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冬の音

作者: IRENE

 雪がふると音はしないはずなのにシンシンやシトシトといった音が聞こえてくる気がします。

 ですが、とおいとおい昔は雪がふってもシンシンもシトシトも聞こえてくる気はしなかったそうです。

 

このお話はとってもとおい昔の冬のお話。


 あるところに、春・夏・秋・冬、それぞれの季節を司る女王様と国をおさめる国王様がおりました。

 女王様たちの仲はたいへん良く、とっても仲良しでした。

 そんな女王様たちにはとっても大切なおしごとがありました。

 それは、女王様たちは決められた期間、交代で塔に住むというおしごとでした。

 そうすることで、この国にその女王様の季節がおとずれるのです。


 ところがある時、いつまで経っても冬が終わらなくなりました。

 冬の女王様が塔に入ったままなのです。


 冬の女王様が何で塔に入ったままなのかはわかりません。

 前の日までみんなで楽しくおしゃべりをしていましたが、今日は1言も話てはくれません。


 このままでは辺り一面雪におおわれ、いずれ食べる物も尽きてしまいます。


 国王様や他の季節の女王様たちは、いっしょうけんめい冬の女王様に塔から出で来てもらえるように話かけましたが、冬の女王様はぜんぜん出て来てくれません。


 こまった王様は自分たちだけでは手におえないとして、助けを求めるお触れを出しました。


【冬の女王を春の女王と交代させた者には好きな褒美を取らせよう。

 ただし、冬の女王が次にめぐって来られなくなる方法はみとめない。

 季節をめぐらせることをさまたげてはならない。】


 国中に出されたこのお触れは千里を駆け巡り、色々な人がわれこそはとふるいたちました。


 さいしょのころはおおぜいの人たちが毎日かわるがわる冬の女王様がこもっている塔をおとずれるました。


 商人は毎年季節を巡らせてくれれば、世にもめずらしい宝石を毎年献上すると言い。


 語り手は毎年季節を巡らせてくれれば、世界中の様々な話を冬の間語って聞かせると言い。


 司祭は国中のみんながめいわくしていることを女王様に話つづけ、早く塔から出てくるように言い。


 隣国の王子は女王のせきにんをはたすのだと言い聞かせました。


 他の季節の女王様はなやみがあるならば話を聞くから塔から出て来てほしいと言い。


 王様も何度も塔に行き、女王様に塔から出て来てほしいと言い続けました。


 ……ですが、誰が言っても女王様は塔から出てきてくれません。

 それどころか、ますます、塔にこもってしまいました。


 そうして、冬の女王様のこもっている塔をおとずれる人たちが1人、また1人と少なくなって来てしまい。とうとうだれも塔に行かなくなりました。


 冬の女王様の所にだれも行かなくなってからしばらくたった、そんなある日のこと、子供達が塔にやってきました。


 そして、子供たちは塔にあるまどに向かって大きな声で言いました。

「冬の女王様、あ~そび~ましょ~う」


 すると女王様が窓辺に来ました。

 ……しかし、それだけでした。


 子供たちは女王様が自分たちを見ているだけで、いっしょに遊んでくれそうに無いことがわかったのか、しばらくすると子供たちだけで遊びはじめました。


 遊びは雪合戦でした。

 子供たちはしばらく雪合戦をして居ましたが、飽きたのでしょう、塔のまわりを探検しはじめました。


 しばらくして、子供たちは凍っている池を見つけました。

 すると、子供たちの1人が池に落ちてすべって行きました。

 それを見ていた他の子供たちも助けようとして滑ってしまいました。

 子供たちは最初はびっくりしていましたが、顔を見合せると笑顔になりました。

 そうです、滑るのが楽しかったのです。


 そうして、皆で滑っていると池のそばに女王様が立っていました。


 それに気づいた子供たちは女王様の手をとっていっしょに滑りはじめました。

