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2層 15話目

■□■□



 お日柄も良く、なんて言葉が似合いそうな程に日差しが強い。

 しかし、私の心は反対に曇り空だった。


 クラスメイト達との一件の事で、

 ただでさえ心労が祟っていると言うのに、

 その最中にやたら硬い魔物に強襲されるって。


 おかしいでしょ。

 私ってば何か悪い事した?

 いいや、してない。


 まあ、エキドナちゃんと楯子ちゃん、

 それに精霊行使の力で難を逃れたから、

 もう過ぎた事。

 あの魔物はぺしゃんこになったし、

 考えるだけ無駄かな。


「ねーえ、おかしまだー?」


 楯子ちゃんがそんな事を言い出した。

 そういや、お菓子買ってあげるとか言ったね、私。

 功労賞と言う事で、エキドナちゃんにも何か買ってあげなきゃってのもあった。


「うーん、どうしようかな」


 少し悩む。

 クラスメイト達も少しは頭を冷やしただろうか。

 そうであれば、扉を出して施設に行っても問題は無いんだけど。

 多少は時間も経ったし、今なら大丈夫かな?

 いや、出来ればあともう少しだけ……。


 とは思うものの。

 エマちゃんの所に置きっ放しの荷物の事もある。

 いつまでも好意に甘えてそのまま、と言うワケにも行かないでしょ。

 さすがに、そろそろ一旦施設に入るべきかも知れない。

 私自身としても、そろそろ体とか洗いたくもなってきてる頃合だし。

 汗とか土埃とか、あと草木を分けながら進む事も多いせいか、葉っぱの匂いがそこはかとなくするんだよね……。


「めーなのー?」

「そうだねぇ。……じゃあそろそろ、いっかい戻ろっか」

「うん!」


 楯子ちゃんが元気良く返事をして、

 エキドナちゃんも「ぎぅ」と短く返事をした。



■□■□



 施設に入って見ると、

 幸いな事にクラスメイト達の姿は見えなかった。

 今はまだ、第二層の迷宮が明るい時刻だから、

 もしかすると探索に忙しいのかも知れない。

 なんとも都合が良い。


 と言う事で、早速楯子ちゃんにお菓子を買ってあげた。

 何を食べたいか希望を聞いて見ると、

 ふと目についたアイスが欲しいと言うので、

 取りあえず三段重ねのデカいヤツ。


「おいしー」


 パクパク食べて、凄くご機嫌だ。

 約束を果たせて私も満足だよ。

 楯子ちゃんの様子に、

 うんうんと私が頷いていると、

 エキドナちゃんが物欲しそうにアイスを眺めて、「ぎぅ」と鳴いた。


「うん? エキドナちゃんもアイスが欲しいの?」

「ぎぅ……」


 欲しいようである。

 功労賞で好きなものを買ってあげる、

 と言った事に対する希望として、

 アイスを所望したいらしい。


 安上がりで私は助かるけど、本当に良いの?


「ぎぅ」


 エキドナちゃんが力強く頷くので、

 それならと、新たにアイスを買う事に。

 三段重ねは食べ辛いだろうから、容器に入ってるヤツね。


「ふぃー、あたまがキンキンするー!」

「ぎぅぎぅ」


 ……美味そうに食べる二人を見ていて、

 何だか私も食べたくなってきた。

 そんなに高くないから、大丈夫だと思うんだよね。

 うん。無駄遣いでは無いから、大丈夫だ。


 ――と言う事で、私も自分用のアイスを購入した。

 最大サイズとか言う、五段重ねのヤツ。


 はい、美味しかったです。



■□■□



 アイスを食べ終わった後、

 クラスメイト達の姿が見えないと言う事もあって、

 魔石回収とレベル上げ目的の為に、

 エキドナちゃんと楯子ちゃんには迷宮に行って貰いつつ、

 私が次に向かったのはエマちゃんの所だった。


 何はともあれ、

 ひとまずは顔を見せて、

 改めて御礼とか言わないと行けないからね。


 さてそして。

 しばらくも歩かなくても、

 すぐにエマちゃんの所には辿り着けた。

 施設の中は一見すると広いけれど、

 実際に散策してみると案外狭いのだ。


「ありゃ、お姉さん」

「……えっと、この前は急にごめんね。荷物置かせてくれてありがと」


 言わなきゃいけない事は先に言う。

 変に話が弾んで、言うの忘れてたってなるのも嫌だし。


「別に大丈夫だよ?」


 にぱっとエマちゃんが笑う。

 セクハラはしてくるって事を除けば、普通に良い子だよね……。


「それよりさ、お姉さんモテモテじゃん。やっぱりこの胸かっ、胸なのかっ!」

「ちょ――」


 ――やめて、と言いかけて。

 今回ぐらいはしょうがないか、と私は諦める事にした。

 って言うか、やっぱりセクハラ。


「おほほほ……って、今日は抵抗しないね?」

「まあ迷惑掛けたしね」


 なすがままにされつつ、

 私は深くため息をつく。

 あまり気分が良いものではないけれど、

 それでも今だけは仕方ない。


「……私が前に言ったことを理解していないね? そういう態度は隙になっちゃうんだよ?」

「男相手にはやらないから大丈夫だって。それに、エマちゃんなら今回は別に良いよ」

「なんとも嬉しい事を言ってくれるねぇ……って、お姉さん何か臭い」


 ぎくっ。

 それには気づいて欲しくなかった。


「迷宮の中に居たからだって。言わないでよ。私だって早めに体洗いたいもの」

「それもそっか。……でも、それならよーし一緒にお風呂入ろっか」

「なんで?」

「別に良いじゃん。途中だった部屋探しについてもお話したいなーって思うし」

「ま、まあ良いけど……」


 その話は一緒にお風呂入らなくても出来ると思うけど、

 なんだか今は拒否し辛い。


 私は眉根を寄せつつ、ゆっくりと頷いた。


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