2層 20話目
文字数少なめですが、なんとか更新でござるっ……。
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奥へ奥へと洞窟を進む。
ひんやりとした空気。
肌寒さがどんどん増していって。
「ぷぎゃる」
うん?
足元から変な声がする。
「な、なんかあるの……?」
私は足元に視線を落とす。
そこには芋虫のような姿の魔物がいて――
「――んぎゃああああああああ!!」
思わず叫んでしまった。
「こ、こえおっきいの!」
「ぎぅぅぅ」
楯子ちゃんに口を塞がれて「めー」と言われてハッとした。
どうにか冷静さを取り戻す。
「ご、ごめんね」
「……いきなりまものさんでたから、びっくりしちゃったの?」
「まぁね……」
「このまものさん、よわよわだからだいじょぶだよ」
「ぎぅ」
そう言うと、二人はすぐに芋虫の魔物を処理してくれた。
随分と手馴れたものである。
ずっと迷宮に放って頑張っていて貰ってたワケだし、そりゃあ慣れるか。
私が見ていない間にこんなにたくましくなって……。
なんというか、
私も二人みたいに慣れればいいんだろうけど、
何せ基本が後方だから、
いきなり何か来るとビクってなってしまうことがあるんだよね。
地味に迷宮が久しぶりっていうのも原因の一つだけど。
まぁともあれ。
気を取り直していこー。
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芋虫の魔物を倒しつつしばらく進むと、
僅かな振動とともに何やら音が聞こえてきた。
戦いの音だ。
もしかしたら……という予想はしていたけど、
一方でまさかという思いもある。
徐々に近づいていって、
広間のようなところが見えてきた。
音はそこからしている。
「二人とも静かにね?」
「ぎーう」
「わたしたちより、じぶんのほうがさわがしいんじゃ……」
「なんか言った?」
「なにもゆってないよー」
よし。
二人に静かにするように言い含めつつ、
そーっと広間の様子を伺う。
そこには驚きの光景があった。
「くっ……」
「……だいぶ痛めつけたハズなんだけどな。しぶとい魔物だよ」
「それはこっちの台詞よ。どうなってんのよアンタ。疲れがまるで見えないんだけど。……怪我でスキル封じの燐粉が出せないのが痛いわね」
「スキル封じ……? あぁなるほど、そういう絡め手を持っていたわけか。でも今は使えない、と。どうやら僕に運が向いているようだね」
「……ムカつく。ってか、刀一本へし折ってやったのに、また新しく出すなんて卑怯ではなくて?」
「僕から見ればそっちこそ卑怯だよ。人間に不可能な動きばっかしてさ」
は?
なんで茶メンがいんの?
しかも、私が潰したハズのあの魔物と戦ってる。
いやまぁ確かに、あの魔物には近づきたくない感じがあったから、生死の確認はせず、死んだものとしてすぐに離れはしたけど……でも、まさか茶メンと激闘を繰り広げる事態になるとか、そんなの考えもしなかったんだけど。
どういう状況よこれ。
見なかったことにした方が良いのかな?
いやでも、苦手なタイプではあるけど、茶メンもクラスメイトではあるしね……。
さすがにガチで死んでも良い、とまでは思わない。
だから、助けに入った方が良いのかも知れないけど、
「……まぁ何にしても、そろそろカタをつけさせて貰うよ。決着は早めにつけないとね」
「威勢が良いことね。出来るものならやってみなさいよ」
でもさ、正直これ割って入る必要なさそうな気もするんだよね。
振ってる刀が目で追えないんだけど。
消えるぐらい速いんですけど。
まさか茶メンがこんなに強かったとは、思いもしなかった。
そんなレベル上げした風にも見えないから、
素の強さがこれっぽいし。
武器有りなら二段に匹敵するんじゃないかな……。
というか、スキル名かな今の【帝刀】って。
日本刀出せるスキル?
ちょっとカッコいいね。
うーん。私もそういうスキルの方が良かっ――いや、エキドナと楯子ちゃんと会えたのは、私が召喚士のスキル持ちだからだ。
それを否定してしまったら、二人のことも否定することになる。
他人の芝生は青く見えるもの。
私は私でこのスキルで良かったし、それを肯定的に捉えよう。
とにもかくにも。
ひとまずもう少し様子伺いますか。
助力するにしてもしないにしても、
もう少し状況とか流れを見極めないとね……。
一応すぐに【精霊行使】を使えるように錫杖を握りなおしつつ、
私は物陰からこの激闘をじっと眺めることにした。
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