 池の上をスイスイクルクル、ときどきころんだりとみんなで楽しく滑りました。


 夕方になり王様が女王様の様子を見に来ると、女王様が子供たちといっしょになって雪で何かを作っていました。

 今なら女王様と話が出来ると思い王様は女王様と子供たちに近いて行きました。


 王様は女王様に何で塔から出て来たのか聞きました。

 すると、女王様は子供たちが楽しそうに遊んでいたからだと言いました。


 王様は次に女王様に何で塔から今まで出で来なかったかを聞きました。

 女王様は言いました。

 春は桜をはじめとしてたくさんの花たちが咲きほこって、冬がおわったことをお花見しながらよろびあう。

 夏は海で海水浴やプールで楽しく遊んで、夜は花火大会などのおまつりがある。

 秋は運動会などで体をうごかしたり、色とりどりにそまった山やきれいなお月様を見たり。

 他の季節は楽しそうな笑い声が聞こえるのに、冬は全然聞こえない、しかも雪は音を吸い込むからさみしくてたまらなかった、と言いました。


 王様はやっと女王様の思いが分かりました。

 女王様はただ、冬を皆に好きになって欲しかっただけなのです。


 王様は女王様の気持ちが分からなかったことを女王様にあやまり、皆に冬を好きになってもらえるように考えると言いました。


 女王様はうれしそうに笑いながら子供たちがヒントをくれたことを言いました。



 ……しばらくして、お触れがまた出されました。

 こんどのお触れは新しい遊びの仕方が書いてありました。


 そうです、女王様はあの日子供たちと遊んだことを国中に広めたのです。

 今までは雪合戦しかなかった冬の遊び方に、新しい遊び方を増やしたのです。


 子供たちといっしょに池を滑ったことをスケートと言う遊びにし、子供たちといっしょに雪で何かを作ったのを雪だるまやかまくらという遊びにしました。

 王様も池を滑った話を聞いて氷に似ている雪でも滑れないかと考え、スキーと言う遊びを作りました。


 さいしょはびっくりしていた大人たちですが、子供たちは新しい遊びに直ぐにとびつきました。

 すると、直ぐに子供たちの楽しそうな声が聞こえはじめました。

 子供たちが遊んでいると、大人たちも新しい遊びが面白そうに見え、1人、また1人と新しい遊びをはじめました。

 そうして、たくさんの人たちが遊びに夢中になりました。


 しばらくして、スキーに似ているスノーボードが考えられたのをきっかけに、新しい遊びがふえました。

 スケートとボール遊びを足したカーリングに荷馬車が滑ったことがきっかけになったソリ、ソリが出来てからは冬の乗り物がたくさん生まれました。


 この新しい遊びたちは国中に広がり、冬でも笑い声が聞こえるようになりました。


 季節がめぐるようになってからは、冬のおまつりも出来ました。

 雪で色々なものを作るお祭りや乗り物の速さをきそうお祭りまで出来ました。


 こうして、子供たちのおかげで冬の女王様のなやみは無くなり、季節が再びめぐるようになりました。


 そのご、冬の女王様が塔に入ったままになることは2度とありませんでした。

 国王様も同じことがおきないように、春・夏・秋・冬の女王様たちの話を今までよりも良く聞き、いっしょに助け合って行くことをやくそくしたそうです。


 そして、いつごろからか雪を見ているとシンシンやシトシトといった音が聞こえてくる気がすると言っている人たちがではじめました。

 冬の女王様はたくさんの人の笑い声が雪に吸いこまれる時の音だとうれしそうに言ったそうです。


 ……そうそう、子供たちは褒美が良く分からなかったのか入らないと言っていましたので、王様がまた冬の女王様と遊んでほしいと願いを込めて、冬服と冬の新しい遊び道具を送ったそうです。

如何でしたでしょうか?

この話を読んで少しでもほっこりして頂けたなら幸いです。

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