4話目
読みやすい様な改行とか試行錯誤してます。
数分ほど歩くとクラスメイト達の後ろ姿が見えた。
案外早い合流だった。
俺は少しだけ歩くペースを上げる。
すると、どんどんクラスメイト達との距離が縮まって――
「ぷぺっ」
――誰かの背中に顔をぶつけた。
うぬぅ。
よくは分からんが、こいつら立ち往生してやがった。
俺がしかめっ面でクラスメイト達の背中を睨み付けると、一斉に振り向いてこっちを見てきた。
そして、なぜか途端に笑顔になる。
気持ち悪い。
「おい勇気、お前どこ居たんだ! 心配したんだぞ」
「は?」
「いや、お前の姿が見えなくなったって話になってさ、探しに戻らねぇとって皆で言い合ってた所だ」
なるほど、俺が居ない事に気づいた事は気づいたのか。
で、心配をして進むのを一時中断していたと。
なんだ……変な目で見てくるだけじゃなかったんだな。
何か悪い事してしまった気分になる。
気持ち悪いなんて思って悪かった。
「取り合えず凄い心配だから、真ん中に居てよ」
「そうだそうだ。っつか、ぶっちゃけ一番後ろ並んだ時も注意するかどうか悩んだんだけど、言い辛くてさ」
「じゃないと、俺らの眼福にならな――げふんげふん、なんでも無い」
クラスメイトの様子がおかしい。
心配してくれるのは嬉しいけど、俺は最後尾が良いし、何も問題は無い。
次から注意すればいいだけの話だし。
何かこう……心配ではない邪まな何かが混ざってる感じがする。
気持ち悪いなんて思って悪かったって気持ちを撤回しよう。
「いや、今度ははぐれないようにするから、俺はやっぱ一番後ろがいいかな?」
「何言ってるんだよ。良いから早く来なって。こっちは気が気じゃないんだからさ」
確か倉橋とか言う苗字だった茶髪のイケメンに腕を掴まれ、
「ちょっ――」
「いいから」
俺は無理やりにクラスメイト達の中央に並ばせられた。
ちょっと強引過ぎると思うのだが、抵抗出来るだけの力が俺には無い。
女になったせいか筋力も間違い無く落ちてる。
ステータス上も1以下だし。
くそっ。
心の中で悪態をついてみる。
が、今回はどうしようも無さそうだった。
今のところは甘んじて受け入れる他に無いと言う……。
この世界の事がある程度分かる様になれば、
常に全員一緒ってことも無くなるだろうから、
それまでの我慢だな。
今は全体的に情報が足りてないから全員揃っての行動になっているだけだと思うし。
そう遠くない内に一人立ちしなければ……。
俺は割りと本気で自分に誓う。
だって男だらけの中に女の体で一人ぽつん、なんて状況やっぱ普通に怖いでしょ。
今はまだ異世界来たばっかりで、クラスメイト達もそっちにも意識が幾らかは行っているから良いけど、それが落ちついた時の事を考えてみて欲しい。
若い男の性欲は怖いものがあるのだ。
元男だからこそ分かる飽くなきリビドー。
童貞より先に……まあ童貞はもう捨てる事すら物理的に不可能だけど……とにかく、処女を捨てる事になったら、それも強引にとか言う展開になったら多分俺は立ち直れなくなる。
今の所はエキドナちゃんを服の中に隠しては居るけど、まだその力は弱いんだ。
相手が正気であれば牽制や威嚇にはなるだろうが、
性欲に突き動かされた暴走状態にでもなれば、逆にエキドナちゃんがぶっ殺されてしまうかも知れん。
今の状態でエキドナちゃんがやられてしまえば、俺には為す術が無くなる。
俺が一人立ちするのが先か、
クラスメイトの性欲が暴走するのが先かのチキンレースが始まりそう……。
もしも一人立ちが間に合わなかったから……。
……いや、最悪の場合を考えるのは今はやめよう。
ひとまず自分と召還獣のレベル上げに勤しむ事に注視しよう。
「やばっ、胸が揺れたの見えた」
どこからともなくそんな声がした。
背筋がゾワリとした。
駄目だこれ。
チキンレースが『始まりそう』じゃなくてもう既に始まってるわ。
絶対負けない。
絶対屈しない。
「……そんな怖い顔しないで」
倉橋がそんな事を言って来た。
非常に苛立たしくなる。
何が怖い顔しないで、だ。
人の腕を掴んで無理やり列の中心に並ばせた――つまり俺を怖い顔にさせる原因の一つを作ったお前が言って良い事じゃない。
しかも何か知らんがこいつ俺の隣をキープしている。
更に苛立ちが倍増である。
守ってやるぜ的な気持ち悪い事考えてなきゃいいがな。
……こいつ何かムカつくからあだ名つけてやろう。
茶髪イケメンだから茶メンとかで良いだろ。
ふんっ。
「怖い顔? 別にしてない」
「してるよ。まあその色々と戸惑う事が……勇気君の場合特にあるのは分かるよ。でも気にしなくて良いって。ほら僕は他のヤツと違うからさ。好きな時に頼っ――」
「――分かる? 気にすんな? じゃあお前今から女になれよ茶メン」
「いやそれは無理だよ――って言うか茶メンって何?
中華焼きそばか何か……?
まあ何でも良いんだけど、とにかく取り合えず僕が言いたい事は、僕は勇気君を傷つけるような事はしないむしろ守――」
「――うるせぇ話し掛けんなこっち見んな」
何か気持ち悪い台詞の気配を感じたから最後まで言わせない事にした。
絶対言わせない事にした。
もしも無理にでも言い切ったらエキドナちゃんで威嚇する。
茶メンは「参ったな」とか言いながら頭を引っ掻きはじめた。
参ってるのは俺の方だっつの……と思っていたら茶メンが周りから小突かれ始める。
良い気味だ。
「おい倉橋、お前何で俺らのアイドルの手掴んだの?」
「自分がイケメンだからって抜け駆けが許されるとでも思ってんのか?」
「痛っ、痛いって! 暴力禁止、ほら、僕は平和が大好き! ラブ&ピース大好き!」
何がラブ&ピースだよ。
お前が本当に好きなのはア○顔ダブルピースだろ?
その甘いマスクで今まで一体何人の女のダブルピース拝んで来たんだコイツ。
まあ実際どうなのかは知らないし偏見だけどね。
ってか、いつの間にかこいつら俺の事勝手にアイドルにしてやがる。
やめてくれ。
■□■□
それから。
俯きながらも周りからの視線に耐え続け、
列の先頭陣がスライムを屠る度に、
経験値について歯がゆい気持ちにもなりながら、
小一時間くらい進んだ所で洞窟の様相が少し変わりはじめた。
「……分かれ道か」
そんな会話が前から聞こえて、
突如としてクラスの進行が止まった。
今まではほぼ一本道だったのが、
急に入り組み始めるようになったのだ。
分かれ道や横道が幾つもある。
どうやら……本格的に迷宮らしくなってきたらしい。
主人公、クラスメイトにあだ名をつけるのが好きな様です。