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シュリーさんの弟子入り

前回のロリ滅は


魔道具作成の下準備しよう

支部長さんに捕まった

ゴーレムの重機使用開始


あ、久しぶりじゃんシュリーさん

 それなりに術の制御に一杯になっている様な、でもそれを私に見せたくなさそうな。そんな雰囲気のシュリーさんの恐らく見栄を張った挨拶に大変だなーと思いつつ返事を返す私。



 「本当にお久しぶりですね、シュリーさん。パップスの騒動の後に気にはなっていたんですけど、不義理にも連絡を取らずじまいで申し訳ありませんでした。」



 そう言うと彼女は目を白黒させた。ん?個体わたしはこの人にどんな態度を取っていたんだっけ。どうもさ、素が出たり演じてたりしていると、たまにこういうの外すんだよね。私の中では魔法使いの先輩ポジにいる人だって認識だから、少し丁寧にあいさつしたんだけど、失敗したかな。



 「あ、いいや。不義理なのはお互い様よ。ま、貴女はあの後一躍時の人になったからね。安否を確かめるまでもなかったし、忙しいだろうから遠慮しとこうよって話になっていたんだけど。


 流石だね。私なんか話をしながらゴーレムの制御なんて器用なこと出来ないよ。しかも3体も。あ、もしかして自立式なのかな?いいえ、それにしてもあり得ないわよね。自立式ゴーレムを三体も作成して維持するって……。


 どちらにせよ、生と死を司る女神様って言われるだけあるわね。」



 うぇぃ。ちょいとシュリーさん迄そんな厨二呼びするんかい。てかさ、この手の世界で厨二な名前を付けるのは実は、悪い事じゃないし恥ずかしい事じゃないんだよね。


 名前でハッタリを利かせるのは冒険者として生きて行くには結構重要な事でさ。少々やり過ぎでも無難な名前、情けない名前より、勇ましい名前、英雄を彷彿させる様な名前を付けた方が何も知らない依頼人に対しての印象が非常に宜しい。


 ちょっと考えて欲しい。昼行燈なんて二つ名を持っている冒険者と、戦鬼やら闘神やらの二つ名を持っている冒険者。どっちに仕事を任せたいと考えます?真なる実力がどちらも同じだとしたら……ね?



 だから当然、周囲の人達も地元から英雄が出れば厨二なネーミングを付けてもてはやす。根本にあるのは純然たる善意だし、名声を得るのにある程度有効だから余計に始末に悪い。


 たまに二つ名が被る事もあるけど、まぁその辺はご愛敬。大体何処の地方にも一人は要るもんなのよ。戦鬼やら闘鬼やら闘神やら女神やら付けられる人は。



 単に平和ボケした令和日本のマインドを標準装備してしまっている端末、分霊、個体(わたしたち)の共通の拒絶反応ってだけで、現地人である彼らにとっては「生と死を司る女神」って言うのは新しく誕生した英雄を称える、名誉ある二つ名って訳なんだよね。



 と、わかっちゃいるけど、勘弁してほしい。



 「ん?ちょっと顔色悪いわよ?やっぱり3体をコントロールするのは無茶だったんじゃないの?戦闘じゃないから周囲を警戒する必要は無いけど、事故を起こせば命に係わるわ。


 あんまり無理をしないでね。


 私もちょっと話しながらだとコントロールに自信が無いから、集中させてもらうわね。後でまた近況を話し合いましょう?


 同じ魔法使いとして、ね。……そのゴーレムの術式に関しても、色々と聞きたい事があるし。」



 流石魔法使い。心理を追い求めるもの達よ。目がちょいとマジで怖いです。



 「あはは、魔術は秘儀ですからどうしても話せる事と話せない事がありますけど、それでもよろしければ。


 まだ弟子にも教えていないんですからね。」



 そう言うと、シュリーさんの操作するゴーレムとシュリーさんの動きがピタッと止まった。



 「え、なに。エリーちゃん。もうお弟子さんいるの?」



 えぇぇ。さっきよりも目が怖いよ、エリーさん。



 「え、えぇ。ちょっと早いかもしれませんけど、妹や兄弟たちに頼まれまして。ついでにって事で同じ塒に住んでいる人達にも才能のある子達に教えようかなと。


 あ、大丈夫ですよ?ちゃんと人にものを教える事が出来る程度には魔法を修めているつもりですから。それなりに実績は示しましたし。」



 未熟者が思い上がって弟子を取っていると思われているのかもしれない。それはちょっと心外だし、シュリーさんにそう思われるのも寂しいのでちゃんと否定しておく。


 ま、実績を示したところで外見11歳の少女が、魔法使いの導師として弟子を指導するって絵面だけで違和感しかないんだろうけど。



 「あ、いやー……そうじゃなくてね。何その弟子達、凄くうらやましいんだけど……。ねぇ、エリーちゃん、ちょっと聞いてみたいだけなんだけどさ、そのさ。


 もう一人弟子を取るつもりは無い?


