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勇者√←ディレクション!  作者: nns
【最終決戦】黒と闇と光と優しいドラゴン
231/250

第231話

 ゴーレムが加勢してくれたことにより、水龍の命は首の皮一枚で繋がった。

 水と氷で出来てるから皮ないけど。

 ゴーレムがガンガンと腕を叩き落とし、水龍はその間を縫うように化け物に噛み付く。

 効いているようには見えないけど、向こうの攻撃の手数が減っているだけで上々だ。

 元より時間稼ぎで手伝ってもらっているだけだし。


 少なくとも化け物にとって、彼らは鬱陶しい存在のようだ。

 脇から伸びているガリガリに痩せ細った苔のような色の腕が黒い光を吐き出した。

 水龍は為す術もなく硬直したが、ゴーレムは違った。

 波のように押し寄せる不気味な黒い光の前に向かっていく。


 ゴーレムが両腕を広げて全身で真っ黒な魔力を受け止める。

 敵の攻撃が集中してしまったというよりは、ゴーレムが魔力を意図的に吸収したように見えた。

 私の見立てを裏付けるように、いつの間にか隣に立っていたクロちゃんが勇者だったものに向かって言った。


「黒魔導師に闇の魔法を食わせるとは。バカなやつ」

「影が薄過ぎて、存在を忘れていたよ」

「そう。そのバカさが命取りになる」


 化け物の中から響くカイルの憎まれ口に、クロちゃんは鼻で笑って応戦してみせる。

 そして、懐から釘を一本取り出した。


 ……まさか、アレを呪うつもりなのかな。

 ビジュアル的には既に呪われまくってる感じなんだけど。


 クロちゃんは釘を天高く放り投げ、落ちてきたところを狙って木槌を振るった。

 あの木槌、久々に見たな……釘もだけど。


「ムルムル!」


 紫色の光の筋を残し、釘は一直線にゴーレムの背中に突き刺さる。

 ムルムルっていうのは、多分名前だと思う。

 名前を呼ばれて反応したのか、釘から何かしらの力が流れているのかは分からないけど、

 ゴーレムを鈍い音を立てて両腕を振り上げた。


 どうやら、飲み込んだ魔法をそのままムルムルのパワーに転換したようだ。

 ゴーレムの体はぐんぐんと大きくなり、水龍よりも一回り小さかった筈の体は

 あっという間に倍くらいの丈になった。

 目線の高さは三階建ての建物くらいある。

 化け物はムルムルを見上げ、動きを止める。


 自分の力がそのまま相手に奪い取られて跳ね返ってきたのだ。

 カイルは己の不覚さを悔やんでいるのかもしれない。

 畳みかけるなら、きっと今だ。

 静かに拳を握ると、後ろから「やっちゃいなさいよー!」なんて声が聞こえた。


 ここからようやく反撃に転じることができるかもしれないと思ったのに……

 化け物の方から妙な呪文を聞こえてきた。

 聞いたことのない呪文。

 だけど、どこかゾッとする響きを持つ、不気味なものだった。


「……何、あれ」


 呆けるマイカちゃんの声を背中に、私は駆け出した。

 ムルムルが岩のような腕を振り下ろそうとしているけど、一瞬だって待てなかった。

 私は化け物の腕に触れないように注意して、剣を構える。


 ムルムルの腕が化け物を叩き、直撃と同時に暗い紫色の光が迸る。

 吸収した奴の力を攻撃に転じるとこれほどの威力になる、ということだろう。

 彼が吸収してくれて良かった、なんて考えながら、私は光の中に飛び込んだ!


 眩しくて何も見えないけど、化け物の居た場所なら覚えている。

 私は感覚を頼りに間合いに踏み込み、剣の柄を強く握った。


「うっ……!?」


 閃光の中で体に走る衝撃。

 私はワケが分からないまま、外に放り出されてしまった。

 吹っ飛ばされる私を見て、マイカちゃん達が声を上げる。


 なんだ、何に、何をされた。


「っつぅ……」


 なんとか着地すると、左手で腹を押さえて膝を付く。

 右手は剣から離さない。

 何が起こったのか分からない状況で武器を手放すようなことはしたくなかったから。

 油断すると手からこぼれ落ちそうになるそれをぐっと掴んで、化け物がいたであろう場所を見つめる。

 まだ閃光が止まない。だけど瞬きする間すら惜しんで観察した。


 体に響かないように静かに息をする。

 ムルムルの攻撃は止まったのに、闇の魔力がその場に留まっていた。

 そこからはみ出るように、大きな生き物のパーツが見えた。

 腕じゃない、あれは。


「……おい、あれ、マズいんじゃ」

「分かってるわよ……」


 私の体は尻尾で弾かれてしまったらしい。

 何の尻尾かは分からないけど、さっきまでカイルの体を纏っていたのは、無数の腕や何かの顔だ。

 尻尾なんて、一本も生えてなかったのに。


 そして辺りに水龍の姿は無かった。

 あの黒い光の中、ほとんど何も見えなかったけど、尻尾で打ち付けられたはずの私が

 これだけ軽症で済んでいるのは、あの水龍が守ってくれたおかげだろう。

 私を庇って最後の力を使い果たしてしまったらしい。


 そして、水龍だけではなく、ムルムルもピンチを迎えていた。

 ギガガガガという悲鳴なような音を立てたムルムルを見たクロちゃんは、

 慌てて手をかざして彼を魔法陣の中に戻そうとしたようだけど、少し遅かった。


 ゴーレムの体が音を立てて崩れる。

 巨大な体を構成していた砂だけがそこに残った。


「ムルムル……!」


 何が起こったのかは明白だ。

 闇の力というのは他の属性よりも吸収しやすい。

 ムルムルがそうしたように、あの化け物は力を取り返したのだ。


 魔力を吸い取られ、ただの器となってしまったゴーレムは形を維持出来ないようだ。

 力を吸収したムルムルよりもさらに大きくなった化け物は、こちらを見て低い声で笑った。


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