魔道具店「世界樹」
前回のロリ滅、大体こんなん
弟子引き連れてお出かけ
元赤が周りが見えない程歩き修行に夢中
雪男、スノーゴーレムを作って雪道を進んでいく
なお通報はされなかった模様
「いらっしゃい、あら、初めてのお客さんね。」
魔道具店、「世界樹」。この世界に世界樹の概念があったんだね。名前に惹かれて、ついついこのお店をえらんだ。
あ、雪男が4メートル以上の大きさになって街を雪かきしながら進んだ件は特に警備兵に通報されなかったよ。もう皆私が雪男を使って雪かきをするのは知られていたみたいで、時折遅れて雪かきをしている人達から「ついでにここも雪を退かしてくれよ。」と声を掛けられるくらいで済んだ。
雪男が大きくなっていく内に、途中から通りの半分の雪を片付けながら進んでいたから、かえって喜ばれたりした。
後で、この雪男、川に入水させておかないと邪魔になってしまう。
何気にこの街の職人街に来たのは2回目で、当然魔道具を扱っているお店に入るのはこれが今世に置いても初めてだから、初めてのお客さんで間違いはない。生まれて初めての魔道具屋さんはまず、そのお店の香りに驚く。
香を焚いているのか、女のこの身にとっては心地よい香りが店の中に充満していて居心地がいい。ただ、この身が男であったなら、多分臭いって感じるんだろうなって考えて少し笑いが漏れる。
店の出入り口のすぐ隣に店主らしき女性が居るカウンターがあって、そこから店内が一望できるようになっている。
お店はそれ程広くないし、商品棚も壁側に備え付けてある物だけでお店の中央には棚は置かれてはいない。
流石に高価なものを取り扱っているだけあって、盗難対策はある程度されているようである。
「あら、あらあらあら。」
何故だか私をじっと見つめる女店主さん。よく見ると耳がとがっていて、いわゆる日本エルフと言われるタイプのエルフさんだ。
無意識だろうか、首から下げたネックレスに手をやりながらにっこりと笑うエルフさん。
「貴方の様な高名な方にご来店いただけるなんて光栄ですわ、エリー様。
初めまして、わたくし北の森、フィーンの末枝でニューラと申します。どうぞお見知りおきを。」
おぉぅ、バレテーラ。前に元赤に忠告された様に、確かに私の動向って結構注目されているっぽいね。末枝ってエルフ独特の言い回しだよね。
「丁寧なご挨拶、痛み入ります。後学の為に魔道具について知見を得たいと考えまして、お邪魔させていただきました。
何分、魔道具に関しては門外漢なので、色々と勉強させていただきたい。無論、予算内で興味を引くものがあったら購入させていただきたいと考えています。
あ、あと大勢で来てしまって申し訳ありません。」
そんな事を言うと、ニューラさんはまたにっこりと笑ってくれた。
「気になさらないで良いんですよ。魔道具はとても高価な品物ですから。皆さん何度もお店に訪れて、品物を吟味なさってから、購入されていくんです。
お店としても、それで十分やっていけますから、遠慮なさらずにどうぞごゆっくりと見学していらしてくださいな。」
美人さんなエルフさんに、そう優しく勧められたら、断れるわけもなく。少々ふわふわした心持で一言だけ礼を告げてお店の中の品物に目をやる。やばい、やっぱりエルフさんの笑顔って破壊力あるわ。しかも古き良き金髪エルフさんだよ。
個人的に日本エルフを有名にしたと信じている、とある作品のエルフも金髪エルフさんだった。元祖ツンデレっていわれてるあのエルフに、最初の端末も惚れていた時期があるから、分霊・個体もちょっとこのタイプには弱いんだよね。うん。
今の私の容姿も、エルフに引けを取らないって言われているけど、私は自分の容姿なんかにはあんまり興味がない。おっぱいも他所の山なら見応えもあるしついつい目を引かれてしまうだろうけど、自分の山には興味が持てないのと同じなんだよ。
あ、因みに哺乳動物の性なのか、男女である程度差はあれど、おっきなおっぱいについ目が行ってしまうのは男も女も似た様なもんだからね。その根底に流れるものも当然男女で違うだろうけど。
……もしかしたら基本男の分霊の特殊な事情なのかもしれないけど、実体験として、一応ね。
あ、因みに分霊は巨乳派ではなく美乳派である事を一応ここに宣言しておく。おっぱいは大きさじゃなく形だ!もちろん異論は認めるけど、私の性癖を変えるつもりは無い。文句があるなら掛ってこいや、おう。
ってあぁ、そう言えばそろそろ乳バンドが必要になってきたかもしれない。最近胸のあたりの成長が著しいんだよね。どのみち使い道なんかないんだから、おっきくなっても仕方ないのに。
この世界の下着事情って詳しく知らないから、ブラジャーがあるのかどうか分からないけど、私が今使っているおパンツがカボチャパンツで紐で結ぶタイプだから、多分体にフィットしたタイプの下着は無いかもしれない。
ブラもどうだろう。今度元赤に良いお店を聞いてみよう。って何よ、急に止めてやれって突込み入れないでよ。え?男に女性ものの下着のお店を聞くな、バカもん?
