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  八寒地獄(はっかんじごく)

  一.「あぶだ」 寒さの余り鳥肌とりはだが立ちます

  二.「にらぶだ」 鳥肌が荒れてあかぎれに

  三.「あただ」 寒さによりアタタと感じます

  四.「かかば」 舌がもつれてハハバと言います

  五.「ここば」 口が開かずフフバになります

  六.「うばら」 凍傷とうしょうでひび割れ"青蓮地獄しょうれんじごく"

  七.「はどま」 皮膚ひふけて"紅蓮地獄ぐれんじごく"

  八.「まかはどま」 最も広大な"大紅蓮地獄だいぐれんじごく"


 さて書き終わりました。アイスを(いただ)きましょう!


「――なぜ、平仮名表記ひらがなひょうきなのかしら?」


頞部陀(あぶだ)など漢字はむずかしいので……」


  けかかったアイスにパクつきます。


「説明がいい加減(かげん)に見えます」


「ちゃんと書物を参考にしましたよ」


 本当に "あたた" とか "ふふば" とあったのだ。


「確かに寒くて急いだ記憶はあります。

でも、これは酷過ひどすぎますわ……

もう一度調べます。ホスセリ、いらっしゃい!」


「ええ!? どうして私が??」


「貴方は地獄を調べに来たのでしょう?

ならば詳細しょうさい(しる)す必要があります!」


 理屈りくつ(わか)りますが、寒さで神玉かみたま終焉しゅうえんを迎えますよ。


「申し訳ありません、イザナミ様。

これから魂の引き取りがあるのです」


「では、次回来た時に向かいましょう」


 ――なぜ(あきら)めてくれないのか?


「八寒地獄は寒い場所だと十分に伝わります。

この表現ひょうげんは真に(せま)っていて素晴らしい!

新たな文章で此処ここまで出来るかどうか……」


「ですが、八大地獄はちだいじごくと違って軽い感じがします」


「いえいえ、寒さと言うのは辛いものです。

頑丈がんじょうな鬼にでさえ登場しないのですよ?

我々が行ったらどうなるか……考えてみてください」


 ピタリと動きを止めるイザナミ様。


「ほ、ほほ、そうでした。

以前、神玉が凍傷とうしょうになりかけて大変でしたのよ」


 ほら~危うく巻き込まれるところでした。

私が一緒に行っても精々(せいぜい)

"カタカタ"や"ブルブル"など表記は悪くなるだけです。


「そろそろおいとまします。あと

これがスサノオ様からの手紙です。

それと何枚か写真をりたいのですが――」


「ふふ、いくつになっても甘えん坊ね。

わたくしの返事よ、あの子は喜ぶかしら?」


 間違いなく感涙かんるいするので、ご安心を。

優しく微笑むイザナミ様を数ショット撮影さつえいします。


「とても綺麗に撮れました。

スサノオ様は歓喜かんきして暴れ回るでしょう」


「うふふ、愛しい子です。

次は焼き菓子がいいわ、この間の……

オレンジが入ったパウンドケーキをお願い」


「了解しました。オレンジケーキを持って参ります」


「楽しみに待っているわ。

いつまでも可愛いホスセリ、お仕事頑張ってね」


 もう子供じゃないのですよ!

まとめた書物を持ってイザナミ殿を出ます。

あんなに優しい方が地獄の創設者そうせつしゃなんて……

 ブルッ、背中がゾクゾクするのは

慌ててアイスを食べたせいですよね?

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