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異世界のファミレス

さて、前回のロリ滅は


産まれて初めてのお風呂だ!

エロガキに見られた……

エロガキにプロポーズされた!


てかこの世界でガキとは言え女湯に入れるのは勘弁してほしい。

いや、分かるんだけどね。母親業してて子供を男湯に一人で入れられないよって言うのは、ね。

 待ち合わせの食堂は、中世ファンタジーにありがちな荒くれどもが集う酒場兼食堂と言った雰囲気では無くて、全体的に整然としていて、現代風に例えるとファミリーレストランを中世時代の品物で再現した様なお店だった。


 流石壁内のお店と言うべきなのか、結構なお値段がかかりそうな高級店と言った趣だけど、一山当てて稼げるようになった冒険者にしてみれば、常連として通っても腹が痛むことは無いかなと言った所か。



 一応イメージ通りの酒場兼食堂なお店も壁内には結構あるって話だけど、元赤と二人だけで昼食をっていう雰囲気には中々合いそうにないから、やめといた。



 お店のランク的には、貴種が通っていてもおかしくないけど、精々男爵家か子爵家の子女か親族が利用するくらいだろうね。基本は裕福な平民をターゲットにしたお店だって話だから、それほど警戒しなくても大丈夫でしょう。



 それよりも今世初めてシリーズ、洒落たレストランで食事、だよ。うんうん。一度ギルドでお話を聞いた時に私よりも先にシリル達がギルドの食堂で食事をしてたけど、何気に私にとっては初めての外食なんだよね。


 街中での屋台で買い食いって言うのを外食に含めなければ、だけど。


 あ、村にいた時にお隣のおばちゃんにお誘いされてパンとお水をご馳走になった事があるけど、それもカウントしないでって事で。



 「ふむ、君の今までの暮らしから考えると、こんな店は初めてだと推察するのだが、流石と言うか普通に馴染んでいるな。」



 そりゃぁね。個体わたしは初めてだけれども記録と記憶でファミレスの経験は持っているし、なんなら「こうきゅうれすとらん」って所にもいった事あるし?うん、分霊わたしが、だけどね。


 この世界のマナーがどうかは分からないけど、そうたいして変わる様なものじゃないだろうし、そもそもそれほどマナーにうるさいお店って訳でも無い様だから問題ないでしょ。



 「ま、自分で選んだお店だからね。それでビビるほど可愛げのある性格じゃないのは自覚しているわよ。」



 「そういう事じゃないな。慣れていると感じる、そういう事だ。」



 流してウェイトレスに注文をする。現代的なお店とは違って食材を簡単に保存できる訳では無いから、お店によって提供できるメニューはそれほど多くない。精々がメイン料理のお肉とお魚の種類が決まっていて、後は調理方が変わってくる位。


 それも令和日本の様に千差万別といったら言い過ぎかもしれないけど、それほど調理方が多いわけじゃない。精々、焼くか煮るかで蒸すと揚げるといった調理方はこの世界ではまだ聞いたことが無い。


 こういうちょっと高級なお店で変わってくるのは上にかかるソースの種類くらいか。ハーブ主体のペーストをかけるか、野菜や肉を煮込んで作ったソースをかけるか。このソースがそれなりにお高い、みたい。



 取り合えず何があるか聞いて、適当にウェイトレスさんのお勧めの魚料理を頼んでついでに飲み物も頼む。何の気なしにジュースを頼もうとしたけど、時期が時期だから果物のしぼり汁なんかそう簡単に手に入るものじゃなく、この季節にジュースを飲もうとするともっと高級なお店に行かないと難しいらしい。



 仕方なしにお茶を頼んだ。



 「本当にそういう所だな。君が少なくとも私達の常識から外れた所にいると実感できるのは。


 正直、君が神かそれに連なる者であることを疑ってはいないが、常識が無い所とこういう事に物怖じしない辺りが違和感だな。


 まるで……、いや、良い。」



 「言いかけて途中でやめるのはあんまり好きじゃないんだけど。」



 「自分でもちょっと突拍子も無い事だと思ったのでね。言葉にするのが恥ずかしくなっただけだ。容赦してくれると助かる。」



 突拍子もない、ねぇ。元赤、かなり鋭いからなぁ。多分それなりに真実に近い所に勝手にたどり着いたような気がする。ま、私の方から肯定的な言葉を出すつもりは無いんだけどね。神様だとか邪神だとかは元赤たちがかってに言っている話で、私はただ流しているだけだから。



