05
天界に着くと案の定、
全員が気を失ってピクピク痙攣しています。
天国の門付近にある籠を背負い、
大きなトングで魂を回収していると
天女たちが楽を奏でながら華やかに現れました。
「あら、また気絶していますの?
私たちの演奏は届いているのかしら――」
かぐや姫が不満気に呟いたので
急いで胡麻を擂っておきます。
「もちろん響いておりますよ、
美しい音色は目を閉じて聴くものです」
「お上手ですわ、ホスセリさま。
いつものように白い黒子姿もお似合いです」
「やあ! 褒めてくれるのは貴方だけですよ」
白頭巾で顔を隠したまま魂を回収する私。
「可憐なご尊顔を見せてはなりません」
それは褒め言葉なのでしょうか?
さあて、全部の魂を拾い上げたし城に戻りますか。
「皆さま、素敵な曲を有難う御座います。
来週も宜しくお願いしますね、
見目麗しい天女さまの調べこそ至上の喜びですから」
よしよし、彼女たちは嬉しそうに飛んでいく。
「ホスセリさま、これからどうするのです?」
かぐや姫は小さめの琴をしまいつつ尋ねます。
「これを天界殿に届けてからデパートへ行くつもりです」
ヨイショと籠を担ぎ、ヨタヨタ歩き出すと
「まあ、私もデパート支店で買い物が有りますの。
おほほ、偶然ですわね……ご一緒しても宜しいかしら?」
かぐや姫がキラキラ微笑みます。
「ホスセリさまは、お忙しいのですよ」
「閻魔様の言伝もあるしな!」
わあ、そうでした! 忘れてましたよ。
頼れる従者は重い荷物も背負ってくれるナイスガイです。
「かぐや姫、お仕事があるので行けません」
「でも、デパートには向かうのでしょう?
ならば待合室でお待ちしておりますわ」
う~ん、待たせるのは申し訳ないなぁ。
「ホスセリさま、お断りした方が宜しいかと」
桃太郎さんが耳打ちしたので、はっきり断ろうとしたら――
「桃太郎さまと金太郎さま、
実は天女たちが武勇伝を聞きたいと
月詠殿に集まっておりますのよ。
籠を置いたら是非顔を出してくださいな」
二人は満更でもない様子で
「そ、そうですか? では後から参ります」
「うむうむ、美女の誘いは断れないからな」
私は仲間外れですか? 武勇伝は必要ですか?
別にいいですよ、物凄く忙しいですからね!
「ではホスセリさま、お待ちしておりますわ」
やあ、驚きました。最初の約束が有効とは……
「ですが待たせてしまいますよ?」
「ああ~もう! 絶対に来て下さいませ!!」
うわぁ、相変わらず強引ですね~