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12話目

 不安が的中してしまった。

 エマちゃんが戻って来た時、手にしていたそれを見て俺はそう思った。


 淡い桜色のそれは、すけすけでは無いけれど、

 どこかセクシーさを感じさせるレースとフリルがあしらってあった。


 これは、初心者の俺にはちょっと難易度が高いと思う。

 唯一の救いだったのは、面積が狭くは無く広めだった事だろうかね。


「可愛い柄でしょ? お姉さん、あんまりきわどいの好きそうじゃないと思ったから、妖婦のブラ合うかなーって思ったんだよねえ。フルカップだから、そんなに胸の大きさを強調するワケじゃないし。頑張らなくても既存在感ある胸だし」

「そ、そう? でもその、色とかが」

「……可愛い色だしデザインだよ」

「そうかも知れないけど、黒とかそういう色で飾り気の無い方が……」


 大人っぽくて落ち着いた色の様な気がするんだよね。

 でも、そんな俺の考えと現実は違うらしい。


「え? 黒? 逆に目立つって言うか、随分攻めた色だと思うけど……」

「そうなの?」

「そうだよ。黒とか赤とかもだけど、えっちなお姉さんとかが良く着けてる攻撃的な色だと思うけど」


 確かに言われて見ると、テレビに出たり雑誌に載ってるセクシー女優とかって、黒いのとか赤いのとか着けてたような気がする……。


 ……そうか、黒ってえろいのか。


「こういう桜色とか白とか、デザイン間違えなきゃ女の子だなーって色だよ。間違えると黒以上のスケベ下着になるけど」


 な、なるほど。

 何か良く分からないけど、説得力があるような気がする。


「えちえちなのが良いなら、別の持ってくるけど……」

「待って! えちえちなのは要らないです。それが良いです……」


 俯きながらも、俺はエマちゃんの腕を掴んでなんとか食い止める。


「なら良かった……。じゃあ、これについてる効果について説明するね」

「効果……? 何か効果がついてるの?」

「うん。まずこの下着はちょっと特殊で、どの女性にも合うようになってるんだ。自動でサイズが変わるから」


 変な効果じゃ無さそうで、ほっと一安心。

 もしも誘惑とか魅了って言葉が出てたら、投げてた自信あるよ。


「それともう一つが、防酸かな。多少の酸じゃ溶けない」

「防酸……それって何か意味あるの?」

「酸攻撃してくる魔物と出くわした時とか、絶大な効果あるんだよ! 服も下着も溶けてボロボロです、大事な所も隠し切れません、そんな状態で迷宮逃げ回りますって嫌でしょ? せめて下着が無事なら、恥ずかしいだけで済むけど」


 言われて見ると、この先そんな魔物が出てくる可能性もゼロでは無いよね……。

 下着姿も十分恥ずかしいとは思うけど、それでもマシなのは確かだ。


「……でも、服だけ溶けて下着が無事って、それはそれで男から見るとかなりエロい見た目になるそうだけどね。だからこそ妖婦のブラっていう名前なワケで。これは教えなくていいか」


