30話目
#がう&にぢ
死にた。
死たい。
死にたい。
何で。
何で、私が目に……。
◎月▼にち
殺したい……。
あいつらを殺したい……。
この前、私を犯した連中を殺したくて堪らない。
それを見ていた連中も殺したくてしようが無い。
大事な話があるからと呼び出されて、
付いて行ったら、いきなり羽交い絞めにされて、
複数人に無理やり犯された。
その時は一瞬、何が起きたか分からなくて、
けどすぐにこれは強姦なんだと気づいて、
一生懸命に暴れて、
その度に殴られて、抑えつけられて。
他の人から疑われるのを回避する為か、
顔だけは傷つけて来なくて、
きっと前から計画でもしていたんじゃないかと思う。
……殺したい。
……殺したくて堪らない。
死ねば良いのに。
あいつら全員死ねば良い。
そして――私も死ねば良い。
穢されてしまった私も死ねば良い。
……光輝くん。
…………光輝くん。
光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん光輝くん。
そうだ、光輝くんにはこの事を気づかれないようにしないと。
きっと嫌われちゃう。
汚い女だって思われちゃう。
それだけは嫌。
絶対、嫌。
◆月□日
何で?
何で何で?
何で何で何で?
何で何で何で何で何で?
何で何で何で何で何で何で何で?
おかしいよ。
何でこうなるの?
おかしくない?
何か映像を記録出来るスキルヤツが居たらしくて、
それで私が犯される時の映像を撮られてて、
それを光輝くんに見せたとか言われたんだけど……。
……なで?
なんで?
いみ あからない。
▼月◆日
……もうここに居られない。
光輝くんの反応が怖くて、
顔も見れない。
話しかけられても、
怖くて怖くて無視してしまう。
もうどうしようも無い。
一日中冷や汗が止まらない。
理由は分からないけど、
瞳の焦点が合わなくなって、
ずうっと視界がぼやけたままになった。
駄え。
もう駄目。
私は一人で逃げ出す事にした。
同級生の傍にも居られないし、
光輝くんの近くにも居られない。
必ず殺してやる。
あいつら一人残らず殺してやる。
でも、直接立ち向かっても恐らく勝てない。
男の筋力には勝てないし、
レベルもあいつら程高いワケでは無いし、
スキルも戦えるに使えるようなものじゃない。
どうしよう。
ああ、そうだ。
呪い殺そう。
ここはファンタジーな世界だもん。
きっとあるよ。
呪い、ありょよ。
■□■□
「怖っ……」
日記はまだ途中だったけれど、思わず俺は日記を閉じた。
何か狂気と恐怖を感じる……。
まあ経緯を考えれば、
著者がおかしくなるのも、
仕方がないと言えば仕方ないとは思う。
でも怖いよこれは……。
「男から襲われておかしくなってしまった、か……。俺からすれば、他人事じゃあないよね」
著者の身に起きた事は、
俺にとっては可能性のある話だ。
現実に襲われかけたし。
もっとも、この女生徒がおかしくなったのは、
襲われたからってだけじゃなくて、
光輝くんへの気持ちとかも関係はしてるとは思うけど。
何せ無理やりに犯された上に、
そのことを好きな人に映像つきでバラされるとか、
酷いを通り越して鬼畜の所業だよ……。
うーん。
俺も気をつけないと。
後者はともかく、
前者は既に襲われかけた事実があるから、
十分にありえるし。
しかしそれにしても、「呪い殺す」、か。
心に負った傷が、
取り返しがつかないくらいに膿んでしまったんだね……。
何だか同級生達から離れた後、
怪しげな呪法とか探してそう。
「……ん? 怪しげ?」
そう言えばこの部屋にあるモノって、
怪しげな魔術師とかが持ってそうなラインナップだなあって、
そんな第一印象だった。
……まさか、ね。
そうだよ。
ありえない。
人が魔物になるなんて。
だからきっとこれは、
人型スライムが迷宮内で落ちてたのを、
拾うか何かしたんだよ。
それでこの話は終わり!
「ぎぅ」
さて、良いタイミングでエキドナちゃんが戻ってきた。
何か見つけた?
「ぎっ」
エキドナちゃんが首肯する。
どうやら成果アリのようだ。
くいくい、と裾を引っ張ってくるので、
取り合えず着いて行く事に。
エキドナちゃんはするすると器用に、
床にぶちまかった道具やら紙やら避けながら、
角に押し付けてあるように設置されていた机の下に潜り込んだ。
「んー? 机の下に何かあるの?」
眼を細めながら俺も机の下に潜り込んで見る。
するとそこの床に、取っ手のようなものがついているのが分かった。
何やら気になるので、よいしょよいしょと机をどけて、
その取っ手を引っ張って見る。
「何だろねー。……おおっ」
取っ手のある面が外れてその中から出てきたのは、
地下に続くハシゴだった。
着地点までの深さはあまり無いようで、
床面がここからでも何とか見えるくらいである。
目を凝らして良く見ると、
着地点の三方が壁で、
残り一方に向かって一直線に進むタイプの道のようだった。
……これ、降りて進んでも大丈夫かな?
確認の為に、ちらりとエキドナちゃんを見てみると、
ゆっくりと頷いていた。
特に危険は感じないらしい。
「うーん……」
どうしよう?
いや、エキドナちゃんが大丈夫って言ってるんだから、
まあ降りても大丈夫でしょ。
■□■□
ハシゴを降りた先の一本道は、
狭くてひんやりとした空気が漂っている。
如何にも地下道って感じ。
ただ、ちょっとだけ普通ではない、
幻想的な現象が起きても居た。
壁に松明のような明かりは無いけど、
確かにこの道はハッキリと視覚で認識出来るのだ。
壁や地面に埋まっていたり、落ちている小石が、
爛々と輝いて明かりとなっているからである。
「きれい……」
思わずそんな言葉すら出てくる。
ずっと見ていても、多分飽きないと思う。
それぐらいに美しい光景だった。
もっとも、いつまでも眺めていられる程に俺は暇では無いし、
頭の中がお花畑ってわけでも無い。
この幻想的な空間は、
自身の記憶の中にしまい込む事にして、
俺は先に進む。
さて、この一本道の距離は短かったようで、
一分かそこら歩いただけで、
俺は用意に最奥まで辿り付けた。
道中には特殊な仕掛けも無ければ、
脅威となりそうな魔物すら出て来ない。
安全な道のりでしたよ。
さて、袋小路になっていたこの道の突き当たりには、
小さな台座が一つあった。
そして、その台座の上に、
指輪が一つだけ置いてある。
何だか、お宝の予感がした。
ようやくアイテム入手。
長かった……。
そして一層も終わりに近づいてます。