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金貨三枚で買った性奴隷が俺を溺愛している  作者: 結城 からく


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第38話 死闘を振り返ってみた

 日も暮れてきたので、俺とビビは宿に戻った。

 色々と用事があるのだが、後回しにする。

 治療術師のおかげで全快したとは言え、精神面の疲れは否めない。

 ここは無理をせずに休むのが先決だろう。


 汚れた身体を洗い、装備の手入れも簡単に済ませる。

 破損部分の補修も明日以降でいい。

 場合によっては買い替える方が安くつくはずだ。


 俺は闇魔術の収納に入れておいた保存食と水を取り出して、それらを机の上に並べる。

 これが今日の夕食だ。

 ちゃんとした料理を食べるのも面倒で、そもそもあまり食欲はない。

 とりあえず胃の中に何か入れようと思った結果、こんな形になったのである。


 俺とビビは机を挟んで保存食を黙々と齧り、たまに水を飲んだ。

 こうしてゆっくりしていると、疲労感がどっと溢れてくる。

 肉体的には好調だが、それだけでは乗り越えられないものが蓄積していた。


 ビビにいたっては、食事しながら眠りそうになっている。

 食べる速さもいつもより遅く、俺と同じく食欲があまりないのだろう。

 表情からは分かりにくいが、彼女も相当に疲れているようだ。


(それも当然か。かなり無理をして戦い続けたんだ)


 ビビは数百体のグールを相手に、いつ終わるかも分からない攻防を演じた。

 卓越した機動力を持つビビだからこそ生存できたのである。

 もし俺だったら、途中で力尽きて押し切られていたかもしれない。

 何より不安と焦燥感にやられていたのではないかと思う。


 死霊術師の討伐という明確な勝利条件があった俺と違って、ビビには勝ち目がなかった。

 俺が勝つまでひたすら耐えるしかなかったのである。

 グールはいくら倒しても無尽蔵に湧いてくる。

 その中で絶望せずに戦うのは至難の業だ。

 ビビがどれだけ俺を信頼してくれていたのかよく分かる。


(一歩間違えれば、結果は大きく異なっただろう)


 俺とビビは命懸けの戦いを制した。

 こうして二人揃って生き残った幸運に感謝しなければならない。

 そして、今回のような無謀な賭けはもうしたくないと思った。

 俺達は平穏な暮らしが好きだ。

 波乱に満ちた冒険は、他の人間に任せたいところである。


 食後、俺は黒い刃の短剣を取り出すと、月明かりにかざしてみた。

 やたらと凝った造りで、細部までこだわり抜いている。

 ひょっとすると実戦用ではなく儀式用ではないか。


 実際、刃はほとんど研がれておらず、素の殺傷力はかなり低い。

 指で触れてみるも、薄皮一枚すら満足に切れなかった。


 しかし、死霊術師の肉体には難なく刺さった。

 おそらく使い手の魔力で強化することが前提なのだろう。


(不思議な武器だな)


 迷宮ではたまに稀少な物が入手できるが、これはその中でも特に価値があるのではないか。

 売れば大金になるのは間違いない。


 しかし、そのつもりはなかった。

 これを手放すのはさすがに惜しい。

 俺の実力と乖離した性能ではあるものの、護身用として持っておくのは悪くない。

 もちろん鑑定をして性能が明らかになってから最終的な判断を下すつもりだ。


 黒い刃の短剣を見つめていると、背中にビビがひっついてきた。

 彼女は短剣を一瞥して言う。


「ご主人にぴったり」


「身の丈に合っていない気がするけどな……まあ、気に入っているのは確かだ。報酬も貰ったことだし、ビビの魔術武器も買いに行こう」


「やった。ありがとう」


 ビビが抱き着いてきた。

 彼女は間近から俺を見つめてくる。

 吸い込まれそうなほど綺麗な瞳だった。

 ビビは頬を赤く染めて笑う。


「ふふ」


「どうした」


「一緒にいられるのが嬉しい」


「俺も嬉しいよ」


「よかった」


 俺はビビにそっと口づけをする。

 その日は二人で抱き合って眠った。

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