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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

Dr.Tの書庫漁り【一頁完結型短編の何か】

足りない女と足りた男【一頁完結型童話調・T書庫シリーズ】

作者: 【語り部】Dr.T


__幕間



 さて、次はこの本を読んでみよう。

 ここに一冊の本がある。タイトルは掠れてしまっている。

 それは、私たちにとっては物語であるかも謎らしい。

 しかし、コレが残されているという事は彼女は確かに存在していたのは確かだ。

 そういう世界らしいからね。ココは。

 さて、短いが少しばかり話に付き合って貰おうか。

 弟よ。ココの書庫は蔵書がいっぱいで私はとてもわくわくしている。

 ちょっと位、盗み見たところで罰は当たらないだろう。

 それではDr.Tの読み語りの始まり始まり。



__



 ある所に世の中で一番、平凡な男が居ました。

 彼は平凡な家庭に生まれ平凡に育ち平凡な日々を送って居たのです。


 ある所に世の中で一番、非凡な女が居ました。

 彼女が生まれた時に両親は死に頼る親戚も無くその日暮らしをしていました。


 ある日、彼は彼女と出会いました。

 彼女は何でも出来て卒なく熟す。彼女には才能がありました。

 彼にとって彼女は輝いて見えたのです。


 ある日、彼女は彼に出会いました。

 彼は彼女の持ってない物を持っていて、彼には心がありました。

 彼女にとって彼は輝いて見えました。


 2人は惹かれあい。お互いを気にするうちにそれは恋へと変わりました。



__



 ある所に世界で一番、孤独な女が居ました。

 彼女は生まれた時に天涯孤独の身となりました。


 ある所に世界で一番、愛された男が居ました。

 彼は平凡な家庭に生まれ皆に祝福され健やかに育ちました。


 ある日、彼女は彼に出会いました。

 彼は彼女の孤独を埋め、彼は彼女を支えました。

 

 ある日。彼は彼女に出会いました。

 彼女は彼に愛を捧げ、彼女は彼に尽くしました。


 2人は惹かれあい。2人は幸せに暮らしました。



__



 彼は幸せに暮らしました。


 彼は、彼女と、最後まで、幸せに暮らしました。



__



 彼女はまた孤独になりました。

 彼女は、彼と、離れて、孤独となりました。



__



 ある所に世界に逆らった魔女が居ました。

 魔女は愛する人を失い。世界の理を壊そうとしました。



__



 献身は執着に形を変え彼女は魔女になりました。

 魔女は愛する人を生き返らせる為にあらゆる方法を試しました。


 その世界を作った神々が居ました。その神の内、1人は彼女を可哀想に思い彼女に手を貸しました。

 彼女は神から永遠の命を手に入れる方法を教えてもらいました。


 彼女は自分でその方法を使ってみました。その結果、彼女は永遠の命を手に入れました。

 彼女は喜んで彼の亡骸にその方法を使いました。しかし、彼は永遠に起きる事はありませんでした。


 神が彼女に授けた方法は、この世界に生まれ生きている者にしか効果の無い方法でした。

 既に亡くなっている彼には効果は無かったのです。



__



 ある所に二つの墓がありました。


 その二つの墓は隣り合う様に作られてました。


 左の墓には綺麗な男の亡骸が収まっていました。

 その亡骸は生きているかの様で安らかな寝顔で墓に収まっていました。


 右の墓には誰の亡骸も収まってませんでした。

 その墓には名前だけが刻まれていてその墓には何も収まっていませんでした。



__終幕



 さて、この物語の主人公の女性は亡くなった男の人を蘇生するたに死者蘇生を試みようとしたようだ。

 哀れに思った神の1人が永遠の命を得る方法を教えたけどそれは不老不死になるもので死んだ者には効かないものだった。とんだ天邪鬼な神様が居るモノだ。


「……それを読んでいるのか」


 ん?貴方は?


「……彼女は棺には入れない。死を冒涜する者には罰を」


 ふむ、可哀想に思ったわけではなく永遠の命を与えたのは罰と言うコトか。


「……その話は世界で一番不幸な魔女と世界で一番幸福な男というタイトルだ」


 幸福?魔女の不幸は残された者って事は分かったが、どうして男は幸福なんだ?


「……幸福と言うのは感じる者によって違う。私には……分からないな」


 成程。私は弟が一緒なら何処でも幸せを感じる事が出来るからな。弟を残して先に行くなんて不幸だと思うんだが。


「……未練の少ない人生を送ってたのかも知れないな」


 幸福の定義は何なのか。それは神も知らないか。


「……自分の言う事を聞くのが人間の幸福だ。なんていう奴も居るからな」


 それは神視点か?


「……人間全体の幸福ではあるだろうが神は別に人間だけのモノじゃない。分布図が広いからある程度の指標を建てないといけないんだ」


 急に話が。


「……さて、私は君に選択を与えに来た。このまま、此処で消えていくかそれとも放浪者となるか」


 私のすべき事は終わった。此処で弟と2人で消えていく。


「それはお前の幸せで弟の幸せなのか?」


 それは難しい問題だな。だが、私たちはあくまで思考の残滓。無意識の集合体なんだろう?本物の私たちは元の世界で生きている。ならば私たちが離れる事は無いだろう。


「死が2人を別つまで……か。まぁ好きにすると良い。しつこい奴とか居たらお前の卓のKPに言うと良い」


 分かった。さて、次はどの本を読もうかな。

シリーズとなっていますが小噺の方は何処からでも読めます。


足りない女は魔女になり、足りてる男は転生する。

魔女は彼を無限の命で追いかける悠久の世界を越えたストーカー。

永久の命とは、永久の精神。精神の無くなった死体には、その方法は価値も無し。


さてさて、これにてこの小噺は終わります。それでは皆様また次回。

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