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ある日の深夜、とある海辺沿いに建っている研究施設では、ある一つの騒動が起こっていた。
「くそ、こっちの方にはいなかったか…」
「絶対に逃がすな!奴はまだ未完成の実験材料なんだからな!」
施設内では、ヘルメットを被り、銃を構え、まるで武装した兵士のような服装をした男たち5人が、何者かを追っているかのようだった。そして、今度は今のルートとは反対側の方へ進んでいった。
一方、その別の所では、一人の少年が階段の影で、息を切らしながら体育座りで座っていた。その少年は、時たま廊下の方へ顔を出し、まるで何かの機会を伺っているようだった。
「…奴らに気がつかれないよう、ここの施設から脱出しないと…」
そう、彼こそが、先ほど男たちが実験材料と称した人物であった。
この少年の名は吉田一輝。この研究施設に無理矢理連れ去られ、とある研究の実験材料となっていた。右腕には注射針で刺されたかのような跡があり、彼はその跡から出る出血を左手で抑えながら追っ手から逃げてきのだった。今、彼はこのまま実験台になるのは嫌だったので、この研究施設から抜け出そうとしている。
「それにしても…何故俺はこんな所に連れ去られたんだ…?変な薬まで打ち込みやがって…。」
一輝は何故この研究施設へ連れ去られたのかを思い出していた。
話は数時間前に遡る…。
一輝は家族達と一緒に電車で旅行の目的地へ行っていた時であった。一輝の家族は父と母、妹の4人家族で、今回の旅行は家族全員にとって年に一回の楽しみであった。だが、そんな中で事件が起こった。その時の時間は昼頃で、みんなで買ってきた弁当を食べようとしている時だった。電車が突然原因不明の脱線事故により、全員その事故に巻き込まれてしまった。一輝が最後に目にしたのは家族が倒れている様子で、それ以降の事は全く知らない。今まで一輝は気を失っており、目が覚めたらこの施設の手術室みたいな部屋のベットに寝かせられた様子だった。そして研究員らしき人物達を強引に払い除けて、この施設内を逃げ回っていた。家族は全員無事なのか、この事故による犠牲者はどのくらい出たのか、そのような情報は全く知らない。なので、早い所この施設から抜け出し、どうしても家族の安否を知りたかった。
だが、この施設には今武装した男5人が自分を捜索しており、あまり容易に抜け出せるような感じではない。しかも相手は銃を持っているため、下手に逃げ回っていたら命を落とす危険もある。ここは相手の出方を伺いながら、慎重に逃げ出すしかない。彼はそう思いながら、また施設内を走った。
数十分後、何とか施設の出入り口らしきものを発見できた。幸運なことに、あの男達どころか、それ以外の施設内の人間とも目を合わせることはなかった。
「良かった…これでようやく施設の外に…」
その時だった。
「いたぞ!絶対に逃がすな!」
「おいお前!止まれ!さもないと撃つぞ!」
一輝の後ろから男の声が聞こえた。一輝は驚いて振り向いてみると、銃を構えた男5人が、銃口を彼へ向けていた。
「そのままおとなしくしていろ…。お前は石井博士の実験台だ…。ここで逃すわけにはいかない!」
一輝は男達の方へ体を向けながら出入り口の方へ後ずさりしていくが、相手は一向に銃を下ろそうとしない。
(まずい…このまま逃げると確実に撃たれる…。かと言ってここにいつまでも居たくはない…。)
一輝はそのまま後ずさりを続け、出口の方へ距離を縮めようとしていた。
「おい!動くな!」
男は一輝へ銃弾を放った。その銃弾は、一輝の右腕に当たった。しかも当たった場所はちょうど注射の跡で、銃弾はその跡を広げていった。
「うっ…!」
一輝はその痛さに悶絶し、その場で尻餅をついた。咄嗟に一輝は左手でその傷を抑えた。
「無駄な抵抗はするなよ…。このまま実験室へ戻ってもらう…。」
男は一輝へ歩いて近づく。一輝は全てを諦め、その場でうつむいた。
(もう成すすべも無しか…)
そう彼が思った時であった。
突然、その傷口が避けるように開き始め、出血も急に治まりだした。そして、その傷口の奥から、何かが出てきそうだった。
(な…一体何が起こっているんだッ!?)
一輝は状況を掴むことができず、動揺した。
「お…お前、何をしたッ!ま、まさかあの薬の効果がもう…」
男もその傷口の様子を見て動揺し出す。そして、その傷口から、カマみたいな曲がった刃が、一輝の右腕に生えていった。
「な…なんだこれは!?」
一輝は驚愕した。突然自分の傷口から刃が出てきた。そんな突然の出来事に、とにかく仰天した。
「く…とにかく無駄な抵抗はするな!お前は俺達の研究の実験台となってもらうッ!」
男は仰天しながらも、ほかの4人と同時に銃を構えた。
だが、一輝はもう動じない。この刃があれば、この状況から抜け出せる…。そう思った。
そして一輝は男達の方へ走り、まずは一人の男を狙った。そして、その男の首に狙いを向け、刃を振りかざした。
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
男の首から大量の血が吹き出し、そのまま首を右手で抱えたままうつ伏せになって倒れた。
「き、貴様ッ!う、撃てぇーーーッ!!」
そして残りの4人の男が一斉に銃を構え直す。そして全員が引き金を引こうとしている所だった。
一輝はそのスキを見極め、4人の首を流れるように切りつけた。そして刃で切って出来た傷はパックリと割れ、大量の血が溢れ出した。
「ぐ…あぁ…」
男はこの断末魔にもならなかった声を上げ、そして4人とも倒れた。
「ハァ…ハァ…」
一輝は息を切らしながら、この5人の男達の遺体を見ていた。
「ぞ、増員が来ないうちに、ここから出ないと…」
一輝はこの遺体に背を向け、そして施設から出た。
それから、一輝はよろけながらだが、施設からなるべく遠くへ行くように、国道の歩道を歩いていた。
「く…くそ…とにかくあそこから遠くへ…」
だが、もう彼は相当の体力を消耗してしまい、遂に体制を崩して倒れてしまった。
その頃施設内では、一人の実験台が逃げ出したということで、騒然としていた。
「石井博士!例のドーピングの実験台を逃してしまいました!」
一人の若い男性が、眼鏡をかけた白髪交じりの白衣の男性へ向けてこう言った。
「今、奴を搜索していた戦闘部隊5人は首を切られた遺体となって発見されました…。奴がここから外へ逃げ出したら、これは…」
「構わん、そのままほおっておけい」
慌てて状況を説明していた男性へ、石井はこう言葉を投げた。
「奴はまだ試作品だ。完全に力は使いこなせないであろう。せいぜい10分が限界といったところか…」
「で…ですが、これからはどうゆうおつもりで…」
「奴は我が新たなる兵器達の餌食となってもらおう。あのドーピングの力を試させて貰う為にな…せいぜい鼠のように逃げまとっているんだな、コードネーム、Dopeよ…」




