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勇者√←ディレクション!  作者: nns
【全ての道を統べる国 マッシュ公国】 マッシュという国
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第62話

 マッシュ公国はいくつかの区によって分けられていて、地図によると

 私達が入ったのは西区に当たるらしい。

 西区にはルークのいるハブル商社がある。

 観光向けのパンフレットには宿や飲食店、観光スポット以外は載っていないようだけど、

 きっと歩いていれば着くだろう。

 何せ文字が読めないから詳細は分からない。


 この街の真ん中は太い道路になっていて、時折馬車が通る。

 どうやら馬車専用の道らしい。

 物流に強いこの国らしいと思いながら、私達は何度かその馬車が目的地へと向かうのを見送っている。


「さっきから等間隔に設置されてるこの看板、何かしら」

「うぅん。私も気になってたんだけど、誰かに聞いてみる?」


 高性能な翻訳機といえど、流石に文字の翻訳はしてくれない。

 ジーニアで貸し出されたあの眼鏡があれば一発なんだろうけど、あれはジーニアの中でも

 図書館なんかの施設にしか置いてないものらしいので、買ったりもらったりは

 できないようになっていた。


 私達が立ち止まってその看板を見ていると、そこに馬車が停まって、

 ぞろぞろと人が乗り降りを始めた。

 その光景を見てピンときた。


「あれ、多分街を巡回してる馬車じゃないかな。あの看板があるところで停まるから、

 そこで乗り降りするようになってる感じの」

「何よそれ、便利じゃない」

「そうだよ、便利なんだよ」


 何故か挑戦的な口調のマイカちゃんだけど、当然それに乗ろうとはしなかった。

 私も無理強いはしない。

 他に乗客がいる時に必殺キラキラを放たれても困るし。


 街を歩いてぐるっと一周するだけで一日かかりそうなくらい広いけど、

 南側の区画は住宅街のようなので、私達が訪れることはないかもしれない。


「これなんて読むのかしら」

「うーん、でもルークは自分の会社のある区画を西区って言ってたし、マイティーミートが

 あるのは中央区だよね? ってことは、南区、東区、北区になるんじゃないのかな」

「街を五つに分けるなんて、とんでもない広さよね」

「そうだね。まぁこの街自体が国なんだし、そう考えたら当然なんじゃないかな」

「ホント、観光目的で来たかったわよね」

「それね」


 私達は宿屋っぽいマークがたくさん付いている、推定東区に向かっていた。

 推定というのは、今言った通り、読み方がわからないから。

 巨大な時計台を左に見ながら進んで行くと、とある通りに到着した。

 上に何か書かれているけど、生憎読めない。


 ただ、上下に文字を挟んでいるマークがパンフレットに載っている宿屋っぽいマークと同じだ。

 これが本当に宿屋かどうかは置いておいて、私達は目指していたところにとりあえず辿り着いたらしい。


「当たりみたいね」


 マイカちゃんがそう言うと、通りの奥を指差す。

 そこには、「宿がまだの方は是非うちに! あと一部屋だけですよー!」「美味しい

 ご飯が食べたいなら是非当店へ!」「うちはとにかく安いよー!」と、声で互いを

 牽制し合う客引きの人達が居た。


 どこでもいいんだけど、路銀も無限ではないし、できればリーズナブルなところに泊まりたい。

 ゆっくりを足を進めていると、その中でも一際通りのいい声が耳に届いた。


「うちは平凡な宿だし、夕食は付かない! でも安いよ! さらに今日泊まってって

 くれた人にはマイティーミートの食事券をプレゼントだ!

 夕食はそこでたらふく食ってくれ!」


 ヒゲを生やしたふくよかなおじさんは口に手を当ててそう叫ぶ。

 マイティーミート。しかも安い。

 マイカちゃんなら迷うことなく飛びつきそうだ。

 そう思ったけど、甘かった。


 マイカちゃんは既におじさんのところまで走って行って、「二人」と言いながら

 小手を付けた指でピースを作るようにして予約を完了させていた。


 慌てて駆け寄って金額を訪ねる。

 おじさんはマイカちゃんの真似をするようにピースした。

 お前らさんら、可愛いから一人当たりこれで勘弁しちゃる。

 そう言って提示されたのは一人2000チリーン。

 この辺の物価は分からないけど、周囲の声から、大体

 一人3000チリーンが相場らしいことが分かる。


「じゃあ、とりあえず二泊お願いできますか?」

「おぉ! いいね! そんじゃ大マケにマケて、二泊で一人3500チリーンだ!」


 おじさんはガハハと腰に手を当てて笑うと、私達を部屋と案内してくれた。

 少し狭いけど、私達は多分寝起きするだけだからこれくらいでちょうどいい。


 荷物を置いて手続きを済ませると、マイティーミートのチケットとお財布だけを持って、

 街に再び繰り出す。


「いい宿が取れて良かったね」

「そうね、でもこのチケット、ディナーチケットだからいま行っても実費になるわよ」

「いやすぐは行かないよ……どんだけ肉食べたいの……とりあえず、ルークのところを訪ねてみない?」

「あぁ、すっかり忘れてたわ」


 マイカちゃん、肉以外のことって考えてないのかな。

 そんな疑問を振り払って、私達は西区を目指す。

 ちなみに、区画の名前は宿屋のおじさんに聞いた。

 ここはやっぱり東区で合ってるらしい。


 この街は西区、南区、東区、中央区、そして行政区に分かれているとか。

 行政区には国を運営している機関の施設が立ち並び、その中央にマッシュ五世のいるお城があるらしい。

 ちょっと見てみたい気もするけど、それは明日以降にしておこう。


 東区から西区へ。街の端から端まで歩くことになりそうだけど、私達はまだ元気だ。

 いや、私はちょっと疲れてるけど、マイカちゃんはめちゃくちゃ元気だ。

 来た道を引き返すのもなんだからと、違うルートを通って西区へと向かうことにした。



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