 あ、いや、付きっ切りで教えて欲しいとか、一緒にご飯食べたりしたいとか、抱っこしたいとかそういう事じゃないのよ?


 そういうのは偶にでいいからさ。ただ、やっぱりさ。魔法使いとしては悔しいけど噂半分だとしても私じゃエリーちゃんの足元にも及ばないのよね、私。


 だからさ、凄い人の元で修行して、もっと力を付けたいのよ。」



 あぁ……、こう来ましたか。いやさシュリーさんには恩義はあるし、ま、ご飯くらいは問題ない。付きっ切りで教えるのは、まぁ教えられる事と教えられない事があるからその辺は匙加減って事で。



 抱っこは……うん、別に構わないよ?私もシュリーさんに抱っこされるのは嫌じゃなかったからね。ただ、時と場合は選んで欲しいけど。


 でもさ弟子入りって言っても、今いるパーティーの方はどうするつもりなんだろう。


 それに何を教えればいいのよ?現地の純粋栽培な魔法使いに私の修業を施したらいったいどうなる事やら。


 んー……。基本は出来ているからって魔力コントロールは省いちゃって、魔力量を増やす為に少々負荷を掛けてあげるか、その手のマジックアイテムを作って渡すか。


 後はこの世界用にデチューンした私の持ちネタを幾つか教えるか、かな。だとすれば別に付きっ切りで弟子入りさせる必要は無いんじゃ……ないかい?うん。


 でもとりあえずご要望に対しての返答をしておく。



 「弟子入りって冗談じゃなくてですか?私としては、特に問題はありませんけど、弟子入りとなると今組んでいるパーティーの方はどうなさるおつもりですか。」



 私の言葉に熱に浮かされた様な顔のシュリーさんが、急に冷や水を浴びせられたような顔になった。



 「だよねぇ。うん、だよね……。


 リロイをほおっておくわけにはいかないし。私がいないと皆が困るし。リロイなんか、気が付いたらまた死にそうになってるかもしれないものね。


 あぁ、でもでも、ここで力を付けておかないとこの先、生き残れるか自信無いし。」



 あ、工事の責任者さんがちょっと怖い目で動きの止まったシュリーさんのストーンゴーレムとシュリーさんを見ている。ちな、私のスノーゴーレムはこの会話の中でも一切動きを止めずにお仕事を続けている。



 沢山の分霊を動かす端末わたしは当然として、個体レベルでも状況によっては数百体動かす事もある分霊、個体(わたしたち)であってもこの手の作業は得意だからね。動かす対象に補助的な情報処理を請け負ってくれるシステムや脳が無くてもこの程度の数なら問題ナッシング!



 あぁ、早くシナリオ経験値を貯めて、もう一つの個体わたしを作れる様になりたい。


 ちょっと必要経験値が多すぎて、あとインフレやお値段改定が頻繁過ぎて、溜まるまで何十年かかるか分からないけど、それが出来るようになれば片方で冒険に出まくって片方で職人生活を満喫できるのに。



 下手に分霊わたしが制限掛けるからこの暮らしを満喫できないよ。一応、魔法で似た様な効果がある物もあるし、リストの中にあると思うけど、効果時間に限界があるし、ちゃんと体を作る訳じゃないから色々と出来ない事も出てくる。アザーセフルって魔法だっけ。


 あの系統の魔法は、永続化をしても結局は魔法で作った仮初の体だからね。ちゃんと物理的に土塊や水から変換して作った肉を持った体とは根本が違うから、本体にはなり得ない。



 もう一つの個体わたしを作れれば、どっちかの個体わたしに万が一があった際に残った脳の方で肉体に依存する記憶の類を一切損なうことなくバックアップを取る事が出来るし、自分で自由に作れる様になれば、直ぐに代わりの個体わたしを死亡地点か別のどこかに任意で作ることも出来るから、色々と便利なのよ。



 ま、そもそも制限が一切なければ、根本的な所で問題解決できるんだけどね。多分、この個体わたしも予備だろうし。



 最初に産まれた個体わたしの肉体はカトラリーの規定通り、万が一の予備として、そしてこの世界から簡単に零れ落ちない為の楔として安全な場所に保管されていると思う。本当の所は、流石に生まれたばかりの記憶は個体わたしには無いから分からない。


