表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/58

18話目

 自分が強くなるにはどうすれば良いのか。

 それについて、少しのあいだ悩んで色々考えて見たけれど、

 ひとまず、装備を整える、新しいスキルを得る方法を見つけるか考える、

 この二つを中心に据える事にしてみた。


 もちろん、レベル上げも重要だから必ずやるけど、、

 それは、召喚士のアドバンテージであるエキドナちゃんを使えば、

 自分が動かなくても出来る事だし……。


 正直な所を言うと、レベル上げだけに頼りきりになるのは、

 何だか不安になってきている。


 もしも人間や魔物に襲撃されたり、

 鹵獲されそうになった時に、

 何とか対処する術が欲しいってワケで。


 この世界に来てまだ一日と経って無いけれど、

 悲しい事に、そう考えた方が良いような気がしてしまう、

 そんな経験を俺は積んでしまった。


 思えば俺も、前から一人立ちしたいと考える割には、

 何とか出来るようになったら、

 レベルを上げたら、

 なんて漠然としすぎた事を目標にしてしまっていた。

 自分自身に今何が必要かなんて、考えて居なかったのだ。


 でも、それじゃあ駄目だ。


 具体的な目標が必要なんだよ。

 そうしないと、どこに向かっているのかさえ分からなくなる。


 もちろん、別のやり方がある事も分かるよ。

 自分だけがクラスメイトの中で女だと言う事を利用して、

 上手い具合に貢がせるとか。

 幸か不幸か、俺はそれなりに整った容姿の女になっている。

 だから、出来なくは無いのだ。


 でも、そんな事をしていたら、

 最後には体を……なんて事になりかねない。

 それだけは絶対嫌、と言うより無理。


 そもそもそれ以前に、貢がれる事貢がせる事に慣れてしまったら、

 人間として終わってしまう気もする。


 とは言え、1、2、3でハイ、って感じに、

 今すぐにはどうこうするって事も出来やしない。


 今の所はエキドナちゃんに頼る他は無いけれど、

 少し焦りつつ、けれど冷静に、自分でも戦える力を獲得して行きたい。



■□■□



 結構時間が過ぎた。


 クラスメイト達もうつらうつらとし始めて、

 壁を背にして、本格的に寝始めるヤツも出てきている。

 正直、魔物がいつ出るとも限らないのに、よく眠れるなとは重う。


 まあ、お金が無いから施設の宿に泊まれない、

 でも休まないワケにも行かない、って所なんだろうけれどね。

 最初の探索班の中には、

 魔石を集めていなかった奴らも多かったようなんだ。

 でも、魔石がお金に出来るって言うのは、

 施設という存在があってはじめて分かった事だから、

 仕方が無いんだけどさ。


「ぐがっ……」


 いびきをかきながら鼻ちょうちん作ってるヤツを見て、

 何だか俺も眠くなって来た。

 地面にそっと横になってみたら、少しひんやりしてて気持ち良さげ。

 少し疲れていた事もあって、このまま目を瞑ればすぅすぅと眠れそうな気さえしてくる。


 ――まあ、あくまで気がすると言うだけで、ここでは寝ないけどね。


 エキドナちゃんが集めてくれる魔石の量によっては、

 俺はもしかしたら施設で眠れるかも知れないので。

 地面で寝るのは、あくまで最終手段です。


 だって、魔物の危険もあるし、地面で寝ても疲れ取れなさそうだし。


 まあ、イザとなれば贅沢は言わないけれど、

 何とかなるかも知れない可能性があるのに、

 それを無視して、と言うのはしたくないんだ。


「……そろそろ、エキドナちゃんに戻ってきて貰おうかな」


 睡眠について考えた所で、エキドナちゃんを解き放ってから

 良い時間が経っていた事に俺は気づく。

 ここは一旦戻して、収穫を確認して見る事にしよう。


 俺は早速エキドナちゃんに帰還して貰った。

 すると、体に括りつけたポーチがパンパンに膨れていた。


 経験値の確認をちょこまかしていたらから、

 けっこう倒してくれてたのは分かっていたけれど、

 直接その成果を見ると改めて感無量だ。


「よし、一旦換金しに行こうか」


 エキドナちゃんが服の中にするすると入って来たので、

 異空間には仕舞うのはひとまず後回しにする事にして、

 俺は施設への扉を出現させた。


 その時だった。


「……【甘美なる催眠(ヒプノティ・スナック)】」


 ふと、甘い匂いがした。


 焼き菓子のような匂い。


 誰もお菓子なんて持ってないハズなのに、

 確かにその匂いが漂って来たのだ。


 それから突然、

 頭の中に薄ぼんやりと霧が掛かってくるような感覚に陥った。


 何だろう。

 やっぱ眠い。

 ここで眠っても、取りあえず別に良いと思う。


 あれ?

 何だろう。

 なんで俺はそんな事、思うんだろうか。


 魔石をお金に換えて、

 宿に泊まれるかどうか確認して、

 それで駄目だったら、

 仕方ないけど地面で寝れば良いだけなのに。


 ううん。

 眠って良いんだよ。

 だって、疲れてるから。


 誰かが近づいてくる。

 縦に短くて、横に大きい。


 ああ、そうだった。

 こんなクラスメイト居たなあ……。


 名前何て言ったっけ?

 ああ、駄目だ、眠くて思い出せないや。


 うつらうつらとして、

 俺の意識はそこで途絶えた。



■□■□



「いってえええ、くそっ! この蛇!」

「ギュウウ!」

「くそったれ、勇気ぃ……蛇は経験値稼ぎに放してたんじゃなかったのかよ! 折角スキル使って襲おうと思ったのにぃ……触る事すら出来やしねぇ!」

「ギッ!」

「いだだっ! いだい゛っ!!」


 誰かの悲鳴が聞こえて、

 俺はハッとして覚醒した。

 慌てて周囲を確認すると、そこには驚くような光景があった。


 エキドナちゃんが、クラスメイトの一人に噛み付いて居たのだ。


 え?

 何が起きてるの?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