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25話目

 クラスメイト総出で迷宮内を進む。

 すると、そのうちに世間話を挟むクラスメイトがそこそこ出始めて、

 喧嘩越しな雰囲気は一時なりを潜めはじめた。


 もちろん、いつ火がつくか分からない、

 そんな爆弾が撤去出来たワケでは無いので、

 いつ爆発するかは定かでは無い。

 まあとは言っても、どんなに早く暴発するとしても、

 DQNと邂逅してからって所だろうけど。


 ……ところで、全員で揃って進むなんて、

 まるでこの世界に転移した直後を思い出すかのようだった。

 

 勿論、あの時と全く同じってワケでは無いけどね。


 例えば、いま一番先頭を歩いているのは、

 道案内も兼ねているので、DQN小林と同じ班だったヤツなんだけれど、

 こいつは陰キャ側の人間であるので、あの時は真ん中よりやや後ろの辺りにいたと思う。

 ゴリも最初の頃と違って一歩引いたような位置に居るし。


「……しっかし、ボスかあ」


 後頭部を手で抱えながら、俺はそんな事を呟いた。

 クラスメイトの人間関係については、

 ぶっちゃけ俺がどうこう出来る問題でも無いので、

 なるようにしかならないと思う。

 だから、それより重要そうな、

 この後に待ち構えているであろうその存在について、

 考えを巡らせる事にするのである。


 ……はてさて、うーん。

 件のスライムは人型だったらしいけれど、

 どれぐらい強いんだろうかね。


 そう言えば、今までに邂逅したスライムは、

 その色なんかで特性も違ったりしていた。

 なら今回のスライムは、人型である事で、

 何かしらの特徴を得ているとしてもおかしくはない、

 そう思えてならないのだ。


 炎を吐くスライムも居れば、

 モジャ男の時のように、体の内側に入り込んでしまうのも居た。

 それを考えると、決してスライム如きと楽観視して良い相手じゃあない。


 ……エキドナちゃんで勝てるかなあ?

 結構ハイペースでスライム狩ってくれてた所を鑑みるに、

 案外簡単に倒してくれちゃうような気もする。


 まあ、今はたらればの話は意味が無いか。

 その前にDQNが倒してしまってる可能性もあるわけだし。

 そういや、DQNはスキルに自信アリだったらしいけど、

 どんなスキル持ちなんだろう?


「……どうかしたのか?」


 隣に居た二段が話しかけてくる。

 ちょっとビックリしてしまったが、

 そうだった、実はさっき俺から頼んで、

 二段には隣に居て貰う事にしてた。


 一応エキドナちゃんを服の中には潜ませてるけど、

 念のためにとこいつにも隣に居て貰おうと思ってね。

 ゴリは何か頼める雰囲気じゃない。


 さて、二段に対して誤魔化すか本当を言うかだけど、

 ここは素直に言おう。

 別に隠すような考え事じゃないし。


「いやあ、DQNのスキルって何だろうなって思って」

「DQN?」

「小林」

「ああ、なるほど」


 んんん?

 何だか反応薄いなあ。

 もしかして知ってるのかな?


「俺も又聞きしただけになるが、それでも良いなら……教えるぞ」


 知ってたのか。

 まあ教えてくれるなら素直に教わりますがね。


「うん。教えて」

「小林のスキルは【欺瞞の格上アンダーエスティメイション】って言うらしい。効果は確か、一時的に相手を自分以下のステータスに出来るとかだったハズだ」


 敵を一時的にでも自分以下に出来るスキルか。

 つまり格上を雑魚に出来る能力って事?

 使い所を間違えなければ強力……なのかな。

 とは言え、ステータスが低くても自分より強いの出てきたら、

 えらい事になりそうだけど。


 でも……うーん、

 確かにそれなら、イキっちゃうのも分からないでも無いかな。

 安心感がピカイチでしょ。

 このスキルならって思っちゃうよねえ。


「凄いんだか、凄く無いんだか、いまいち分からないよね」

「凄いことは凄いだろ。ただ、力の大小ってのは大きく勝負に影響を与える事は与えるが、それでもやはり勝つか負けるかは最後まで分からないもんだ。そういう意味では、役に立たん」


 勝つか負けるかは最後まで分からないか。

 確かにそれはそうだ。

 あのエロイムだって、掴む事さえ出来れば、

 俺ですら瞬殺出来るくらい弱かったけど、

 人の体内に入るって言う荒業を持ってた。

 助けてくれる人が居なければ、

 あれでモジャ男の命が終わりだった事を考えると、

 まあ二段の言う事はその通りなんだろう。


 ……しかし、不思議な事もあるものだ。

 二段はどちらかと言うと、

 あんまりコミュニケーションが得意そうに見えない。

 それなのに、そんな二段には情報が入っていて、

 俺には今のいままで入って来なかったのだから。


 とは言え俺も、

 クラスメイト達とは互いに距離感がちょっとズレちゃった所があるので、

 そのせいでもあるけども。


 まあ考えても仕方無いんだけどさあ。


「――しかしまあ、お前も大変だな」


 突然、二段が同情したような視線を向けてくる。

 いきなり何だよう。


「突然なに?」

「いやあ、さっきもいきなり話振られてたり」

「そうだね」


 委員長のくそ眼鏡なあ。

 そういや実は委員長、

 さっきからこっちをチラチラ見て来てる。

 面倒だから俺は気づいてないフリしてた。

 委員長のこの視線は、

 申し訳ないくらいは思ってるからこその行動だと、

 個人的には思いたい。

 もしも思ってなかったら最悪だなアイツ。


「……その前は襲われかけたり」

「子豚? 失禁したまま倒れてた所までしか覚えてないけど、そういやその後どうなったの」

「ぼっこぼこにされてたぞ。ほれ、あそこに居る」


 二段が指を刺すと、

 そこには顔がパンパンに腫れ上がった子豚が居た。

 子豚は焼きたてのパン見たいな顔に笑顔を貼り付けながら、

 何故かケダモノや魚人と仲良くお喋りしている。


 顔を見る限りでは、どうやら子豚はあの後も随分やられたようだ。

 しかしそれにしてはメンタルの復活が早いようで、

 楽しそうにお喋りしてるのを見ると、それがちょっと癪には障るけども……。

 俺としては、ずっと落ち込んだままで居てくれれば最高だったのに。


 ところでちょっと疑問なんだけど、

 ケダモノと子豚って仲良かったっけ?

 この世界来る前はそうでも無かったと思うんだけど、

 いつの間に。


 変な事企ててなきゃ良いけど。

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