2層 19話目
更新遅れてごめんなさい……。
何日か経った。
そして、この間に良いことと悪いことが一つずつ発覚した。
まずは良いことから。
これは、エキドナと楯子ちゃんを迷宮に出して、私は部屋で待っているだけでお金と経験値が僅かずつ溜まっていくことだ。
拠点を手に入れたお陰で、ある意味で召喚士スキルの本領が発揮状態である。
で、次に悪いこと。
これはクラスメイトに私の住まいがバレてしまったことだ。
この前の盗撮魔が広めたっぽくて、窓から外を眺めると、常時誰かの姿が見える事態になっていたのだ。クラスメイトの誰かの姿がね……。
ほんとクソ。
この悪いことのせいで、
せっかくの前者の良いことで盛り上がった気分が、
急降下してる。
「ぎぅぅ……?」
「なんでそんなにおこってるのー?」
私が眉間に皺を寄せ、半身になって窓の外を眺めていると、エキドナと楯子ちゃんがそんなこと言ってきた。
「ストーカーが増えたからだよ」
「すとーかー?」
「危険人物のこと」
「えー? そんなひといるのー?」
いるんだよねぁ。
ほら、今もいるよ。
あそこの建物の角に一人隠れているし、
マンホールの蓋が少し開いてるから、
あの中にも一人いる。
「くそがっ……」
ガチでイラつく。
一掃しないといけない。
「――泉よ泉あまねく泉。借りし力を型造る。一滴全てよ小さき球なり雨中の最中」
イメージしたのは、
雨のように多量の水滴。
「――欲望駆られし迫る愚者のみ四六時中と追尾せしめて追い払え!」
追尾効果つきで、
私を狙っているであろう連中を全員、
多量の水滴で24時間迎撃スタイル。
『う、うわああああ! な、なんだこれ!』
『施設は安全なんじゃねぇのかよ! うごごごごっ! 痛い痛い痛いっ!』
シネ。
ヒャハハハハハハ!
「わるいかおしてる……。こわいの」
「ぎ、ぎぅ……」
■□■□
精霊行使による24時間警備追跡弾の構築によって、
ストーカーは徐々に数が減って一安心とはなったものの……、
しかしである。
これが落ち着いた頃になって、
私は別の問題にはたと気づいた。
お金も最近は溜まりつつある。
家賃や食費の分を差し引いても、
まぁこの施設で無難に生きてはいける。
そう、生きていける――のだが、それだけしか出来ない、ということに。
永遠にずっとこの施設で生きるつもりは私にはなかった。
元の世界に戻りたいかは……自分自身のことながら正直良くは分からないけど、でも、ずっとここで生きるだけというのはどうにも寂しい気持ちになるよ。
まぁ、といっても、元の世界に戻る方法わかんないんだけどね……。
「うーん……」
迷宮を進んでいけば、
あるいは帰還手段も見つかるのかな?
それも分からないけど……。
ともかく、いずれにしろ、
私自身も迷宮には赴かなければならない。
それだけはなんとなく感じた。
答えを見つけないといけないのだ。
元の世界に戻れるにしろ、
戻れないにしろ、
答えは見つけないと駄目なのだ。
……要するに、
このままただ時を過ごすだけと言うのは、
私には少し向かない生き方だった。
■□■□
というわけで。
私ただいま二層目に来ております。
当然にエキドナと楯子ちゃんもお供させております。
一人でなんて来るわけないじゃん。
変な魔物とも以前に遭遇したワケで、
さすがに一人は危険過ぎる。
「さーて、とりあえず次の階を探さないとねー」
層ごとにボスはいるけれど、
何も倒す必要はないのだ。
スルーして次の階にもいけるのであって、
それはもう知っている。
「で、二人とも、それっぽいの見たりしなかった?」
エキドナと楯子ちゃんには、
レベル上げやら魔石集めやらお宝探しやら、
色々とこの層で普段からやって貰っているのだ。
だから、もしかしたら見つけているかも。
「うーんとね、それはね、いわれてなかったから、さがしてないの……。ごめんなさい……」
「ぎぎぅ……」
あー……。
そういえば、次の階も探してね、とは私も言っていなかったっけ。
これは私が悪いかな。
伝えたこと以外も勝手に気づいてやって当然、と言うのは少し横柄な考え方だ。
「そんなことないよ。ありがとう」
頭を撫でてあげると、
二人ともすぐにニコニコになった。
■□■□
二人に魔物を倒して貰い、
魔石も回収しながら、
ぼちぼち探索を開始していると、
おかしな現場に出くわした。
木が真っ二つになっていたり、
へし折れていたり、
激闘の跡……見たいなところだった。
なんだか気になって、
私は激闘の跡を追っていくことにしてみた。
すると、変な洞窟のような場所に辿りつく。
激闘の跡はこの中にも続いている……。
「……」
中に入って確認してみた方が良いのかな?
でもなぁ。
あの時の魔物みたいなのが出てきたら、
次もなんとかなるとは限らないワケで。
激闘の跡ってことは、何かがいる可能性高いし。
けども、もしかすると、ここが次の階に繋がっている場所だったりする可能性も否定はしきれないワケで。
森みたいな環境の二層目で、
ぽつんと洞窟があるって、
なんかおかしいし。
私はしばらく唸って悩んでみたものの、
やはり三層への入り口である可能性を捨てきれず、
警戒しつつも中に入ることに決めた。
「二人とも、頼りにしているよ」
エキドナと楯子ちゃん、
私が対処しきれない状況になったら、
助けてね頼むよ。
わりとガチで。
「ぎぅ!」
「えいえいおー!」
軽い感じのノリだけど、
まぁ思い返して見れば、
私たちはいつもこんな感じだよね。
変に重苦しいよりは全然マシでしょ。
果たして中に何があるのか……。
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