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金貨三枚で買った性奴隷が俺を溺愛している  作者: 結城 からく


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第26話 支払方法を変えてみた

 俺は財布の中身を見る。

 予想通りの額だ。

 当たり前だが金貨百枚なんて入っているはずもない。

 治療術師はじっとこちらを凝視していた。

 威圧感で後ずさりそうになる。

 俺は慎重に疑問を口にした。


「金貨百枚……冗談ではないよな?」


「無論。真剣請求」


「すまない。そんな大金が必要だと思わなかった。今はこれしか持ち合わせていない」


 俺は素直に財布の中身を手のひらに出して見せる。

 誤魔化せる場面ではないだろう。

 ここは正直にいくしかない。

 下手に嘘をつくより、誠実な態度をすべきだと思った。


「…………」


 治療術師はゆっくりと目を細める。

 不機嫌そうに見えるが、ずっと同じ表情なので実際は分からない。

 怒っているのだとすれば不味い。

 ここで殺されるかもしれなかった。

 せめてビビだけでも逃げられるように頑張らなければ。


 やがて治療術師が仁王立ちに戻った。

 彼女は堂々と言い放つ。


「事情理解。支払方法変更」


「金の代わりになることをすればいいのか」


「肯定」


 その言葉にひとまず安堵する。

 金貨百枚分となると相当な仕事だろうが、それでも治療術師を怒らせるより穏便な展開には違いない。

 仕事ならば、冒険者としての経験があるので自信がある。

 ビビもいるので協力して取り組めばいいだろう。

 俺は財布を仕舞って治療術師に尋ねる。


「何をすればいい。どこまでやれるか分からないが、可能な限りで力を尽くす」


「簡単依頼。即日終了」


 すぐに終わる仕事らしい。

 それを聞いた俺はさすがに訝しむ。

 金貨百枚を補填できる上に短期間とは、さすがに都合が良すぎるのではないか。

 たとえば犯罪行為などが筆頭だろう。

 加担するつもりはないものの、真っ先に思い付く仕事と言えばそれくらいになる。


 断り方を考えていると、治療術師がおもむろに拳を構えた。

 腰を落とし、全身から熱に近い魔力を放出する。

 おそらく火属性だ。

 室内の温度が上がってじっとりと汗が滲む。

 治療術師は不敵な笑みを浮かべて俺達に宣言した。


「決闘要求。共闘許可」


「……俺達であなたと戦えということか?」


「肯定」


「勝てるわけがない。戦力差がありすぎるだろう」


「指摘理解。決闘強行」


 俺の言いたいことは分かった上で、決闘を止めるつもりはないらしい。

 つまりこれが仕事なのだ。

 犯罪ではなかったが、さすがに無茶が過ぎるのではないか。

 しかし、治療術師はやる気に満ち溢れている。

 俺は逃げられないことを悟りつつ、念のために確認する。


「決闘で満足してくれるんだな」


「肯定。決闘大好物。金不要。戦闘渇望」


「なるほど。最初から決闘ありきの請求だったわけか……」


 俺は納得する。

 法外な価格はすべて決闘のためだったのだ。

 冒険者などの戦える人間が訪れたら、こうやって同じことをしているのだと思われる。

 成り行きを見守っていたビビが小声で俺に訊く。


「ぼったくり?」


「いや、違う。治療内容を考えたら妥当……むしろ安いくらいだ。普通では治せない部分まで処置してもらったからな」


 できれば事前説明がほしかったが、今更な話である。

 治療を受けてしまったのだから仕方ない。

 これでどこかに訴えたところで、事態が好転することはないのだ。

 大人しく要求を呑むべきである。


「やるぞ。金貨百枚分の戦いを披露しよう」


「分かった」


 俺とビビはそれぞれ武器を構える。

 治療術師は心底から嬉しそうに笑みを湛えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 治療術が斬新なら対価も斬新。面白いです!
[一言] なにそれすげぇ治癒術師やなぁ…戦闘の経験も積めるしいいね
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