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厄介事は大抵間の悪い時にやってくる

前回のロリ滅


考え事していたら元赤の事を話す事になった

ついつい口を滑らせて、助けられるかもと話したの反応なし

助けるついでに無理矢理元赤を弟子にして遊ぼう


ちょっと違うような気がする

 「少し良いかね?」



 その日も午前中の診療を終えて、治療院が出してくれる昼食を手早く食べ終えてから、のんびりとお茶をいただいていたら、院長先生が最近では珍しく話しかけてきた。


 間違いなく、厄介事だよね。



 まだ雪の降り始めだからか、急患の内容が雪下ろしの際に屋根から落ちて骨折したとか、首を折って瀕死とかで運ばれてきた患者さんで今日は立て込んでいた。そのせいで少し遅めのお昼休みだったんだけど、その結構貴重な休み時間も院長先生の持ち込んでくれた厄介事で、吹き飛びそうな気配だ。


 まぁ、午後からは、風邪を拗らせて肺炎になっている人が別の治療院から運ばれてくる予定になっているのと、この所ほとんどなくなってきたパップス戦役の際の受傷者が一人、漸くお金を貯めてきたというので、来院する事になっているくらいで、急患が無い限り暇そうだから良いのだけれども。



 パップス戦役の受傷者さんに関しては流石に時間がたちすぎていて、魔法治療での効果が期待できるかどうか微妙な所なんだけど、傷口は塞がったけどまだ骨がつながっていないみたいなので、一度診察してみる事になったのよね。


 まさか、魔法でちゃんと治す為に自分でチマチマ骨を折っていたりしないわよね?



 ま、変にくっついたり、中途半端に治ってしまっていても私なら治せるから、問題は無いんだけど。その際の料金ってどうやって設定するんだろうね。これ以上無理に大金を稼ぐつもりもないから、適当に胡麻化して安く済ませても構わないんだけど、とりあえず余計な口を挟まないように気を付ければ、十分かな。



 ま、暇って言うのは言い過ぎかもしれない。一応、魔法治療が必要な患者さんが居なくても、シナリオ経験値の為と自分自身の経験を積むために、時間を見て入院している患者さんのお世話をしている。でも一般の医師や看護師さんほど忙しくはない。


 我ながら全く良い身分よね。あぁ、お茶が美味しい。



 「ええ、何もすることもなく、ゆっくりお茶を飲んでいるだけですから、大丈夫ですよ。」



 嘘ではない。先日まで色々と悩んでいたけど、ある程度方向性が定まったお陰で、今は頭の中のもやもやはさっぱりしている。



 「すまないね。」



 「リッポ、私は席を外した方が良いか?」



 「いや、例の件だよ。君が席を外す必要は無い。というか、君がこの件を担当してくれても構わないのだけれどもね。」



 苦笑を浮かべる元赤。何だ?何かの押し付け合いかな?勘弁してほしいよね。こちとら元赤をどうやってやり込めて弟子に押し込めようか内心ニマニマしながらシミュレートして楽しんでいたのに、横から水を差さないで欲しい。


 とはいえ、人と関わり合う事は決定的に個体わたしにとって必要な行為であるのだから、この程度の事で文句など言うつもりは無いのだけれども。



 「あぁ、あれか。事が事、だからな。私の様な門外漢がしたり顔で仕切るよりも君が仕切るべきだろう。私はただの護衛で良いさ。」



 「何が門外漢なもんかね。間に入ってやり取りするだけで、特に専門的な知識が必要な訳でもない。わしの様な平民出よりもジルの方がよっぽどふさわしいと思うがな。」



 つまり以前からちょこちょこと元赤や院長先生が言っていた辺境伯様の案件かな?多分、通常の治療魔法では完治できない状況の患者さんを、治してほしいとかいう話だとは思うけど。患者さんは辺境伯の身内か関係者って所かな。



 「前にも何度か話したことがあるとは思うけどね。多分、もう察しがついたんじゃないかな?以前、話した通り辺境伯の依頼の件についてなんだがね。」



 話を続けてくださいと言う意を示して頷く。



 「先ずは君の、例の古傷であっても四肢の欠損であっても時間をかけて治療できる魔法がある、という事を再度確認させてほしい。


 こちらでも、君にその治療魔法を掛けられたというラモット君の経過は把握しているが、事が事なのでね。なんせ今まで確認された事の無い種類の治療魔法、という事だしな。


 本当にそんな魔法が存在するのかどうか、半信半疑な者も多い。エリー君には失礼な話になるけれどもな。それでも確認を怠るわけにはいかんのだよ。


 患者に希望を持たせた結果、完治がかなわないと知れば余計に傷付ける事になりかねない。下手をすると今まで何とか耐えきってきた心を折ってしまい自ら命を絶つ事にもなりかねん。」



 院長先生が色々とごもっともな事をツラツラ話始めるけど、私は一点において首肯できないでいた。



 ラモット、くん?誰だっけ?



