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塔の上のルキア
高い塔の上、そこにいたのは聖女でした。
真っ赤な瞳は魔物の瞳。
金の瞳は獣の瞳。
頬には歪な傷。
そして、背には中途半端な翼が一つ。
一対の翼をもたない彼女は、飛べない鳥。
塔の上で、ずっと一人。
いいえ。
もう一人。
彼女と寄り添う影。
でも、やがては消えてしまうでしょう。
それは、影でしかないのですから。
口をつぐんだまま、彼女は彼女の出来ることをします。
もくもくと、ただ、良心に従って。
壊れた聖女は、塔の上。
一番上の部屋には、本物の聖女の画。
哀れな聖女に思いを馳せながら、彼女は二人ですごしていました。
でも、それももう終わり。
なぜなら、もうすぐここに魔王とその僕達がやって来るから。
それでも、彼女は二人でずっと、ソコにいました。
だって、彼女には何も無かったから。
いいえ。
本当はすぐそばにあったはずなのに、無い事にしてしまったから。
酷い人。
きっと、彼女は後悔をする。