 分霊わたしはその辺教えてくれないし。緊急事態でも使わせてくれるとは思えない。個体わたしの体なのにね。だから、個体じぶんで自由になるもう一つの個体わたしを作っておきたいって考えている訳よ。



 そしたら狙ったかのように個体増殖の権利がバカ高いし、知識、技能の取得はそれ以上にバカ高い。これは完全に個体じぶんいじめだと思う。知識・技能を取得すれば自分で好きなように増やせるけど、それが多分分霊(わたし)の都合的に不味いんだろうね。


 その代わり一体、経験値いくらで作る分には何とか手が届きそうなお値段設定だし。個体作成の知識・技能に関しては経験値を貯めてもたまった分を帳消しにする感じで、徐々に値上がりしているから、最初から取らせるつもりが無いのが丸わかりだったりする。



 そんな事を考えている内に、段々と責任者さんの目が怖くなってきている。直ぐに注意をしに来ないのは最低限、魔法使いに敬意を払っての事だと思うけど、それでも彼らにも責任というモノはあるのだから、このまま黙っていてくれるわけがない。



 「あぁ、監督官の目が気になるのかな。大丈夫だよ。私たち魔法使いに頭ごなしに注意するような真似はしてこないから。力あるものって言うのはそれだけで脅威だし、貴重な戦力だからね。


 だからと言って力あるものとしての自覚を持たずに、期待を裏切ってばかりじゃ立場を無くすけどね。少しお喋りをしているくらいなら問題ないわ。あぁ、でもどうしようか……。」



 「後で時間が出来てから考えませんか?ご自分一人で決められる事じゃないでしょうし。」



 正直、シュリーさん達の関係が単なる仕事仲間、パーティーを組んでいるだけというのなら、縛られることもないとは思うけど。


 前にも感じた通り、一人の男を取り合っている者達の集まりとして考えたなら、パーティーからの離脱はリロイさんを諦める事に等しくなる。


 それにこういう世界観だからね。複数の男女で家族を作る事が普通な世界だから、彼女達もライバル同士というより、将来同じ家庭を作る家族になるってつもりだったんだろうし。一人勝手な判断で色々決めてしまえば、彼女達との関係もおかしくなってしまう。



 改めて相談された時に、通い弟子って形態を進めてみる事にしよう。



 重い石材を持ち上げようとして、手を滑らせかけたスノーゴーレムの制御にちょいと注意を向ける。雪を固めて氷にしているだけあって、石材との接触面の圧力が高まると表面が解けて滑りやすくなるんだよね。接地面の温度を下げたり、摩擦をコントロールするなり色々と手立てはあるけど、持ち方を変えるだけでも違うから。



 そんな私を見てか、仕事の邪魔になっていると自覚したシュリーさんは少々自己嫌悪の表情を浮かべた。



 「先達の筈の私が、後輩の仕事を邪魔したり足を引っ張るとか、あってはならないわね。申し訳ないわ。


 お言葉に甘えて、後で時間を作ってもらえたら嬉しいのだけれども。」



 元から言葉遣いが丁寧なシュリーさんが一線引いて目上の人に対するモードに入ってきたわね。将来弟子入りしようかと言う人に対して接しようとするなら当然だろうけど。


 うむ、修行中は兎も角、普段は普通に接してもらう事を弟子入りの条件にしよう。



 護衛についてきた元赤とケリーが、さっきから心配そうにこちらをチラチラ見ているし、そろそろ話を切り上げないとね。つーか二人とも過保護だな。ほっといても何もやらかしゃしないわよ。



 「そうですね。後でまた時間を作りましょう。そんなに急がなくても問題はないでしょうし。」



 私の言葉を受けてシュリーさんは軽く頭を下げ、ゴーレムを伴って自分の持ち場に戻った。あぁ、つい前向きに弟子入りに関して話してしまった。


 でもシュリーさんには恩があるからなぁ。


 おっと。


 考え事に気を取られて、再び手を滑らせそうになった。気を取り直してスノーゴーレムを制御しなおし、作業に集中する事にする。先ずは、て滑り防止の為に両手の温度をさらに下げて、掴んだものを吸着するように魔力を展開して……。

読んでくださり、ありがとうございました。

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久々のシュリーさんでした。

アザーセルフの魔法、使えるとしたら本体はゲームしながら小説書いて、分身には仕事してもらって……。

あぁ、夢が広がるなぁ。


アザーセルフの厨二的日本語訳、考えてみたのですが語彙力無くて……。

普通に「自己複製」辺りにしてしまうか考え中です。

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