 「ラモット?くん。ん?」



 そんな私を呆れたような目で見る元赤。



 「薄情だな。君は自分が半身不随の運命から救った男の子の名前すら覚えていないのか。確か彼はちゃんと君に自己紹介をしていたと記憶しているのだが?」



 半身不随から救った人たちは、結構いると思うけど。ってあぁ!話の流れから察するに「龍尾の魔法」を使った子の事かな。それなら一人しかないもんね。


 へぇ、あの子ラモットって言うんだ。知らんかった。



 「あの時期は次から次へと忙しかったから、完治した子の事はあんまり覚えていないかもしれない。そっか、あの子ラモットって言うのね。なかなかいい名前じゃない。」



 「彼が君に自己紹介をしたのは、忙しい時期を抜けて、ようやく一息付けていた頃だと思うのだがな。


 それに、君の着替え中や沐浴中にうっかりテントに入り込もうとしたり、明らかにうざがっている君にひるまず、まとわりついてもいたからな。


 それで覚えていないというのもおかしな話だが。」



 あー、多分忘れたくて忘れたのかもしれない。



 「彼の印象が薄かったのかどうかは、また別の機会に論じてくれるかな。それよりもどうかな、エリー君。」



 そりゃ、治るかどうかなんて実際にその状況を目で見てみない事には何とも言えないけどさ、訳の分からない呪いとか変な術式とかが絡んでない、普通の古傷、欠損なら問題なく治ると思うけど。



 「ええ、大概の怪我や病気を治せる治療魔法、ありますよ。怪我や病気の状況によっては完治するまで数か月かかるかもしれませんけど、何度か施術すれば、治せると思います。


 あー……元赤じゃないけど、変な呪いとかかかっていなければ、ですけれどね。」



 あからさまにホッと安心したような顔をする院長先生。



 「あの修羅場の中、次から次に運び込まれてくる患者を捌きつつ、その治療魔法を使った、という事は、その魔法を使う事で君自身にリスクは無いと判断しても良いのかな。」



 「ええ、まぁ。容易に連発できるような魔法ではありませんし、前にもお話した通り即効性はありませんけど、今の私にしてみればローリスク、ミドルコスト、ハイリターンって所でしょうかね。


 流石にこの魔法を大々的に公開するのは色々と混乱を引き起こしそうですし、私のこれからの人生が大変な事になりそうですから、遠慮したいのですけど。


 ご依頼の前にどなたかで一度テストをしてみたいの仰るのでしたら、口止めをそちらの方でしていただけるのなら、今からでもお受けできますよ 。」



 「いや、それには及ばない。今の君に私達をだます理由がないからね。ジルがその魔法を確認したという報告も受けている。


 私達が自分たちの都合のいいように勘違い、解釈をしていないか、その可能性を排除するための確認でしかないからな。


 ま、こんな世の中だからな。想像はつくと思うが、高位貴族であれ、王族であれ親族にはいるものなのだよ、戦傷を受けて苦しみ続けている縁者というものはな。下手に生きて行くだけの財力があるだけ、苦しみが長引く事もある。


 辺境伯家だけでも何人か、そういうものがいるはずだ。今回は辺境伯からの御話だがな、今後は王族や他の高位貴族からも似た様なお話が来るだろうね。」



 またあの時治療した貴種のお嬢様の事が頭をよぎった。彼女は、今はどこで何をしているのだろう。



 「あんまり広まるのも考え物なんですけど。」



 国中のお貴族様がわらわらと銀貨の山を抱えてエステーザに集まってきても困るのだけれども。私にはやらなくてはならない事はあんまりないけど、やりたい事なら結構あるのだから。延々と古傷抱えたお貴族様や王様を相手にしている訳にもいかない訳よ。


 この世界では貴重なマジックアイテムを作ってみたいし、魔法の武器や鎧も作ってみたい。あ、でも鍛冶仕事は手間も設備をかかるから、既存の物に手を加える感じで。いずれは弟子を取って才能の無い者であっても作れるマジックアイテムの類を世に広めるのもいいかもしれない。