いや、そんなこと言ったって、この街のお店なんてよく分からないし、仕方ないじゃん。
アリヤさんか後家さん達に聞けって?あぁ、そっか。いやさ、ローブを仕立ててくれるお店を聞く都合上、元赤に聞いちゃった方が早いかなって思ってさ。いや、確かに考え無しだったよ、ごめんごめん。
と、どうでも良い事で時間を潰してしまった。
弟子達は思い思いに魔道具を見ている。元赤も自分なりに興味があるのか、魔法の武器が飾ってある棚を見に行っている。後ろにシリルを引き連れて。
私も適当に、ニューラさんがいるカウンターから近い順に、品物に目をやる。カウンターに近いものは小物が多いみたいで、一つの棚に結構な数の魔道具が飾ってあるけど、店内をパッと見て何となく傾向を掴んだ、きがする。
魔道具とマジックアイテムって同じ物の様に感じていたけど、この世界特有な区別なのか双方でちょっとジャンルがちがうっぽい。
魔道具は、どちらかと言うと魔法の掛った品物でも、複数の材料で組み上げた複雑な物を指している場合が多いみたい。例えて言えば、魔法のオルゴールとか、魔法の楽器とか、魔法の人形とか。
比較してマジックアイテムは魔法の武器とか鎧とか、あとは魔法の掛った指輪とか、ある程度シンプルな作りをしたものを差していることが多いみたいで、一応このお店にも魔法の武器は置いてあるけどメインは標榜している通り、魔道具、みたいで、戦いに役に立つようなモノよりも冒険や生活で役に立つものの方が多い印象を受ける。
いいね、個人的にはこういう魔道具の方が好みなんだよね。私が以前イメージした魔法の灯りもちゃんとこのお店で売っていた。もう少し複雑な作りの様で、ちゃんとオンオフが出来るようになっていて、私が考えたみたいにただ「永続光」を掛けただけの品物とは一線を画している。
あぁ、結構なお値段で……。
うん、お金の使い道に悩んだ時期もあったけどさ、魔道具を集める趣味を持てばあっという間に貧乏になれるね、これ。
ただ、この魔法のランプ、装飾が見事で造りが細かい。冒険をするときに腰につるすのには向かないけど、お洒落なお部屋に飾る分には、いいかもしれない。
っと、外見にひかれている場合じゃない。私はこの世界の魔道具を調べに来たのだから。
店主のエルフさんに気が付かれないように慎重に魔力圏をランプに伸ばす。エルフさんに魔力を見る目があるかどうかは分からないから、一応慎重に何重にも隠蔽をかまして。
ぱっと外から見たかぎりだとそれほど複雑な作りをしているようには見えなかったけど、実際に調べてみると、意外とこの世界の魔道具作成のレベルが高い事に舌を巻く。
ま、現時点の私の魔道具に関する知識、技術が低すぎるのも原因の一つだけど、それでもこのランプ一つとっても使われている魔術の回路は中々なもんだ。想像していたよりも数ランク上の仕上がりに思わずため息が漏れる。
それでも技術レベルで他の世界と比較するなら、下から数えた方が早いのだけれども、世間一般の魔法使いが使っている魔術式から想像していたよりは高度な回路が組み込まれている。
何でここまでの魔術回路が組めて、魔法使いの魔術式があんなに無駄だらけなのか、やはりその点に疑問がでてくる。やっぱり、以前考察した通り魔力のコントロールにその原因がありそうね。
何か切っ掛け一つで、一気にこの世界の魔法技術の事情が一変してしまいそうでちょっと怖い。
でもこれなら、皆に作る予定の補助魔道具が万が一解析されたとしても、それほど問題はないかもしれない。ガバは怖いから、ちゃんとセキュリティーは組むけどね。
でも、銀貨で60枚か。日本円にして720万円。家には必要ないからなぁ。たかがランプで720万円……。でもアンティークな感じで良い作りしているし、お部屋にこれを飾るのといい雰囲気になりそうだよね。
でも720万円か。魔法の品って高いんだねぇ。
ん、魔法のワンドがおいてあるよ。うあ……値段がえげつないよ?なに、マジックアローのワンド、残り回数52回で銀貨260枚って。日本円で三千万円超えるよ?あ、これ本物じゃないのね、流石に。見本みたいね。本物は少し奥のガラスケースの中に置いてある。流石にワンドは物騒だからねぇ。
下に書いてある説明書には、一度の使用で8発の魔法の矢が狙った敵に向かって飛んでいくって書いてある。ホーミング機能があるかどうかは分からないけど、これが52回撃てて値段が銀貨260枚なら、まぁ安い方なのかな。
