弟子達とお出かけ
前回のロリ滅は
漸く修行開始
この世界の魔術式ってこれが最適解なん?
やっぱりアリヤさんと元赤は苦労しそう
こんな感じだ~
ある日の職人仕事の日の午後。午前中に刺繍を刺しながら弟子たちに修行を付けて昼食をいただいた後。何やらブツブツと独り言を呟きながらついてくる元赤と久しぶりに用心棒役にと立候補してくれたケリーとザジ。そしてシリルとロナを連れて買い物に出かけた。
単に弟子たちを引き連れてって見えなくもないけど、他の塒の面々は午前中から忙しく動いていたから、私が出かけようとしたときに手が空いていたのがさっきまで修行を付けていた弟子達だけだったってだけの話だけど。
アリヤさんは塒でのお仕事があるし、兄二人も午後からはギルドで雪かきの仕事をもらいに行っているからついてきていない。
なんか弟子を引き連れてって言うのも少し気恥ずかしい感じがする。今の私に護衛は必要ないって言ったらそれまでなんだけど、元赤はそれでもついてくる。私と街の人たちの間に変なトラブルが起きないように、だとは思うけど。
元赤が付いてくるとなったら、当然シリルはついてくる。恋する狼ロリが姉とは言えターゲットを女性と二人きりにするわけがない訳で。
で、シリルが付いていくと言えば、女2人にたいして男一人じゃ護衛が足りないだろうと、ケリーが付いてくると宣言。
いや、今まで私とシリルと元赤で外出する事はしょっちゅうあった訳で、今更といえば今更なんだけど、手が空いているなら油断すべきじゃないだろと言われれば断る理由も無いわけで。
で、ケリーが付いてくるとなったらロナも当然、何かと理由を付けてついてくることになり、それなら男女の数を合わせる為にと、ザジもついてくる事になったのだ。
まぁ、ゾロゾロと引き連れていく事にはなったけど、色々と買い物を済ませるつもりではあったし、そうそう気軽にストレージを使うつもりは無いから、荷物持ちは何人かいてくれれば助かる。結果オーライという事で、その辺は何も考えない。
そろそろいい加減、ある程度お金を使いたかったんだよ。気が付いたらストレージの中の銀貨の量が1万6千枚を超えてたからさ。いい加減、少しは世間に循環させないと、不味い様な気がして。
それと色々と調べておきたい事もあったから。
今日は先日から降り続いていた雪が丁度やんで、買い物に出かけるにはいいタイミングだったしね。本当は雪かきがある程度終わったあたりを狙った方が良いんだけど、この所、豪雪地帯の名に恥じない空模様だから、またいつ吹雪くか分からない。
一時的にとは言えせっかく落ち着いた空模様を逃すわけにはいかないでしょ。ただ、出来れば雪の積もった道路を歩きたくないから、魔法でケリー曰く「雪男」をつくってそいつに荷車を引かせている。
雪男に先頭を行かせて、彼に積もった雪を吸収させながら進み、一定以上の大きさになる度に道のわきに自分の素体となった雪を切り離し、廃棄する事で通りを雪かきしながら進んでいるのだ。
ちょっと複雑な工程を熟しながら、だから歩行速度はゆっくりなんだけど、彼の通った後は人が二人位ならすれ違えるくらいの通路が出来上がっている。これは非常に便利である。もしかしたら、そのうち私に雪かきの指名依頼が来るかもしれないわね。
報酬を考えたら、雪かき程度でそんなに多く出せないだろうし、受ける気にはなれないけど。
「ジルの兄貴、歩きながら修行すんのはあぶねぇと思うんだけど。」
「あぁ、分かってはいるがな。私が皆の中で一番遅れている。幸いな事に先頭を行くスノーゴーレムが通路を片付けてくれるから滑ることは無いし、歩みも早くない。