 エマちゃんがブツブツと何かを呟いているようだけど、

 上手く聞き取れなかった。

 大した事言ってないだろうから、まあ良いか。


「はいはい、じゃあ着けて見てー」


 急かされて、早速上下ともに着けてみる。

 慣れないからちょっと手間取ったけど、なんとかなった。


 さて、せっかく着て見たのだから、

 今の自分がどんな感じなのか確かめて見よう。

 ちょうど試着室の中に姿鏡があったので、前に立ってみる。

 するとそこには、美少女……と言うか、美女と言った方が良い、そんな女がいた。


 さらりとした長いセミロングの黒髪に、小さく整った輪郭、それに通った鼻筋と少し垂れ目がちの瞳が絶妙なバランスで配置されている。

 それとなく存在感を放つ大きめな胸と、

 すらりと伸びた肢体も、大人っぽい女性らしさを感じさせていた。


 自分の見てくれを直視して思う。

 持ってきてくれた下着が可愛い色柄のでよかったな、と。

 これがもしアレな下着だったら、

 多分本当にやばいくらいエロそうな女にしか見えない。


 う、うん。

 とにかく、自分でも驚くくらい美女だった。


 そういや、鏡が無かったから顔なんて確認出来なかったし、

 足の長さとかもジャージだから分からなかったもんなあ。


「取り合えず、大丈夫そう?」

「うん。ありがとう。でも、本当に良いの? これ高いんじゃ……」

「定価なら340,000くらいする」


 俺の所持金のざっと百倍の金額もするらしい。

 思わず俺は目を丸くする。


「な、なんか悪いよ。やっぱりこれは――」

「良いの。私も楽しかったから。……その、周りにこういうお話出来る人居なかったの。他のお店に居る女の人とかでも、どんだけ若くても中年くらいだもの。歳が近そうな女と楽しくお話出来るのは貴重なんだって」


 まだ他のお店は入って無いから分からないけど、

 若い女性は全くと言って良いほど居ないらしい。

 だからつまり、俺と話が出来て楽しかったと、そういう事を言いたいようで。

 薄く微笑んでいる所を見ると、どうやらそれは本音のようだ。


 しかし……歳が近そうと言うって事は、見た目よりは上なんだろうけど、

 凄く歳をとっているってワケでも無いんだ。


「何回も言うようで悪いんだけど、だから代わりに、ちゃんとうちを贔屓にしてね?」

「……うん。分かった」


 俺はジャージの上着を羽織ながら頷いた。

 お金が出来たら、また買い物をしに来ようと心に誓って。


 ってか、さすがに替え無しで一着はヤバイから、

 結構早くまた来る事になると思う。



■□■□



 下着を買うだけだったのに、

 ちょっと時間が掛かってしまったかも知れない。

 

 二段やゴリ達を待たせてしまっただろうか?


 それとなく悪い事をしたような気分になったので、

 俺自身ちょっとお腹が空いていた事もあって、

 途中で飲食店によって食べ物を全員分買った。

 ひとつ100くらいで買える、フランクフルト見たいな食べ物だ。

 

 ちなみに、ケダモノの分は近づきたくないから無しにしようかと一瞬思ったけど、さすがにそれをしてしまうと、俺の性格が悪いように見えるからやめた。



 徐々に入り口に近づき、班員の姿が見えてくる。

 待ちくたびれてるのが傍目から見ても分かる。


「……随分時間が掛かったな」

「え? そんな掛かった? 五分くらいでしょ?」

「いや、一時間以上は掛かってたぞ」


 ゴリが渋い顔をしていた。

 二段も目を瞑って瞑想してる人みたいになってて、

 ケダモノ達は足踏みしてた。


「まあまあ、食べ物買ってきたから、これで許してよ」


 俺は自分の分を取り出して頬張りながら、順々に配って周る。

 ゴリ達はなんだか拍子抜けした見たいになりながらも、

 やれやれと受け取ってくれた。

 許してくれたようで何よりです。


 さて、最後にケダモノにも渡そう。


「ほらっ」

「……んだよ。俺の分まであんのかよ。いらねっ」


 何言ってんだコイツ。

 俺の性格が悪く見えちゃうだろ。

 良いから受け取れよ。


「仲間はずれは嫌でしょ? さっきの事は、俺もう忘れてるから」


 面倒くさいから強引に受け取らせて、俺はぷいっと横を向いた。


「あっ、おい……」

「さー、じゃあ行こー」

「そうだな。ここの事、他の連中にも教えてやらないといけないしな」


 自分自身の指に嵌ってる指輪を見ながら、ゴリがそんな事を言った。

 どうやら、ゴリや二段達も指輪はちゃんと貰っていたようだ。

 確かに多少は謎が残る施設だけど、有用なのは間違い無い。

 全員で共用すべき所だと、ゴリとかは多分そんな事思ってそうだね。


 独占は出来なさそうだけど、仕方ない。


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