隣に置いてあるファイアーボールのワンドの値段に比べれば可愛いモノなんだろうし。なんだよ残り回数27回で銀貨540枚って。ファイアーボール一発辺り240万円もするって計算になるんだけど。
どうりで魔法使いがもてはやされるわけだよ。確かに毎回使う訳じゃないだろうし、命がかかった冒険で、切り札として保険としてこのワンド一本あれば心強いのは理解できる。
この一本で死ぬか生きて帰れるかが決まると言うのなら、六千万円位なら払う奴もいるかもしれない。私がチート無しの冒険者なら、お金の都合がつけば買うね。間違いなく。高いけどさ。
上位の冒険者ってこういう魔法の品を色々とそろえているんだろうし、おっちゃんなんかも引退までにそれなりに稼いだって言っていたから、こういう品物も溜め込んでいるのかもしれない。
確かに魔法治療の一回や二回分の治療費何か気にする訳が無いわね。うん。たかがパン屋のおっちゃんだと考えたら恥ずかしい目に合うねこれ。
周りを見てみると、ケリーもシリル達も値段を見たせいか固まっているよ。無理もないけどさ。一人、元赤だけが、元々相場を知っていたのか、こういう高価な品物に囲まれるのに慣れているのか、楽し気に魔法の武器を眺めているけど。
「こういうワンドとかさ、魔道具ってどこから仕入れたりしているんですか?」
「あら、仕入れ元を商売人に聞いちゃうのはルール違反ってものよ?私達はそれを飯の種にしているんだから。」
軽くニューラさんが嗜めてくる。
「まぁ、うちみたいな魔道具やマジックアイテムのお店なら、商売の秘密にもならない当然の知識だし、知ったところで簡単に横から参入できる世界じゃないから構わないけどね。
本来は魔術都市から運ばれてくるものを仕入れられたらいいんでしょうけどね、この辺りはかの地からは大分離れているから、前線都市だから優先的に運ばれてくるとは言っても中々ねぇ。
だから、安定はしないけど家で扱っている物の多くは、ダンジョンから出てきたものを買い取る事で仕入れしているわ。
貴方が目を白黒させたそのワンドなんかも、壁内ダンジョンから産出したアイテムね。
ただ、簡単にまねはできないわよ?お金があればなんとかなる様な仕事じゃないもの。
仕入するにしても持ち込まれたものをちゃんと鑑定できないと、足元を見られて商売をするどころではなくなってしまうわ。
持ち運んできた相手の言い分をそのまま鵜呑みにしていたら、数日でお店は潰れるわね。」
まぁ、その辺は自信があるから大丈夫だけど。少なくともこの店主さんよりも正確に鑑定できる自信はある。けど、ダンジョンかぁ。やっぱり言い訳の為にも何度かダンジョンに出入りした方がいいよねぇ。
この冬の間に一度トライしてみようかな。
そうなんですか、と生返事を返しながら、ワンドの術式を解析する。あぁ、これも通常使われている魔術式よりも幾分か洗練されていて無駄が省かれている。このレベルであれば問題ないって事なら、補助具で色々と出来る事も増えるでしょう。
結局、欲しいと思った魔法のランプと、店主さんがお勧めしてくれた魔法の時計を買ってから硬直している皆を連れて元赤が紹介してくれた仕立て屋による事になった。
採寸が終わってオーダーを済ませてからいつもの食材の買い物を済ませておっちゃんのお店による。
「エリー、お前ランプと時計にとんでもない額払っていたけど、大丈夫なのかよ。」
と、恐る恐る聞いてくるケリーに、この程度何ともないわよと返してスルーする。確かにランプと時計、合わせて銀貨130枚は、大枚叩いたと言っても過言じゃないかもしれない。約1500万円位一気に使ったのだから、吃驚するのは当然だろうけど、これ私の一日の稼ぎの大体半分くらいなんだよね。
とことん、金銭感覚がくるってしまうけど、ランプは魔法の品云々抜かしても、かなり物が良い物だし、時計も令和日本で手に入れようとしたら、それなりの値段はする逸品だから、個人的には満足。
ランプは作業部屋に飾って、時計は修行部屋において皆で時間を共有する。
うん、明日からの修業が一層楽しくなるね。
行に雪男が作った通路をとおり、私達は塒への道を何となく足早に進んでいた。
それにしてもあのエルフのおねーさん、奇麗だったなぁ。
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大きさよりも形。大きさこそ正義。小さい事は良い事だ。色々あって全部いい。
偉大なる先人たちは名言を残してはくれましたが、後世議論を呼び対立を深めるような名言もあるようで。
迂闊に触れない方がいいですね。