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2層 11話目

 魔王との激闘の跡と言っても遜色無いような、

 それぐらいの地形の変化に戸惑いつつ、

 私はこの力の強さに軽く身震いする。


 凄過ぎるよコレ……。


 この威力を見る限り、

 湖の精霊の力を選んだのは間違いでは無かったのが分かる。

 ただ、現時点で持ちえて良い力では無い気もする。


 だってこれ、

 ラスボスとかその類にも通用するレベルに思えるよ。

 まだ二層目なんですけど……?


「ぎぅ」

「すごーいすごーい!」


 エキドナちゃんと楯子ちゃんが、

 目を瞬かせて興奮する。

 使った私自身ですら信じられないような威力を叩き出したのだから、

 見ていただけの二人の驚き様はそれ以上なのかも知れない。


 しかし……こんなに凄いのに、

 魔力とかが減った感じが無いのが少し気になった。

 精神的にも体力的にも何の喪失感もないのである。

 エキドナちゃんや楯子ちゃんを呼ぶ時ですら、

 魔力が減った感はあるのだけど……。


 二人を呼ぶ魔力の方が消費量が大きいとかだろうか?

 いや、そんな馬鹿な話があるわけない。

 普通に考えて、

 間違いなくこの現象を巻き起こす方が消費がデカい。


 うーん。

 でもそれじゃあどうしてだろう。

 もしかして力の原因が精霊にあるからって事かなぁ?

 あくまで精霊の力を借りただけだから、

 自らは一切の消費をしないとか。

 でもそれだとチート過ぎるよね……。


 ここはちょっと、

 詳しそうな楯子ちゃんに聞いてみよう。


「んー? まりょくへらない? そりゃそうだよー。だってちからをつかったのは、せいれいさんだからね!」


 あ、ありゃりゃ。

 私の想像が当たってしまった。

 どうやらチート寄りの力らしい……。

 

 まあただ、


「でもねー、いずみのせいれいさんだから、みずしかつかえないよ?」


 一応は制限的なものもあるとの事だった。

 湖の精霊の力だから、

 水を機軸にした力のみを行使出来るらしい。

 確かに湖の精霊の力なのに、

 炎とか出せたらおかしいよねぇ。


「それにねー、しゃべれなくなったら、ちからかしてもらえないからね」


 楯子ちゃんから、

 精霊の力の弱点のようなものを補填される。


 なるほど。

 つまりこれは凄い力ではあるけど、

 ネタが割れていれば、

 封じる手立てもいくらでもあると言う事なのだろう。

 

 そう言えば以前に子豚に眠らされてしまった時があったけど、

 ああいう方法を使われたら確かにお手上げだ。

 詠唱を紡ぐ事が可能である、と言う前提のもとで、

 チート級の力を行使出来るだけなのだ。

 だからそういう最悪な状況にだけは、

 陥らないようにしないといけないって事だね。

 油断は禁物だ。


「うっ、うぅ」


 茶メンの呻き声が聞こえる。

 意識を取り戻しつつあるのだろう。


 正直この惨状の説明を求められても困るから、

 もうしばらくの間はお眠してて貰ってた方が助かるけども、

 こればかりはどうにも出来ない。


 さて、どうしたものか……。

 ――そうだ。

 茶メンが完全に意識を取り戻す前に去ろう。

 それが一番確実だよね。


「エキドナちゃん、楯子ちゃん、ちょっと走るよ!」

「ぎぅ」

「おいかけっこー」


 時間があまりないので、

 決まったら即行動である。


 私達はすたこらさっさと走って逃げる。





「……うぅ、う? 僕は助かった……のか? 意識が朦朧とす――なななっ、何これええええ!? 僕が気絶している間にラスボスでも現れたのか!?」



■□■□



 湖からだいぶ離れた所まで来た所で、

 私達は小休止する事にした。


 思えば元々湖に赴いたのも、

 ステータスを確認しようとして、

 休める場所を探しての事だったよね……。

 ようやくだよ。


 周りは相変わらずに森林しか見えないけれど、

 丁度良い朽ちた大木を私は見つけた。

 中が天井のない洞のようになっていて、

 日差しも差し込むからか、

 じめじめしたような感じも無い。


 休むには丁度良さそうな場所である。


「はあ……ようやく休めるよ」

「ぎぅ」

「つかれたー」


 私達は一息をついて、

 へたりこむように座った。


 落ち着いて見ると、

 何だかお腹も空いてきた。

 今すぐにでも施設で食べ物を買いたい所ではあるけど、

 もう少しだけ時間を置きたい。

 二人には悪いけれど、

 あと少しだけ我慢して貰う事にしよう。


「さて、と……」


 すっかりお疲れモードで横になる二人を眺めつつ、

 私はステータスの確認をして見る事にする。


 今現在の私達のステータスは、

 大体次の通りだった。


 ――――――――――

 氏名:小桜 勇気 

 性別:女 レベル:0.9 

 次のレベルまで:250/1870


 動体視力3.95

 基礎筋力1.88

 身体操作1.55

 持続体力2.67

 魔力操作9.52

 魔力許容9.28

 成長水準3.65


 固有スキル 召喚士6.33

 特殊スキル 精霊行使0.50

 ――――――――――


 ――――――――――

 名前:エキドナ 

 性別:メス レベル:1.2(!)

