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勇者√←ディレクション!  作者: nns
激闘・ドランズチェイス
102/250

第102話

 全ての選手が第一チェックポイントの大聖堂を回った頃、先頭グループは

 第二チェックポイントである東区のサンザホテルへと向かっていた。


 いくら高いところに登って望遠鏡を覗いているとはいえ、西区の端の城壁の上からじゃ

 彼女達のデットヒートは見物できない。

 私は祈るような気持ちでマイカちゃんを応援していた。


 ——再び高度を上げたルーク選手と、堅実に建物の上を優雅に飛ぶリード王女! そして驚くことに、その小柄さを生かして時には建物の合間を縫うようにして最短距離を飛ぶマイカ選手! これは面白い戦いになりましたね! マイカ選手は怖くないんでしょうか! 見てるこっちがヒヤヒヤしますよ!

 ——三者三様、それぞれのスタイルで最速を競っていますね。しかし、マイカ選手はもう少し高度を上げれば、背の高い建物に邪魔されることなく進めると思うのですが……


 クレアさんはマイカちゃんの飛び方に疑問を呈している。

 隣にいる門番のおじさんも、確かに……なんて呟いているけど、私にはなんとなく理由が分かる。


 クーは、あの体の大きさじゃあんまり長い時間高く飛んでいられないんだ。

 配達に行った時だって、高く飛ぶ時は自然と少し体を大きくしてたし。


「マイカちゃん、どんどん距離を縮めているよ!」

「え? そうなんですか?」


 私の持ってる双眼鏡よりもおじさんの双眼鏡の方が性能がいいらしい。

 お金を払ってるとはいえ借りてる立場だから文句は言えないけど、

 私も早くマイカちゃんとクーの姿をはっきりと見たい。

 だから、一番でここまで来てよ。


「並んだ!」

「え!?」


 ——サンザホテルへと急降下するルーク選手! しかしリード王女とマイカ選手にはドラゴン一体分届かない! 先に第二チェックポイントを制したのは……! チェッカーが持つフラッグが上がりました! 書かれているのは八十番! マイカ選手です!

 ——すごい追い上げでしたね

 ——いやぁー! 本当にすごい! あの二人を抑えるとはあっぱれ!


 歓声が爆発して街が揺れる。

 私も、思わず「やったー!」と声を上げて、おじさんとハイタッチした。

 しかし、喜びも束の間、頭の片隅で恐れていた事態が起きてしまう。


 ——おーーーーっと!!?!? マイカ選手どこへ行く!!

 ——彼女、ルート覚えていないんでしょうか

 ——そっちじゃないぞー! マイカ選手! 居住区はフラッガーからフラッグを受け取った後だ! おーーーい!!


 どうやらマイカちゃんはルートを間違えたらしい。それも盛大に。

 まぁ、これまでは先頭を追ってればよかったけどね……

 一位になったら、先頭いなくなるもんね……

 方向音痴のマイカちゃんが正しい方向に飛んでいけるわけないよね……。


「あ〜もう!」

「マイカちゃん、方向音痴なんだね……」

「はい、かなり……旅のルート決める時だって、いつも「私は地図は読めないから

 ランにまかせるわ」って言ってばかりですし……」

「二人は旅のパートナーなの?」

「あ、そうなんです。私達はハロルドの出身なんですが」

「ハロルド!? そりゃまた随分遠くから来たんだね!」


 私達が雑談に興じている間に、マイカちゃんはやっと正しいルートに戻ったらしい。

 実況のボンズさんがホッとした様子でそれを伝えたあと、彼女は下から数えた方が

 早いくらいの位置を飛行しているとクレアさんが告げた。


 隣に並んでいるフラッガーが「なんだよ〜!」と残念そうな声を上げている。

 でも多分、私はその百倍は残念に思っている。

 こんなことならもっとコースの確認をしておくべきだったな、なんて。今更考えても遅いけど。


 しばらくすると双眼鏡無しで姿が見えるくらいに、リードさんとルークが近付いてきた。

 城壁の上に並んだフラッガー達は自分の持っている旗を大きく振って、

 みんなが自分のそれを受け取ってもらえるようにアピールしている。応援団みたいだ。

 なるほど、立ち位置が決められていたのはこういうことか。

 至近距離でみんながこんなことをしたら、誰かにぶつかってめちゃくちゃ危ない。

 下手したら落ちるよ。


 二人がいよいよ近付くと、フラッガーはそれぞれの旗で高く天を指し、じっとしていた。

 私もそれに倣ってみるけど、端っこだからどうせ受け取ってもらえない。


 一番に辿り着いたリードさんは片側の手綱を引っ張って、半回転するように

 頭を地面に向けると、そのままの姿勢で可愛い子からフラッグを受け取った。

 そう、可愛い子から。


 その瞬間、女の子達から黄色い声が上がる。

 姿勢を整えたリードさんは居住区へと向かって大きく方向転換をして飛び去って行った。

 視線をフラッガー達に戻すと、ルークも空中でドラシーの体を真横にして、

 フラッグを受け取っていた。渡しているのは……フィルさんだ!


「フィルさん、フラッガーだったんだ」

「あの子は毎年フラッガーを任されてるよ。選手達の噂によると、受け渡しが抜群に上手いらしい」

「へぇー……」


 受け渡しに技術とかあるの?

 私、そんなの何も知らないんだけど。


 ちょっと心配になってしまったけど、どっちにしてもマイカちゃんが来ないことには始まらない。

 次々と選手が旗を渡していく中、私はマイカちゃんを待ち続けた。


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