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東の大門

さて先週のロリ滅は


魔法剣をつくろう

世界を外から見ると

魔力ペンの可能性について


出来上がった魔法剣はこちらになります。いや、流石に三分じゃ作れないよ?

 現在、私は午前中の治療院勤務を終え、冬場の雪の中にも拘わらず冬を徹して再建作業に血道をあげている東門付近で……何故か働いている。


 いやさ、東の大門とその付近の防壁の再建が急務である、という事は理解しているけどまさか冬の豪雪の中作業を再開する事になるとは思いもしなかったよ。しかもかなりの無茶を通しての強行で、その上作業を請け負う職人や冒険者達に熱烈に支持されているって言うんだから、私が断われる筈が無い。



 社会から弾かれる訳には行かないからね。そうなっても生きて行けるし、どうとでもなるけど、社会と関わり続けて行った方が人として生きやすいし、人外としても生きやすいのよ。私の場合。



 それにしても私の仕事のメインは二つ。その内の一つは、冗談でその内依頼されるかもねって言っていた雪かきなんだよ……。マジで。




 ショートソードに手を加えた後、ダガー、それと何着かのローブのとりあえずの魔力付加作業の下準備を終えて、幾つかの効果を付与して、一段落としたのよ。これ以上弄るとなると宝石の魔宝石化作業とかローブに魔法陣を刺す作業やらあるけど、ちゃんと計画を立ててからやらないとそれなりにコストがかかる作業だからね。コスト、費用だけなら兎も角、時間というコストもそれなりにかかるから。



 それだから、補助具の材料がそろう前に下水組の装備をある程度済ませておきたくて、ギルドへラットの皮を購入する為に顔を出したのが運の尽き。


 いやさ、結局私から顔を出さなくてもおんなじことになっていたとは思うけどね。




 ギルドで私を捕まえた南と東の臨時支部長さん二人から説明された話からすると、冬季再建工事決行の切っ掛けは3つ。



 一つは遥か東の地、ここから幾つかの最前線都市を東側に越えた場所。混沌側に突出していた最前線都市、ホーデが混沌勢の攻撃の際にかなりの被害が出たという情報が届いたからだ。単に力負けして攻め込まれたのか、それともここと同じく何らかのイレギュラーが発生したのかははっきりしていないけど、壊滅的一歩手前というくらいの被害が出たようで、現在は何とか戦線を維持出来てはいるものの近いうちに陥落するかもしれないとの事。


 情報の伝達に時間がかかる世界での事だから、実際に事が起きたのが夏の終わり頃の事で壊滅状態に陥ったのが冬に入る前だというから、もしかしたら今は既にホーデは陥落しているかもしれない。


 当然、後方都市にとって最前線都市の陥落とは自分たちの生命に直結する大事に間違いないわけで、ホーデ陥落を阻止する為に総力を挙げている筈だけど、そうそう思い通りにいけば苦労もないわね。



 東側とは言ったけど、正確に言えば南東側と言った方が良いかな。あの辺りはこちらと違って比較的内陸部になるせいか、寒さはこちらとあんまり変わらないけど、雪の量が少ない。ほとんど降らないし積もらないから、混沌側の軍事行動も雪の制限を受けては無いだろう。



 その一報を受けてから、エステーザのお偉いさん達は顔を真っ青にして何とか門と壁の工事を冬季の間に進めたいと四苦八苦していたみたい。


 ただ、この積雪だけは物理的に如何ともし難い上、事故が多発するだろう事は明白で作業員の士気にも関わるという事でどうにもならずにやきもきしていたみたい。



 そうしていたらホーデ陥落の危機を聞きつけた人達の間で、座して滅びを待つわけにはいかない、と一部の職人たちや冬の間の食い扶持を求めていた冒険者たちが我が身を省みず、「今の内でもできる事を。」と作業の再開を要請したみたいで、お偉いさん達も出来るだけ補助をする約束をして小規模ながらも作業を再開していたみたい。



 なんでも普段その手の工事を請ける事の無い高位の冒険者や、町方の人達迄自分達にやれることは無いかとギルドに問い合わせがある位だとか。


 とは言ってもとても本格的な工事をするわけにもいかない。仕方なしに雪解けを迎えた際に直ぐに再建作業に取り掛かれるように、その下準備に終始していたけど、これが二つ目の理由ね。



