴もいないでしょ。


 第一、即効果のある治療魔法ではないのだから、彼女たちが治る頃には私は彼女たちの側には居ない。ジワジワ治っていくタイプの魔法だから、治った事に対して急激な感情の高まりもないはずだ。ジワリジワリと治っていく事に対する喜びが心に溢れる感じになるはず。



 ん?あ……。叔母さんに施す魔法は「龍尾の魔法」ではなくて美肌関連の魔法だよね。あれは普通に即効性の魔法だった。



 うん、ま、雪解けの後の話だから。うん、考えるの止めよう。



 気が付いたらシリルが晩御飯に呼びに来るまで、午後もずっとメンテナンスをしてしまっていた。

読んでくださり、ありがとうございました。

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単純作業って、心を落ち着けるのに良いですよね。

エリーの様に手元に銃器はありませんから同じことは出来ませんけど、何か落書きしたり、下手なピアノを弾いたり、古い単純作業のゲームをしたり。


貴方の精神安定法は何ですか?

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