 気軽な雑談をしている内に、早速料理がやってきて私は唖然とした。さっきまであったはずのテーブルマナーが頭から吹っ飛んで真っ白になったのだ。



 おのれ分霊どぐされめ。こんな所に罠を仕掛けてくるとは。



 元赤の前で恥をかきたくない一心で、素早くリストからテーブルマナーに関しての知識と技術を取得する。意外と技術が必要なマナーもあるから「知っている」だけじゃなくて「身についている」でないと、恥ずかしい事になるし。


 魚料理は食べ方が下手だとすごく汚くなるしね。

 


 「ほぅ。」



 元赤の感心した様な声が漏れる。ふっふっふ、かなり値上がりしてここ10数日分のシナリオ経験値が吹っ飛んだこのテーブルマナーに恐れおののくが良い!くそぅ、折角貯めていたのにこんな事で経験値を使っちゃうなんて……。



 なんて恐ろしい罠なんだ……。



 この先、メインの元赤の解呪やサブの弟子達の補助具作成、魔道具の作成の為にコツコツ貯めてきた貴重なシナリオ経験値が、テーブルマナーごときの為に……。


 補助具作成はもうあんまり時間が無いのに……。



 いやいや、恥をかかなかっただけ満足すべきかな。弟子に師匠が恥ずかしい所を見せる訳にはいかないし、威厳が無くなれば従わせることも難しくなる。


 そうなれば授業も進まなくなるからね。苦しい自己弁護を済ませて、表面上はおすましした状態で食事を始める。にわかに仕入れた知識を元に、食事中はあんまり喋らないで静かに。



 でもそんな事を考えていたからか、折角の魚料理の味はあんまりわからなかった。なんとなく美味しいって印象だけは覚えている。




 折角の初の外食なのにあんまりだよ。







 「ダンジョンの異変って、タナトスでのあのモンスターの湧き具合は異常では無いの?」



 食後のお茶をいただきながらの雑談タイム、タナトスに入る前に支部長さんが話していた事が気になって確認してみる。


 テーブルの上には紅茶とお代わりできるようにかポットがおいてあるだけで、ちょっと寂しい。


 お茶のお供にデザートに甘味でもって思わなくもなかったけど、流石にケーキやらプリンやらはこの世界には無いみたいで、甘いお菓子はビスケットやクッキー系統の親戚の歯ごたえのあるお菓子か、砂糖をまぶした柔らかいパンみたいなものがある位みたいなので、あっさりと諦める。


 その手のお茶菓子なら、治療院でのお仕事の合間に只で頂いているから、今更お店で注文する気になれないんだよね。


 はいはい、お金があってもどうせ私は貧乏性ですよーだ。



 食い意地を張るほどデザートに飢えている訳じゃないから、これで良いのよ。



 と、それは兎も角、タナトスでは初っ端から結構な勢いで連続して襲われたし、魔法を連発する私とチート武器所持者の元赤だから乗り切れたけど、アレを普通の冒険者たちが無事に乗り切れるものなのだろうか。



 「あぁ、あの程度なら活性化したタナトスであれば無いとは言い切れない程度の事態だな。」



 ほぅ、この世界の冒険者がある一定のレベルに達するとかなりの強者になるという事は知っていたけど、あれを処理できるなら確かに大したものよね。



 「へぇ、たしか7パーティーも入り込んでるのよね。121人だっけ?ん……?多くない?一つ辺りのパーティーの人数。」



 「そうか?現場で後方支援を雇うにしても1チーム辺り戦闘職、15~8人程度だからな。タナトスなら大規模な戦団を組むことも少ないが、ダンジョンアタックの人員としては少ない方じゃないかな。」



 「元赤が一人で入ろうとしてたし、今回は私も入れて2人だったからさ、普通は5~6人位でダンジョンに入るのかなって思ってたわ。


 つーか後方支援って、あのスラムの人達の事?」



 私の言葉に元赤がちょっとおかしそうに顔を緩ませる。



 確かに、ダンジョンに入るのに人数が少ないのはデメリットだけ大きい様な気がするけど、だってさ個体わたしの基本は所々今まで生きてきたはずの分霊わたしの記憶や記録が抜かれてて、端末ほんたいが過ごしていた最初の世界の常識がデフォルトだったりするから、実際のダンジョン事情なんか知り様が無い訳じゃない?


