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第3話 迷宮に挑戦してみた

 暗い洞窟を抜けた先には森が広がっていた。

 頭上には岩の天井があり、部分的に発光することで昼間のような明るさを保っている。

 ビビは不思議そうに周囲を見渡した。


「迷宮なのに木がいっぱい」


「ここは特殊な空間だ。外の法則から外れているらしい。詳しいことは知らないが」


 迷宮とは特殊な現象の集合体だ。

 まだ解明されていない部分も多い。

 その最たる例として、不定期に構造が変わるという特徴がある。

 迷宮内では地図が役に立たない。

 進みながら作成する分にはいいが、攻略中に構造が変わる可能性もあるので過信できないのが実情だった。


 俺は持参した武器のうち、少し軽めの剣を取り出した。

 それをビビに渡す。


「これを持っておけ。安物だから使い潰してもいい」


「ありがとう」


 ビビは嬉しそうに剣を受け取る。

 彼女は鞘から剣を引き抜くと、試しに振ってみせた。

 模範的な構えと動きである。

 奴隷商による戦闘訓練でしっかりと学んでいる証拠だ。

 ひとまず背中を預けられそうだった。


 ビビに剣を渡したことで予備の武器がなくなったが大した問題ではない。

 素手でもある程度は戦えるし、必要なら迷宮の魔物から武器を奪えばいい。

 質は安定しないもの、割と簡単に入手できるのだ。


 俺とビビは森をゆっくりと進んでいく。

 すると、近くの草むらが揺れて音が鳴った。

 そこから緑色の小鬼が顔を出す。

 俺は剣と盾を構えて忠告した。


「ゴブリンだ。気を付けろ」


「うん」


 頷いたビビは真っ先に突撃した。

 想像以上の速度で疾走する彼女は、ゴブリンの顎に膝蹴りを浴びせた。

 さらに追撃で剣を突き出す。


 勢いを乗せた一撃はしっかりとゴブリンの喉を捉えていた。

 ゴブリンは白目を剥いて膝から崩れ落ちる。

 それきり立ち上がることはなかった。

 あっという間に終わった戦いを前に、俺は素直な感想を口にする。


「さすが獣人だな。敏捷性では敵いそうにない」


「えっへん」


 ビビは嬉しそうに胸を張る。

 お世辞などではなく、本当に驚いてしまった。

 間近で見ると、獣人族の素早さは余計に際立つ。

 かなり大胆な膝蹴りだったが、いきなり仕掛けられたら反応できないのも当然である。

 ゴブリンが何もできずに倒されたのも納得だった。


 俺なんかよりも、よほど強いのではないか。

 種族的な身体能力が違いすぎる。

 さすがに俺だってゴブリンに苦戦することはないが、あそこまで一方的な戦い方はできない。

 冷静に分析していると、ビビが俺の肩を叩いた。


「大丈夫。ご主人も強いよ」


「俺は普通だ。自慢できるほどじゃない」


 決して謙遜ではない。

 我ながら本当に平凡な中堅どころの冒険者である。

 特筆するほどの能力はない。

 自分で考えながら物悲しくなってくる。


 そんな心境を察したのか、ビビが抱き付いてきた。

 彼女は上目遣いに見つめてくる。


「一緒に強くなろう?」


「……そうだな。頑張るよ」


 苦笑した俺は大人しく首肯した。

 真摯に励まされたのだ。

 努力するしかないだろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! >頷いたビビは真っ先に突撃した。 >想像以上の速度で疾走する彼女は、ゴブリンの顎に膝蹴りを浴びせた。 さすが、兎の獣人! (本物の兎も、全力で蹴れば人間の…
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