 道理で豪雪地帯の冬とは言え、治療院の患者さんが最近多いなぁとは思っていたんだよね。


 無茶な工事に参加して大怪我を負った人たちが多かったって言うのと、魔法治療の費用の一部だか全部だかを街の壁内壁外問わず富裕層が補助してくれたから、魔法治療を受ける患者さんが多かったという訳ね。


 こちとら患者さん達の細かい事情は聞かないし、そういう聞き取りは他の職員さんが済ませて、私は症状だけを把握して治療していたから知らんかった。



 本当にお金を持っている高位の冒険者は、信じられない位の金貨と銀貨の山を持っているって話をアリヤさん達がしていたから、その位なんでもないのかもしれない。



 そして、パズルを完成させる最後のワンピースは私の存在だったわけよ。もっと具体的に言えば私が雪掻きでズボラをする為に使っていたスノーゴーレム作成の魔法、だね。


 元々こういう大規模な工事で、ゴーレムを作成できる魔法使いが雇われて重機の代わりをするって言う発想が無かった所に、まるでブラックホールか何かの様に雪を吸い込み巨体になっていく私のスノーゴーレム。


 巨体になってから、周囲の自力で雪かきをできない人達の家の屋根の雪を吸収して、そのまま川まで行って入水自殺するスノーゴーレムを見た警備兵の一人が、「こんなに巨大になるゴーレムなんて初めて見た。これって大門の工事に使えないか?」と呟いたのを彼の上司が聞きつけて更にその上役に相談したのが切欠みたい。



 あれよあれよと辺境伯の耳にまで届いて、ギルドの臨時の東本部長に確認せよと通達が飛び、リーメイトさんの所まで話が行ったのが、私が丁度ギルドに顔を出した時だった。


 わぁ、タイミングが良いなぁ。本当に……。



 当然、エステーザにも大魔法使いは多くいるし、伝説に名を連ねてもおかしくない高位術者も集まっている。ほとんどがきわどい実戦を潜り抜けてきた本物揃いだ。だから巨大なゴーレムを操る術者もそれなりに居る。


 今回、エステーザ側が把握しているゴーレム使いのほぼすべてに声がかかり、切欠になった私も例外なくお声掛りを頂いたという事になる。


 特に私は、除雪も頼まれていて、午後の作業開始時刻から忙しくスノーゴーレムをコントロールする羽目に陥っている。



 魔法治療の方が報酬が良いから乗り気ではなかったのだけれども、こういう時に我儘を言って印象を悪くすると後が面倒なのと、話を持ってきたリーメイトさんが私の事情を「よく」知っていたから、それほど無茶は言ってこなかった為素直に受ける事にした。



 あちらから申し訳なさそうに話を持ってこられたら、こっちも頭に乗って偉ぶる訳にもいかない訳で。結局暫くの間治療院での仕事は朝一と現場仕事が終わってから治療院によって纏めて済ませるという話になった。初日は患者さんが待っていたり調整しなきゃいけない事があったから午前中いっぱいは治療院に詰めたけど。



 暫くの間は患者さんは、私が来るまで痛みに耐えて頑張ってもらわなきゃならなくなるわね。


 それと、現場で怪我をした人は私が魔法治療を施す事になって、その報酬は規定通りもらえる事になったから、その為に報酬額を算定する専門の職員さんが治療院から出張してくることになった。


 まぁ、彼女も治療魔法行使者である私が現場に行ってしまったら仕事にならない訳で、これは当然の措置かな。



 それと幾重にも拝み倒されてね。端末わたしの頃の習慣に囚われている個体わたしはこの世界には存在しない一週間単位で動いている。


 んで、7日の内4日の治療院勤務で3日を休みにして職人仕事の日、今ではそれプラス弟子育成の日にしていたのだけれども、その休みの日も現場に出てきて欲しいと懇願されて、仕方なしに了承する事にした。