 これは仕方ないわよ。うん。



 「私の様に槍の餌やりや腕試し、君の様にダンジョンを見てみたい位の腕利きなら、大勢で入る必要は無いさ。


 戦うだけで何も持ち帰る心算が無いのなら身軽で済む。


 だが、大抵は皆、生活の為に稼ぐ為にダンジョンに潜る。となると、当然戦利品を持ち帰らなければ話にならんからな。


 参加者全てが戦える必要は無いが、物資の運搬を担当する者を守る戦闘員も必要になるから、やはり最低限15名以上は人員をそろえる必要がある。」



 そう答えると口が寂しくなったのか、紅茶を一口飲む元赤。



 「スラムに住む者達もただ寒さと雪から逃れる為にあそこに陣取っている訳ではない。中にはそういうモノもいるが。


 スラムに住む者特有のくたびれた、沈んだ目をしていなかったろう?彼等。」



 「まぁ、確かに。ダンジョンに入った私達をしばらく見た後に興味を無くしたみたいだけど目は何かを探っているようには感じたかな。」



 実際には、何かを期待して暫くしてガッカリしていたのは私に飛んできた感情で理解できている。対して強い感情じゃなかったからあんまりお腹が膨れなかったけど。



 「少人数でダンジョンに入る奴らは、大抵腕試しかダンジョンの下見が目的だからな。そういう奴らは大抵彼らを雇わない。


 だからこちらに興味を示さなかった。」



 「んじゃパップスのジャネガって奴はどうして私達に雇わないかって声かけたんだろう?」



 雇ってくれるわけない少人数の私達に。



 「さぁな。ただ、大分中に入り込んでから声を掛けられただろう?おそらくタナトス内部で彼ら同士の縄張り争いでもあるんじゃないかな。


 誰かを雇うつもりがあるのなら、あんな奥の方まで誰も声を掛けないなんてことは無い。仕事を求めている者にとっては、絶好の場所とは言えないな。


 だから少数の我々にも声を掛けてきた。僅かな希望を信じてな。」



 そうか。そうだとすると結構無慈悲な断り方をしてしまったかもしれない。でも今回私達は獲物を放置したから、危険はあるかもしれないけど彼らなりに何とか生きていける、と良いなぁ。



 あぁ、そうそう。そろそろ預けたショートソードも最低限、手入れが終わった頃じゃないかな。本当に奇麗にしてくれて軽く研いでくれるだけで良いとは伝えてあったけど、一度の戦闘でかなり使い込んでしまったからね。


 砥士のひきつった様な顔がちょっと忘れらんないけど、まぁ、帰ったらちょっとだけ手を入れる予定だから、気合入れて研ぐ必要は無いんだよね。



 締めに入ろうとしている私の雰囲気を敏感に感じ取った元赤が残ったお茶を口に含む。本当にこの相手の空気と言うか雰囲気を察知する能力、元赤は高いよね。


 あ、そうだ。まだ元赤に伝えていない事もあったわ。



 「あぁ、そう言えばさっき私プロポーズされたわ。」



 ブフゥ、ゴフッ、ガハッ……ゴホッゴホッ、と勢いよく咽る元赤。いやぁ、そんな美味しいリアクションがもらえるとも思わなかったわ。イケメンがやっても滑稽で笑える。タイミングもばっちりだったね。


読んでくださり、ありがとうございました。

評価や感想をくださると私が喜びます。

いいね!を押してくれても嬉しいです!



元赤に一泡吹かす事に成功したエリー。そんな事をしてどうなるんだってお話はありますが。



そう言えば土曜日恒例、ストック無い祭りが開催されています。追記が無い場合は……わかるよね?(涙


あ、それと重ねて……ブックマークとか評価、お願いします。良いねで応援してくれてもいいんだからね?


感想欄は……うん、前作含めても片手で足りる位だしプリン並みのメンタル防衛の為に閉めるか検討中ですw



追記 9月9日(金) 9:26 来週分は何とか確保しました。

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