第46話 能力を開花させてみた
その後も俺は職員の雷撃を避け続けた。
まずは瞬発力を強化することにしたのである。
聖騎士の剣術は神速と称されるそうで、それを躱せなければ話にならない。
不意打ちをするにしても速度は必須なため、この鍛錬から始まった。
しかし、これがまた難しい。
職員の雷魔術は絶え間なく叩き込まれる。
さすがに威力は抑えられているが、術の軌道や速度からして容赦なく俺を狙っていた。
必死で回避に徹しても過去の経験が通用せず、直撃を受けてしまう。
一応、俺の反撃が当たれば終了とは言われているものの、その時が訪れる兆しは見えない。
「ほらほら、そんなもんじゃ聖騎士に瞬殺されますよー」
職員はのんびりとした口調で言うも、肝心の雷撃はあまりにも苛烈である。
向こうは棒立ちで術を飛ばすだけなのに、接近できる気がしなかった。
これが英雄に匹敵する者の実力なのだと思い知らされる。
（くそ、どうやって反撃すればいいんだ）
紙一重の回避を連発しながら、俺は懸命に対策を考える。
どうあがいても正攻法では敵わない。
職員は凄腕の雷魔術師だ。
たとえ距離を詰められたとしても、瞬時に対応されるのが目に見えている。
俺の持つ強みを最大限に活かさねば、この鍛錬を制することはできないだろう。
（やはり全属性の魔術だ。限界を超えて使いこなすッ！）
俺は足先に雷魔術を発動し、さらに風魔術を重ねた。
二種の属性をなんとか両立させつつ、予備動作なしの急加速という結果へと昇華させる。
俺の身体はかつてない速度で職員へと飛び込もうとしていた。
目を見開いた職員が素早く雷撃を放出する。
迎撃として完璧な動きだった。
回避の余裕はなく、かと言ってそのまま受けるのは不味い。
だから俺は第三の選択を取る。
水魔術と闇魔術を混ぜ合わせた壁を作り、その表面に雷魔術を這わせた。
迸る雷撃が壁にぶち当たり、俺を傷付けることなく拡散して消える。
出力の差を属性の重ねがけで覆すことができた。
その事実を確かめつつ、職員の目の前に着地する。
「おおっと」
職員が飛び退こうとしたので、火魔術と光魔術による強烈な閃光をお見舞いする。
殺傷能力はないが、視覚は一時的に潰れたことだろう。
俺自身は闇魔術で遮ったので問題ない。
よろめいた職員は、目を開けられず壁に激突する。
そこに俺は縋るようにして剣を突きつけた。
「属性の同時使用……それが答えだ」
喉元で止まった刃を見て、職員は嬉しそうに両手を上げて降参した。