行き交う人とすれ違う事もないからな。可能なら少しでも時間を修行に回したい。」
元赤のいう通り、雪男が確保した通路以外には私の腰くらいの高さまで雪が積もっていて、外出する者も少ないためか、まだそれほど踏み固められていなくて歩きにくい。もうしばらくすればこの辺にも雇われ冒険者たちが大勢で雪かきをしに来ると思うけど、それまでは皆賢く、お出かけを控えているようだ。
無論、各自の家の周りは誰に頼まれるでもなく、どこも午前中の内に自分たちで雪かきを終えてしまっている。時折、自力で雪かきできない家も見られるけど、そういう所には事情を勘案して、ギルドの方でついでにやってくれる事もある。
あくまで、やむを得ない理由がある場合に限るし、状況によってはきちんと費用は請求されるけど。
必死な様子の元赤を、それとなく袖をつかんで誘導してあげているシリル。うん、普段の様子と少しだけ逆転している様なこの風景が、何となく私の微笑みを誘う。元赤が年相応の少年の様に見えて、自然と笑みが漏れる。
そんな私の様子に気が付いたか、元赤が少々きまりが悪そうに私の方を向く。
「そんなに焦ることは無いわよ。知っているかどうかは分からないけど、この最初のプロセスで大抵の人は躓く。シリル達はかなり早い方なんだから、自分と比べても意味無いわよ。
平均で見ればあんたが特別遅れている訳じゃないし、私が教えてんだから一人だけ置いて行かれるって心配もする必要は無いわよ。
それより、あんたは護衛で付いてきてるんでしょうが。少しは周りに気を配りなさいな。」
彼が何かを言う前に、先制をうっておく。
「私が焦っている?……いや、そうなんだろうな。」
軽くため息をついた後、漸く歩きスマホならぬ歩き修行をやめて、いつもの様に周囲にさりげなく気を配り始める。ただ、シリルが袖をつかんだままなのに気が付かない辺り、なんというか、いつもの元赤ではない。
指摘するのも野暮だから、黙っておこう。シリルに睨まれたくないしね。
最初の内に、おっちゃんのお店によって少し多めのカチカチパンを注文しておく。
天候によってはパンの買い出しにも行けない時があるから、少し余裕をもっておきたいのと、食料品の保存に関して、食糧庫にまとめて保存の魔法を掛ける事にしたから、買い溜めしても鮮度等に問題が生じない為だ。
その内食糧庫自体に手を加えて、一々魔法を掛けなくても生ものなんかも長期保存できるようにする予定だけど、今の次期は外にでもほおっておけば野菜やお肉は勝手に冷凍保存できるから、そのあたりは後回しだ。
食糧庫に手を加えるって事は、食糧庫をマジックアイテム化してしまうという事で、それを成す為にも先にこの世界のマジックアイテムを調べておく必要がある。
シナリオ経験値をつかって、手っ取り早くこの世界のマジックアイテムについて調べてしまう手もあるけど、下調べをしておいた方が今更ながらだけど周囲に対する違和感も少なくなるし、知識や技術を取得する際の必要な経験値が下知識の有無で増減するかどうかを検証する必要もある。
私がこの時点で取得している魔道具関連の知識等は、「魔法付与1」、「魔道具作成1」、「魔道具の知識」だけで、まだまだ初歩段階の知識と技術しか有していないから。この世界の魔道具に関しての知識がいまだに曖昧な状況なんだよね。
「あ、それとさ、あんたに前にお願いしていた、ローブを仕立ててくれるお店、不都合が無かったら今日、ついでに紹介してくれる?