 混沌側に漏れても害の少ないタイプのものに限定すれば、影響が出るにしてもずっと先の話でしょうし。


 それから、一から色々な技術を身に着けて、いずれは飛空船とか作ってみるのも面白いかもしれない。チマチマやっていけば完成は何百年後って事になりそうよね。シナリオ経験値を消費すれば意外と早く作れるけど、ズルしているような気になるからなぁ。


 あ、今気がついちゃった。当面の目標を果たした個体わたしにとって、分霊わたしの仕掛けたこのゲーム的な成長システムの動作テストなんか既にどうでもよくなっちゃってるみたい。



 駄目だよね、簡単な方に流されちゃって。やっばいなぁ……。このままじゃ近い将来、怠惰な暮らしに満足してやりたい事すら自分に色々言い訳してやらずに、延々と患者さんを治療するだけで食っていく人生を送りそうな気がしてきた。



 いかんいかん、その内出来ればいいや的なマインドは宜しくない。ある程度自分の中で新しい目標を定めて行かなくちゃ。



 「その辺は、心配せんでもよかろうよ。何故、王族や高位貴族から話が来ると言ったか、少し考えればわかるだろうに。


 そんな見た事も聞いたこともない治療魔法を受けるには一体どれほどの対価が必要になるか、それを考えれば、な。


 そんな治療を受ける事の出来る者など、莫大な財産を持つ者か権力者だけだろうしな。」



 今日の午前中だけでも、銀貨300枚オーバーで稼いでいるのにまだお金の話ですかい。今の次期、患者さんが多いって話でね。いくら雪国で雪になれているとは言っても、降り始めはうっかりが多いから。



 「君の事だから治療費の事など考えもしなかったのだろうが、現状ではどのような賢者であっても治癒不可能な症状を治してしまう他に類を見ない治療魔法だからな。


 ここで君が変に遠慮をして、治療費を安くしてしまえば君自身を含めて彼方此方に不幸を振りまく事になる。


 専門家である君に、ずぶの素人である私なぞが意見する立場にはないが、治療魔法にはそれなりの相場観って言うものがあるのだろう?


 ここは大人しく、料簡してくれると助かるのだけどもな。」



 理解できるから、ここは大人しくうなずく。前にも言ったけど、私が治療魔法の価格を破壊してしまうと巡り巡って結局、秩序側全体の弱体化をもたらしかねない。短期的には強化されるけど、なり手が極端に少ない治療魔法の担い手が、更にいなくなってしまうし、現在の治療魔法の担い手の生活を脅かされることになる。


 そしてそれは奇跡の担い手の方々にも同じことがいえる訳で。



 「随分と素直、ですな。ふむ、余計な事は言わぬに限る、かな。誰を何時、何処で治療するのか、という内容は貴人の予定についての情報になるからな。わしには開示されていない。


 数日以内に辺境伯様からの使いが治療院に来ることになっている。無論、エリー君の勤務の時を見計らってという事になるがね。


 悪いが、そこで辺境伯と面会してもらって細かい打ち合わせをしてもらう事になるだろう。面倒ごとに関わるのが嫌だという君の気持ちは痛いほどわかる。本当に分かる。なぜなら現在進行形でわしも同じように感じているからな。


 だが、そこを曲げて受け入れてくれると助かる。一応、これも業務の内、だと考えてくれ。」



 貴人のスケジュールが外部に漏れると防犯上、宜しくないって事だよね。



 「打ち合わせのすぐ後に治療、という事はあり得るのかしら。」



 「さてな。私も知りうる立場にあるが、情報は持っていない。その可能性は否定できない、とだけ言っておこう。」



 だよね。それにしても、またお偉いさんの知り合いが増えるのか。勘弁してほしいなぁ。

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暦の上では秋とはいっても、夏だなぁと思う今日この頃。

もうさ、3・4・5月が春。6・7・8・9月が夏。10・11月が秋。12・1・2月が冬ってしちゃえばいいじゃん。


んで、温暖化が進んで少しづつ暑い時期が増えればそれに合わせて夏も増える。

学生さんは夏休みが増える。いいやん?これ。


ついでに社会人も夏季休暇を取れるようにしてほしい。ブラックな職場でもせめて3~4日のお盆休みくらいはもらいたい。

お盆の時期にもらえなくても良いから。



ふぅ……。

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