24話目
8万~10万字くらいまでに、区切り良く第一層をクリアさせる予定です。
あくまで予定なので実際どうなるかは分かりませんが……。
何と言うかうちのクラスって、
何かこう一枚岩じゃなくて、
鍔迫り合いのような話し合いが、
現在進行形で結構長いこと続いている。
早く結論出しなよって思うけど……。
「でも本人が大丈夫って言ったんなら、大丈夫なんじゃねぇの」
「勝手に一人で特攻しただけだろ。自己責任だよ自己責任」
「ハァ? なら俺らだけで小林ん所行くだけだ。――全員で仲良く足並み揃えるなんてもう出来ねぇしやりたくもねぇ! 俺らは抜けて勝手にやらせて貰う」
「……俺は小林側につこうかな。ここの連中の為にやっても、結局見捨てられんだろ? ならちゃんと仲間してくれるヤツの所に行きてぇ」
「ちょっと待てって。お前ら何も話をそんなに一足飛びに持って行かんでも……」
「――中立気取ってんじゃねーよ!」
DQNの仲間達と、DQNが居た班の連中との対立がヒートアップする。
そしてどちらの肩を持つかで、クラスが二つに別れ始めてもいた。
ついでに、中立を保とうとすればどっちつかずのヤツとなじられる仕様。
……うーん。
この世界に来る前までは、
そこそこ仲良くやれてた感じはあったハズなんだけど、
どうにも異世界に来てからと言うもの、様子や調子がおかしい。
襲われかけた俺が言うのだから、間違い無いよ。
まあ所詮は平和であったからこそ成り立った、
仮初の連帯感でしか無かったと言う事か。
「……はぁ」
この状況を上手く纏められそうな、
頼みの綱のゴリはため息を吐いていた。
だいぶグロッキーな様子である。
もしかして寝ていないのか、
あるいは精神的な疲れがピークなのか。
頭を抱えたまま、うんともすんとも言わない。
黙らないとスキルでとっちめるぞ、
くらいの事をゴリが言えば、大多数は黙ると――いや、
その場は凌げても、
余計な反発心を持たせるだけになりそうだね。
恐ろしいスキルではあるけれど、
逆に恐ろしいからこそ、頻繁に脅しに使ってたら、
どう思われるかなんて日の目を見るより明らかだ。
まあいずれにしても、
この話はどうにか纏めないとならないんだろうけど、
ゴリはダウンしてる。
もしかしたらこのままだと、
クラスが分断して散り散りになってしまうのは、
もはや避けられないかも知れない。
きっと誰もがそう思った。
その時だった。
ふと一人の眼鏡が争いの間に割って入ってきた。
「――まあ、皆落ち着いてくれ」
どこか理知的な雰囲気を発しているこの眼鏡は、
クラス委員長だ。
そういや居たね、委員長やってた男が。
意外と影が薄くて――と言うか、他の面々が濃すぎる上に、
何のかんの言ってゴリがクラスを纏めてたから、
出番が全く無かったけど。
ともかく、そんな委員長の登場に視線が一斉に集まる。
「とにかく、今は小林の所まで行こう。本人が大丈夫ならそれで良し、そうじゃないなら助ける。これで良いだろ? 何でそれで良いってならない。今のお前らは動物園の猿と何も変わらないぞ?」
争いをひとまず棚の上に置けと、
委員長はそう言いたいらしい。
至極まっとうな意見だとは思うが……、
しかし委員長は、クラスメイト達から言葉と石を投げつけられた。
「うるせぇクソ眼鏡!」
「ちょっ――俺の話ちゃんと聞いて――ひぃいいい」
「お前は黙ってろ!」
「何で――」
何でって、
そりゃあ誰もがカッカッしてる中で、
不用意にどちらも煽るような言葉出したら、
そうなりますよ。
特に動物園の猿って所がもうね。
委員長、肩書き通りに頭良さそうな見た目しているんだけど、
本当に見た目だけかも知れないな。
「やめ、やめるんだ! 今は争っている場合では――い、石を投げるのは良い。ただ、め、眼鏡だけは避けてくれ!」
委員長、何か眼鏡を大事そうに庇っているが、
今はそれを気にしている場合だろうか?
いや、この世界で眼鏡があるかどうか、
まだ分からないもんね。
もしも唯一無二のアイテムだったら、
壊れた時に大変な事になるだろうし。
まあステータスが上がれば、
裸眼視力が回復する可能性あるから、
別に壊れても良いんじゃねっては思うけど。
「く、くそっ。なんでこいつらはこうも愚か――ん?」
ふと、委員長の目が俺の方を向いた。
何だろう。
嫌な予感がする。
「いつの間に……。勇気、戻ってきていたのか。そうだ! 頼む勇気!! お前の言う事ならこいつらも聞くだろ! 後は任せた!」
委員長のヤツ、
俺の事をめざとく見つけたと思ったら、
丸投げしてきやがった。
何かデジャウを感じる……。
って言うか、隠れて様子を見守ろうと思ってたのに、
やめてよぉ。
「……おっ、勇気だ」
「マジだ。別ん所で休んでるって聞いてたけど、戻って来てくれたんか」
「何か勇気から良い匂いする……」
「そうだな。まあ、勇気の言う事なら、取りあえず一旦は聞くか」
クラスメイト達は俺の存在に気づくと、ざわめき始める。
次第に先ほどまでの喧騒は息を潜め、
静寂が辺りを包み始めた。
なるほど……。
俺の判断なら聞きますよってか。
でもこれがデジャウなんだよなあ。
探索班と待機班に分けた時の事を俺は忘れて無い。
これが、あくまでポーズだけなのは分かりきってるのだ。
言う事を聞くのは最初だけ形だけで、
こいつら結局は聞かないんだよ。
ヤだなあこういうの。
って言うか、あの時に俺が判断するの今回だけって言ったじゃーん。
ぶっちゃけかなり気落ちする。
でも、振られてしまったからには、
何か言わないと行けない。
仕方が無い……。
「取りあえず、全員で向かおうよ」
ぽつりと呟くように出た俺の言葉には、
特に深い意味は無い。
件の魔物がもしもボスモンスターなのだとしたら、
次の階かステージか……言い方はとにかく、
先に進めそうな相手には違い無くて、
それなら、倒せるなら倒した方が良いし、
無理そうならボスの情報だけでも入手したい所だってだけ。
クラスメイト達の雁首揃えれば、
戦えるスキル持ちもそれなりに居ると思うし、
まあ何とかなるでしょ。
無理なら逃げれば良い。
DQNの事は心配じゃないのかって?
だってそんなに仲良いワケじゃないし、
別にどうでもいいけど……。
「どうせボスは避けて通れないんだからさ。散り散りになるにしても、今回の件が終わってからで良いでしょ」
俺は続けざまにそう言う。
すると、一瞬悩んだような素振りを見せつつも、
クラスメイト達は一応は頷いてくれた。
「それもそうだな」
「全員一緒はこれから先無理かも知れねぇけど、今回だけなら」
「取りあえず、行くだけ行こうぜ」
本当疲れるけど、
まあとにもかくにも、全員で向かう事が決まった。
……ちなみに、俺に纏め役を丸投げしてきた眼鏡だけど、
ちらっと横目で様子を見てみたら、
安堵のため息つきながら、ジャージの袖で眼鏡拭いてた。
ちょっとくらい、申し訳なさそうな面しろよ……。