私の分もそうだけどさ、弟子達皆のローブも注文しておきたいしね。
ある程度そろいのローブにした方が、私の門下生って感じがしてわかりやすいし良いじゃない?」
そう言うと、元赤は少し考えるような仕草をしようとして漸く、自分の袖をシリルが掴んでいる事の気がついて少しだけ苦笑を漏らすと掴まれているのとは逆の腕で軽く顎をこすってから答える。
「門下生の制服といった所かな?悪くはないが、まだもう少し待った方が良いな。私や君なら兎も角、皆が皆自らの身を守れる訳では無いからな。
わかりやすく、魔法使いの才能がある、と価値の有る人物である旨周りに宣伝するのも考え物だな。
ローブを着ている者が必ず魔法使いやその弟子と限っている訳じゃないが、弟子であると周囲に知らしめる為の制服であれば話は別になる。
最低限、自分の身を守る事が出来るようになってから用意してやった方が良いかもな。もしくは、評判だな。」
まぁ、たしかにもっともな話だよね。壁外街は人気の無い所で娘一人で歩く事はなかなかお勧めできない治安の悪い場所だから、塒では態々男衆が何人か側に付く。
成人している後家さん達が買い物に行く時ですら、時間帯によっては男共が心配して何人か荷物持ちについていくのだから。
まぁ、男共が後家さん達についていくのは何も男の子心で守らなくちゃって気持ちがあるせいだけでもない。塒に身を寄せている私達は死別であれ、生き別れであれ、親と離れて暮らしている。
まだ、母親のぬくもりが恋しい年頃の内から現実に追い立てられて、それぞれの事情で一人で、若しくは兄妹で生きて行く為に。
だからだろうね。自分の母親じゃないのは十分に分かっている筈なんだけど、何とはなしに後家さん達に自分の母を見てしまうのかもしれない。中には素直になれずに反発してしまって、後家さん達とまともに会話ができない子もいるけれど、彼女たちが買い物に行くとなると、そんな意地を張っている男の子でも心配そうに彼女たちを見ているし、ぶっきらぼうな態度で付いて行こうとする。
もちろん、後家さん達も流石母親なのか、その辺りの子供達の心の動きを理解しているようで、素直に護衛を受け入れているけど、傍から見たら大家族の母親の様に見える。
いずれ塒を出て一人で生きて行かなくちゃいけないとはいえ、心のよりどころがあってはいけないという訳じゃない。彼女たちが、彼等、彼女等にとってのお母さんになってくれれば……。
っと、年に似合わずつい親心を出しそうになってしまった。
「了解、とりあえずは私の分だけ注文しておくわ。ところで評判って?」
「あぁ、君の弟子に手出しをしたら、命がいくつあっても足りないと、エステーザ中で畏れられれば、だれもちょっかいを掛けなくなるだろう?
今でも生と死を司る女神と評判である君に喧嘩を売る者がいるとは思えないが、もう少し様子を見てからの方が良いだろうな。」
誰が生と死を司る女神か、馬鹿者が。一瞬で不機嫌になってしまった私をみて、漸く一本やり返したと満足げな元赤。少し目をやると未だにシリルが袖をつかんだままだ。無理に手を解かないのは、多少なりとも気があるのか、それとも気を使っているのか。
今はまだ後者ね。
「誰が女神か。そんな鉄貨一枚にもならない評判を立てられても嬉しくとも何ともないわよ。」
「たとえ、金貨百枚になる評判であっても、君にとっては価値が無いんだろう?」
わかったような口を利く元赤に苦笑を返して、亀の歩み寄りはましな速度で道を雪かき進んでいくいつの間にか全長4メートル以上の大きさになった雪男の後ろをついてく。元赤との会話に夢中になってコントロールが少々おろそかになったかもしれない。
あぁ、こりゃもしかしたらまた警備兵に通報されるかもしれない。
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さて現在月曜日。今週中にどこかでストックを増やせるか。
元赤は心中、素直になれきれてなかったです。ただ、それを表に出すほど子供じゃない、と自分で思っています。
ただ、周りについてけない自分を認識して、自分の中の蟠りがどうでもよくなってきて焦っています。
自分ほどの才能があれば、誰よりも先に結果を出せると信じていましたから。
アリヤさんは……いかず後家です。
それと、重ねてになりますが、是非是非評価とブクマと良いねを宜しくです。
ポイントが増えると嬉しくてやる気が増えます。減ると悲しくて書く気力が減りますw