 この世界の基本は大体10日単位で動いて、月によって日数が違う分を帳尻合わせしている感じだね。わかりやすく訳すなら上旬、中旬、下旬ってな感じ。


 弟子の修業の予定が大幅に狂う事になるなぁ。夜にでも帳尻合わせするしかないかな。それでも大幅な遅れが出そう。ある程度余裕を見て計画を立てたつもりだけど、色々と誤算が出てくるなぁ。



 ただ、時間がかかると思っていたアリヤさんと元赤が予想外に順調だから、最終的には帳尻合うかな。うん、合うんじゃないかな?合えばいいなぁ。……ふぅ、とりあえず考えるの止めとこう。



 治療費以外の報酬は、雪かきに関してはそれほど多くないけどそれでも雪かきにしては桁違いの報酬が出る事になったし、壁の工事に関して言えばゴーレムがどれほど効果を発揮するかは未知数であるため、出来高制になったから、ある意味美味しい。



 欠点としては魔力回復ポイントになる獲物が今回は存在しないからあんまり派手に魔力を使いまくると後半バテてしまう事と、今後似たような事がある度に当てにされて使われるといった所かな。



 ただ、あんまり長くこの工事に付き合っている訳にもいかないし、弟子共の修業にも影響が出てしまうから、可能な限りさっさとこの工事を終わらせたい。



 石材に直接干渉して一気に組み上げても良いわけだけど、それをやりたくともこの場に集められている石材だけでは十分ではないし、どう組み上げていくのかも他の破損部分を確認しながらやるみたいだから、豪快に一気にって訳には行かないみたいね。



 ま、それでも時短できる場面では一気に時短して、出来高報酬と早期解放を目指す事にする。暫くの間はスノーゴーレムを重機として使う事で貢献する事にして、現在周囲の雪をズンドコ吸い上げて巨人を3体作り上げている最中なのだ。



 「初日の雪かきの時にも思ったものだが、凄まじいものだな、魔法とは。」



 「さっすが師匠だなぉぃ。つーかいつもの雪かきだと雪男は一体だけだったろ?一度に三体も動かして大丈夫なのかよ。」



 「まぁね。他の術者は分からないけど、私のゴーレム作成にはそれほど魔力はかかっていないから問題は無いわよ。」



 みると他の場所でも街の外で土や石を利用したゴーレムを作ってきて、東門まで連れてきている術者が何人かいる。中には私を実家の支配からの解放を手伝ってくれたシュリーさんの姿も見える。




 ……いやさ、分かってはいたんだよ。あの動乱の際、最後の巨人がやらかした部分は除いて、あの戦場は全て私の影響下にあった。


 だから彼女たちが命を落とせば、それは即座に分霊・個体(わたし)の知るところとなる訳で。だから彼女たちが無事だって言うのは分かっていた。


 大怪我をしていないのも分かっていた。だって彼女たちは一度私の治療院で治療を受けていたしね。最前線で戦って致命傷や大怪我を負った者たちならまず私の所に運ばれてくるはずだから。



 彼女たちが何処で戦っていたのかは分からなかったけど、あの時の口ぶりなら多分魔の森へ出撃した部隊に参加していた可能性が高い。混沌勢に包囲され、辛くもそこから脱する事の出来た部隊の冒険者で構成された部隊。


 それなりに被害が出たって話には聞いていたけど、連絡先を知らなかったのと私自身が天手古舞だったので連絡が取れなかった。連絡の取り様はあるだろうに、ね。



 自分でも薄情だなぁと思わなくもないけど、こうやって偶然再会すると元気そうなその姿にほっと胸をなでおろす自分がいる。



 うん、ちょっと失礼だけど勝手にマーキングさせてもらおう。後で連絡を取りたい時にはレーダーで場所が分かるようにね。



 「あぁ、エリーちゃん。お久しぶりね。」



 そんな事を考えつつ作業に集中しようとスノーゴーレムの方に意識を向けたら、シュリーさんに気が付かれたようで、にこやかに話しかけられた。

読んでくださり、ありがとうございました。

評価や感想をくださると私が喜びます。

いいね!を押してくれても嬉しいです!



うぅむ。KENSHIが面白くて時間が……。


それはそうと、ストックが少し増えるとつい安心して、書かなきゃ!って気持ちが眠いよ、とか他の気持ちに押されてしまいます><;

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