 次のレベルまで:680/1560


 動体視力1.55

 基礎筋力1.40

 身体操作1.00

 持続体力1.60

 魔力操作2.07

 魔力許容2.20

 成長水準0.65


 スキル 暗視1.02 毒牙1.06


 経験値配分 均等

 ――――――――――


 ――――――――――

 名前:楯子 

 性別:女 レベル:0.5

 次のレベルまで:110/780


 動体視力1.80

 基礎筋力1.49

 身体操作1.58

 持続体力1.45

 魔力操作5.00

 魔力許容5.14

 成長水準2.01


 スキル 魔術行使1.05 神兵0.89


 経験値配分 均等

 ――――――――――


 得意分野は違えど私達のステータスは、

 見事に魔力関係よりである。

 ある意味偏ってるねえ。


 と言うか、何かレベルがまた急に上がってる……。

 確か前に見た時は0.6くらいだったハズ。

 そこから0.3も上がっているのだ。


 レベルが上がる毎に、

 必要経験値が増加する事も踏まえると

 急激過ぎる。


 エキドナちゃんと楯子ちゃんを一時的に解き放っていた時間もあるから、そのお陰の可能性もあるにはあると思うけど、でも上がり具合から考えるにそれはゼロに近いでしょう。


 うん、原因は多分アレだよね。

 ウロボロス。


 恐らくはあの破壊に、

 魔物が相当数巻き込まれていたんだ。

 それしか考えられない……。


 レベルが上がるのは嬉しい事だから、

 特に異存は無いけど、

 実感と言うものがまるで皆無って言う……。

 まあしょうがないか。


「……うん?」


 レベル確認が終わり、

 続いてステータスを眺めて行くと、

 自らのスキル欄に二点ほど変化が見えていた。


 まず一点目として、

 召喚士のスキル値が6を超えている。

 つまり、もう一匹召喚出来る魔物が増やせるのである。


 すぐにもう一匹追加した方が良いかな?

 とは思ったものの、

 私は考え直して今はやめておこうと結論付けた。


 楯子ちゃんを召喚したばかりの時は、

 次で子犬か子猫って思ってはいたけど、

 あの時と今では事情がだいぶ違うのだ。


 現在はクラスメイト達から離れたせいもあって、

 召喚するなら、なるべく強いのが欲しい……。

 楯子ちゃんのようなEX魔物が、

 これから先に開放されないとも限らないので、

 その時の為に枠を多めに取っておきたい。


 非常に残念ではあるものの、

 召喚はひとまずお預けである……。



 さて、お次は二点目だ。

 これはスキル名の変化である。

 以前は????だったスキルが精霊行使になっていたのだ。


 これは恐らく、精霊の力を使った事によって、

 無理やりにこうなった可能性が高い。

 元から精霊行使のスキルだったものが、

 使用した事によって数値が上がって判明となった、

 と言う線もあるけど、それだと色々な齟齬が出る。


 だってその場合だと、

 このスキルは精霊と合わなければ、

 一生顕現しないスキルだったって事になる。


 人型スライムは「きっと役に立つ」なんて言い方をしていたけど、

 限定的な運に左右されるようなスキルを、

 普通はそういう風には言わない。

 意地悪な人ならミスリードさせようとして、

 って言うのも考えられるけど、

 彼女はそういう人では無い。


 だからこのスキルは、考えられるとすれば、

 渡した時点では元々どうなるかが分からない、

 如何ようにも変化する下地的なモノだったと仮説する。

 彼女の発言の「後になれば分かる」って言うのも、

 そう考えればしっくり来るしね。


 元々スキルは頑張れば生えてくるらしいけど、

 これがあるとより楽に習得出来るとか、

 そんな感じのモノなんだと思う……。


 彼女にお礼を言う事はもう出来ないけど、

 せめてもの恩返しとして、

 この迷宮の中で光輝さんと言う男性を見つけたら、

 彼女の願い通りに助ける事にしようか。


「ぎぅ」


 私が悲しく切ない思いに浸っていると、

 エキドナちゃんがくいくいと袖を引っ張ってきた。


 ……どしたの?


「ぎぅぎぅ」

「んー?」


 エキドナちゃんは尻尾を器用に動かすと、

 自分自身を尻尾で指しはじめた。


 何かを伝えたいようだけど……。


 うーんと、

 私が今見ているのはステータスで、

 エキドナちゃんもそれは分かっているハズであり、

 その上で自分自身を指しているのだから、

 エキドナちゃんのステータスに何かがあるって事かな?


「ぎぅ!」


 どうやらその通りらしい。

 数値以外には特に変わった所は無いように思えるけど……。

 私は半信半疑になりつつ、

 エキドナちゃんのステータスをつぶさに確認し始めて、

 ふとそれに気がついた。


「うん?」


 レベルの横に!が付いているのである。


「何だろうね、これ」


 不思議に思って詳細を確認して見ると、


 ――レベルが1になりました。進化が可能です。進化先は次項の中からお選び頂けます。――


 そんな文字が表示された。

 レベルが1を超えた事で、

 何やらエキドナちゃんは進化が出来るらしい。

 思わぬ収穫である……。

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